デル・テクノロジーズは3月14日、報道関係者を対象とする「エグゼクティブメディアラウンドテーブル」を開催した。このラウンドテーブルでは、米Dell Technologies(Dell)のジョン・バーン氏(グローバル シアター セールス部門 & Dell Tech Select プレジデント)、ピーター・マース氏(APJプレジデント)とデル・テクノロジーズの大塚俊彦社長が登壇し、Dellの2023年度(※1)の業績や、Dellにおける日本市場(≒デル・テクノロジーズ)の位置付けと事業方針について説明した。
Dellにとって、日本市場はどのような位置付けなのか――この記事では、マース氏のプレゼンテーションに焦点を当ててラウンドテーブルの模様をお伝えする。
(※1)Dell Technologiesの会計年度は前年2月〜1月まで
Dell Technologyのグローバル組織において、日本(デル・テクノロジーズ)は「APJ(アジア太平洋地域と日本)」というセグメントに含まれる。APJの本部はシンガポールにあり、そのリーダーであるマース氏も同国を拠点に活動をしている。
APJ全体では、40以上の国/地域で事業を展開しており、従業員数は3万5000人を超える。インドとマレーシアには生産拠点、インドとシンガポールには研究開発拠点もある。
IDCの調査によると、Dell Technologiesはストレージ製品とメインストリームサーバの売り上げシェアにおいてAPJ地域で首位となっている。また、Chrome OS搭載品を除くビジネス向けPCの出荷台数シェアにおいても第3位に付けている。APJは「まだまだ成長の余地がある」との立場で、今後も積極的な事業活動をしていくという。
「では日本はどうなのか?」という点だが、グローバルクラスの拠点としてはAIに関するソリューションを実際に体験できる「AI Experience Zone(AIラボ)」、経営層のユーザーとコラボレーションするための「Executive Briefing & Solution Center」と、5G通信に関する検証を行う「5G Lab」も設置されている。
日本企業とのコラボレーションとしては、富士通との「Open RAN(Radio Access Network)」に関するパートナーシップ契約が挙げられた。この契約はDellが富士通製無線ユニットで利用できるアクセラレーターカードを提供することと、富士通の「5G Open RAN Interoperability Lab」とDellの5Gラボを相互接続するということが主な内容である(参考リンク)。
Open RANは、従来は基本的にベンダーロックイン(※2)だったモバイル無線ネットワークをマルチベンダー化する“切り札”でもある。従来のRAN(無線アクセスネットワーク)では専用のハードウェアが担っていた部分のほとんどが、Open RANではソフトウェア処理となる(※3)。そのため、Dell Technologiesを含むPC/サーバベンダーも“入り込む”余地がある。
モバイル無線分野でノウハウを持つ富士通と組むことで、モバイル通信分野でのモメンタムを強化しようと考えているようだ。
(※2)ハードウェア/ソフトウェアを特定のベンダー(メーカー)に依存すること。従来のRAN(無線アクセスネットワーク)では「無線ユニット(RU)」「処理ユニット(DU)」「中央ユニット(CU)」といった主要なハードウェアを、原則として同一ベンダーで“統一”する必要があった。ただし日本では、旧来のRANでもキャリア主導である程度のマルチベンダー化は行われていた
(※3)ソフトウェアによって機能を定義(変更)できることから「SDR(Software Defined Radio:ソフトウェア無線)」とも呼ばれる。都市部の鉄道では、無線のデジタル化に合わせてSDRを導入する事例が増えている
Dell Technologiesにとって、日本は収益ベースで世界第3位の市場だという。エンタープライズ(産業)向けITという観点では、日本の市場規模は世界第2位でもある。今後も、日本におけるパートナー企業/団体を拡大し、売り上げ規模をさらに大きくしていきたいとのことだ。
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