現代社会、気候変動への対処として再生エネルギーの活用を含めた脱炭素化の動きは、もはや企業にとっての責務となっている。そんな中、主要な科学機関が今後全ての企業がとるべき行動として示している指針を、他社より20年先取りして実践しているのがAppleだ。
同社の取り組みを知ることは、企業が次に取らざるを得なくなる環境へのスタンスを確かめることでもある。
そんなAppleから、取り組みの進ちょくに関する発表が行われたので、ここにまとめたい。
今回の発表の要点は以下の3点に集約できる。
Appleの製造網が確保した再生可能エネルギーは、13.7GW(ギガワット)に到達した。これはAppleおよびそのサプライチェーンが設置した太陽光パネルや風力発電によって作られた電力や、自ら作り出す代わりに他社に資金を支払って調達する「Power Purchase Agreements」(PPA)によって獲得した再生可能エネルギーの総和だ。
中には、他社に作らせているのかと思う人もいるかもしれないが、事業者によっては地理的条件などから再生可能エネルギーを自ら作り出せない企業もあり、その場合は、再生可能エネルギーを作ってくれる他の会社を資金で援助して、全体のバランスを取っていこうというのがエネルギー業界の考えだ。
13.7GWと聞いても、どれくらいの電力か想像が難しいと思うが、排出二酸化炭素量に直すと1740万トン、もっと分かりやすくいうと道路から年間380万台の自動車を排除をしたのに匹敵するという。
ちなみに、Appleが世界44カ国で展開する全オフィス、データセンター、直営店が使用する電力は1.5GW(13.7GWのうちの約11%)だというので、Appleのサプライヤーが数百社(総数は非公表)あることを考えれば、2030年の目標への道のりはまだ遠そうだ。
そのような中で、Appleが2030年の目標に向かって着実に歩みを進めていると実感できるのが、2030年までのカーボンニュートラル化を確約する「サプライヤークリーンエネルギープログラム」参加者の数だ。
2022年3月時点では210社ほどだったが、新たに40社以上が加わり約250社にまで増えた。大幅な増加に先立って、Appleは2022年秋、サプライヤーに、とりあえずはApple関連の事業に関わるものだけでも「スコープ 1: 直接排出」と「スコープ2: 電力排出」の両面で脱炭素化するように再び呼びかけたという。
Appleはサプライヤーの総数を明かしておらず、500社近くに上るといううわさもあるが、現時点までにプログラムに参加した250社は、Appleの直接製造支出の85%以上に相当することが新たに明かされた。支出したお金がエネルギー消費量とも連動していることを考えると、既にサプライチェーン全体の大部分で脱炭素化の公約が取れたと言って良さそうだ。
今回の発表で、もう1つ興味深いのが、各国の状況についていくつか具体例が示されたことだ。
例えば、日本は34社がプログラムに参加しており、このうち、最も先進的な取り組みをしているのが太陽誘電で、オンサイトでの太陽光ソリューションを導入していることはよく知られているが、2023年に入って新たにロームやNISSHAもプログラムに賛同し、まずはPPA(電力購入契約)によるオフセットで脱炭素化を計ることが明らかになった。
ヨーロッパはもう少し進んでいて、30社の確約サプライヤーのうち、ViscomやVictrexなど6社は、既にApple関連事業について100%再生可能電力を実現しているという。同様に、米国でもBemis Associatesがこれを達成している。
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