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「Microsoft Security Copilot」によるAIセキュリティ対策 “人力”任せからの脱却につながるか(1/3 ページ)

» 2023年04月05日 06時00分 公開

 2022年11月に「ChatGPT」が登場して以降、特に2023年に入ってから、「OpenAI」を絡めたMicrosoftの新サービスの発表ラッシュには目を見張るものがある。大規模言語モデル(LLM)技術を取り入れて、チャット型の対話検索機能を備えた「新しいBing」をはじめ、正式提供が始まった「GitHub Copilot」、ERPやCRMといった業務支援を行う「Dynamics 365 Copilot」、そして先日発表された「Microsoft 365 Copilot」に至るまで、「Copilot(コパイロット)」シリーズが話題を席巻している。

Microsoft 365 Copilot MicrosoftとOpenAIの提携の“本命”とされていたOfficeアプリへのAI実装も、「Microsoft 365 Copilot」として想像以上に早く実装された

 Microsoftの「Copilot」を関する製品で特徴的なのは、いわゆるGenerative AI、つまりコンテンツ生成型のAIを積極的に取り入れている点にある。

 例えば、GitHub Copilotならプログラマーが入力するコードを次々と“サジェスト”してきて、プログラムの多くの部分をコンピュータ自身が記述してくれる。PowerPointであれば、「こんなプレゼンテーションがほしい」とある程度の内容と要素を与えれば、1からプレゼンテーションそのものを作ってくれたりする。ある意味で人間の作業負担を軽減するAIとなっている。

 こうして見ると、Microsoftが強調する「Copilot(副操縦士)」という言葉は“言い得て妙”である。Pilot(操縦士)たるユーザーとCopilotが一緒にそろうと初めて意味をなすからだ。最近は「危険なAIが人間をしのぐ」という恐怖論が再び聞こえるようになったが、少なくとも同社のCopilot製品はそういう性質の製品ではない。

PowerPointでの実装イメージ PowerPointにおけるMicrosoft 365 Copilotの実装イメージ。Wordドキュメントを指定して「これをもとにプレゼンテーション作って」と指示すると、それっぽいプレゼンテーションが生成された。人間が指示をすることで、初めて作業を手伝ってくれるというイメージである

 そんなMicrosoftのCopilotシリーズの最新製品として、「Microsoft Security Copilot」が登場した。この製品はセキュリティの世界にどのような可能性を与えてくれるのだろうか?

バス・ジャッカル氏 Microsoft Security Copilotを発表するMicrosoft Security CVPのバス・ジャッカル氏

Microsoft Security Copilotはどんな

 3月28日(米国太平洋時間)に開催されたオンラインイベント「Microsoft Secure」では、今日のセキュリティ対策が直面している現状について解説された。

 Microsoft Security CVPのバス・ジャッカル氏は、「秒間1287回のパスワード攻撃」「フィッシングメールに引っかかった際に、攻撃者が個人情報にアクセスするまでの時間の中央値は1時間12分」「350万人の熟練したセキュリティ技術者の世界規模での不足」といった事実を挙げつつ、セキュリティ対策が年々困難になってきていることを紹介した。

 Microsoftは、世界で最も自社製品やネットワークに対する“攻撃”を受けている企業の1つである。攻撃を受ける過程で1日当たり65兆個の「脅威シグナル」を検知しているという。ここまで来ると、もはや個人や一般的な企業の情報部門に手に負える水準ではなく、必要な対策を施しつつ、専門家にセキュリティ対策を依頼することが求められるレベルとなる。

 とはいえ、セキュリティ専門家を雇おうと考えた場合、たとえコスト問題を乗り越えられたとしても、その人員そのものが不足しているという問題がある。ゆえに、既存のリソースを活用しつつ、日々の業務と並行してセキュリティ対策に当たらざるを得ないのが現状だ。

 そうしたスキル不足や人員不足を補うソリューションが、今回のSecurity Copilotということになる。現状では、まだ一般公開前の「プライベートプレビュー」としての提供にとどまるが、チャット形式の対話型アシスタントの体裁を採っており、質問に対して次々と必要な情報を整理して、問題の概要や対策方法をアドバイスしてくれる

 ここで返答される情報は、LLMを使った汎用(はんよう)的な情報の検索とは異なり、あくまで社内のネットワークの稼働状況を基に収集した各種データを用いて、その最新情報を分かりやすくまとめたものとなっている。

 従来のセキュリティソリューションであれば、表示されるアラートをきっかけに、ダッシュボード上に表示される情報を各種ツールを駆使しつつ分析していき、問題の発見や対策を行っていた。この一連の動きを“アシスタント”付きチャットに置き換えたものがSecurity Copilotなのだ。

イメージ図 Microsoft Security Copilotの動作イメージ
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