プロイラストレーターが最近のAI「どうすんだこれ感」について思ったこと(3/3 ページ)

» 2023年03月29日 06時00分 公開
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技術の民主化と「靴磨きの少年」

 ところで、「靴磨きの少年」の逸話を知っていますか? 昔々、ウォール街のある投資家が、靴磨きの少年が「株がもうかる」と話しているのを耳にして、手持ちの株を処分して世界恐慌の難を逃れたという話です。誰もがもうかるような話が聞こえ始めたら、その相場は終わりが近いということですね。

 最近、AIイラストに関して利用者らしき人の「わりと誰でも絵で稼げる時代が来た」のような発言を見かけて、ハッとしました。そもそもAIを駆使する時点でハードルがあり、その中で収入源になるほどファンを付けるのは誰でも簡単にとは思えません。靴磨きの少年レベルではなさそうですが、それ以前からも「イラストで稼ぐ方法」のような情報も増えてきていますし、20年ぐらい前から界隈(かいわい)を観察してきて、学びの機会と質、収入機会の向上が相まって、加速度的にイラストを描く技術が民主化しているのは実感しています。

 もう1つ、90年代のカラオケブームは知っているでしょうか。当時は国民的娯楽と言ってもいいほどで、若者を中心に流行して誰もが歌が上手くなり、歌が上手い → 憧れられる、という時代がありました。

 歌唱力の民主化です。その数年後に何が起こったかというと、急激なCD売り上げ減少と音楽業界の低迷でした。音楽業界の低迷は景気などいろいろな原因があるでしょうし、カラオケが主な原因とも言えないでしょう。ですが、ある分野のライフサイクルの最終局面を振り返るとこの手のことが観察できるというのは、無いとも言えなそうです。

 これがイラスト分野と関係あるか、あるとしてもどの範囲の分野なのか、結局は自分にも分かりません。インターネットによる情報発信の民主化と出版/マスコミ業界の関係や、デジカメやスマホカメラの発展とカメラ/写真文化の関係に思いをはせてもいいかもしれませんね。

 近年は疫病もあれば戦争もあり、エネルギー危機、AI革命など、社会や生活に大きな変化が起こりがちな「VUCAの時代」です。いたずらに不安をあおって手を引かせたり夢をあきらめさせたりしたいわけではなく、ただ気を付けて進んでほしい、と思います。

 上のような考え方に限らず、生活の余力を大きめに取ったり、変化への適応力を鍛えたり、「〇〇先生が言っていたので大丈夫だよね」「みんなが言っているから大丈夫だよね」とかではなくて自分で回りに気を配る癖をつけておくのは、イラストに限らず、損は無い習慣になるでしょう。

まとめ

 どうすんだこれ……(記事の内容的に)。

上質な「どうすんだこれ感」をふんだんに味わえるエルデンリングで適応力を鍛えよう 上質な「どうすんだこれ感」をふんだんに味わえるエルデンリングで適応力を鍛えよう

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