テクノロジーの発展を加速してきたインクルーシブな試み【Microsoft編】林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(1/4 ページ)

» 2023年02月09日 07時00分 公開
[林信行ITmedia]

 ソニーグループ傘下のソニーが1月19日、2025年度までに原則全ての商品やサービスを、障害者や高齢者に配慮した仕様にすることを発表し話題となった。テクノロジーを用いて肉体的な格差を埋めようとする試みは、これが初めてではない。テクノロジーはしばしば弱者の味方をする。そしてそんな弱者のためのテクノロジーが、しばしばテクノロジーの新たな発展をもたらす。

テクノロジーの進化と新たな発展に結びつく取り組み

 今日、PCで日々触れているキーボードは、元はタイプライターという機械の一部だったことは皆が知るところだろう。諸説あるが、タイプライターは16世紀にイタリアで原理が生み出され、1808年に同じイタリアで今日のタイプライターと近い形の機械が誕生した。アゴスティーノ・ファントーニ(Agostino Fantoni)が作ったこの機械は、失明した姉妹が文字を書けるようにと、友人のペレグリーノ・トゥッリ(Pellegrino Turri)と協力して開発したものだった。

 他にも例がある。1964年には聴覚障害者のために電話の代わりになるコミュニケーション手段としてテレタイプが登場した。その後、1972年、夫婦ともに聴覚障害を持つエンジニアが夫婦でコミュニケーションをする手段としてインターネットの元になったARPANETで、文字情報を送受信する技術を開発。電子メールやメッセージングアプリの原型である。

 ちなみに、そのエンジニアこそ、ヴィントン・サーフ(Vinton Cerf)だ。TCP/IP通信の発明者で「インターネットの父」と呼ばれる人物でもある。

インターネット通信の基盤となるTCP/IP通信の発明者の1人で、「インターネットの父」とも呼ばれるヴィントン・サーフ氏。Googleのチーフインターネットエヴェンジェリストなどさまざまな顔を持つが、難聴者で補聴器の代理店で出会った妻も難聴者だ(photo by Veni Markovski)

 1986年には、ミシガン大学でコンピュータ科学を教えていた盲目の教授、ジム・サッチャー(Jim Thatcher)がIBMに数学者として入社した。当時のOSであるMS-DOSの画面上に表示された、文字を読み上げる「IBM Screen Reader」というソフトが開発され、後にこれが市販された。

 米国では1990年、障害者が他者と同じく米国での生活を営むことができる機会を保証する公民権法「障害を持つアメリカ人法」(The Americans with Disabilities Act=ADA)が制定された。

 ここから、IBMやAppleを中心にコンピュータメーカーによる障害者サポートのための取り組みが本格的にスタートする。筆者は1990年にAppleが出版した書籍「Independence Day」という本がきっかけで、こういった取り組みに興味を持ち、それ以来取材を続けている。

 ちなみに「独立記念日」を意味する本のタイトルは、いずれコンピュータの力を使って障害者が他人の支えなしに独立できる日が来ることを願ってつけられていた。

 これから数回に渡る不定期の記事で、PCメーカー各社のインクルーシブな試みを取り上げていきたいと思っている。第1回となる今回は、2022年度、筆者も審査員の1人を務めたグッドデザイン賞でも金賞を受賞したMicrosoftの最新の取り組みを取り上げたい。

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