なぜ象印は20年前から見守りサービスを続けているのか古田雄介のデステック探訪(2/2 ページ)

» 2023年04月20日 12時00分 公開
[古田雄介ITmedia]
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最大100台のiポットを一元管理できる仕様に

 今回のリニューアルには、主に2つの柱がある。

 1つは、見守りに関わる人のつながりを広げやすくしたところだ。

 これまでは、1人暮らしのiポット利用者を別の世帯で暮らす家族が見守るという、1対1のつながりを基本としていた。1件あたり月額110円でメールの送信先を増やすオプションも用意していたが、前提としていた見守る側は1人だった。また、1人が複数世帯を見守る場合、その1人が個別に契約し、別々に届くメールもそれぞれチェックする必要があるなど、管理が煩雑になる問題を抱えてもいた。

 そこでリニューアル後は、標準でメールの送信先を最大3件まで指定可能にした。例えば、子世代の兄弟2人とケアマネジャーさんが同じメールを受け取るようにして、チームで見守るといったことがスムーズにこなせるようになる。

 見守る側の管理機能も大幅に強化している。契約者の専用サイトにログインすれば、複数の見守り先の状況を一元管理できるようになった。標準仕様で最大100世帯まで管理可能なので、集合住宅や町内ぐるみで安否確認に利用することも現実的だ。

 「給湯で安否確認できるということは、ある程度自立して1人暮らしできている方が対象になります。そうした方々が安心して暮らせる町作りのお役に立てるのではないかと考えました。戸建てや集合住宅に加えて、多様な形でお使いいただければと」(樋川さん)

リニューアルした契約者サイトのサンプル。各戸の状況が一元管理できる リニューアルした契約者サイトのサンプル。各戸の状況を一元管理できる

 個々の見守りも、町ぐるみの見守りもカバーできるようになったわけで、この強化が「東京ケアウィーク'23」の出展区分にも表れていた。同社はライバルがひしめく「見守りシステム」エリアではなく、「超高齢社会のまちづくり展」エリアにブースを構えていた。

「東京ケアウィーク'23」の象印マホービンブース。右脇のタグに狙いが見える 「東京ケアウィーク'23」の象印マホービンブース。右脇のタグに狙いが見える

空だきのログも見守り側が受け取れるように

 もう1つの柱は、使用状況のログの多様化だ。

 iポットには「沸かす」「給湯」「ロック解除」などの他に、「おでかけ」ボタンもついている。これは買い物などの外出によってポットを使わない時間が長くなっても異常とみなさないためのボタンで、外出時に押すと「外出」、帰宅時にもう一度同じボタンを押すか、給湯などの何かの操作をすると「帰宅」とメールされる。

 このボタンを押さずに長時間未操作(設定によって24時間/36時間)が続いた場合も、通知する設定が選べるようになる。

 加えて、空だきが発生した場合もログが残るようになる。長らく普通に使っていた人が空だきを頻発するようになったら、心身に何かしらの変化が生じているかもしれない。そうした兆しに気づくアンテナを増やすためのアップデートといえるだろう。

iポットの操作ボタン iポットの操作ボタン
一週間ログの例 一週間ログの例。電源投入(緑)の直後に、空だき(オレンジ)を2日後にも繰り返しているのが分かる。また、深夜の給湯(水色)が急に増えたのも、体の異常のサインである場合もある

 さらに2025年頃には、より詳細なログを取る機能も計画しているという。

 「例えば、ロック解除ボタンと給湯ボタンを押すまでの時間を記録ということも考えています。いつもの動作に時間がかかったり、別のボタンを押してしまったりしたら何かしらの変化が起きている可能性がありますよね。まだ変化が小さい頃に気づくことができたら、そこから打てる手も増えると思うんですよ」(樋川さん)

 直近の目標もこの年に照準を合わせている。かつての最盛期と同じ年間5000件の新規契約を達成することを目指す。

 2025年は、団塊の世代の人たちが全員後期高齢者となる年でもある。20年超の積み重ねと時代にあわせたリニューアルで、超高齢社会の健康な暮らしを支えてほしい。

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