新型コロナウイルスのパンデミックにより、これまで踏み出そうとしなかった企業も、テレワークを実施するようになった。オフィスに集合せずにコミュニケーションを取ったり、コラボレーションをしたりするのに必要不可欠なのが、Web会議システムだ。
以前から、Web会議システムにはMicrosoft TeamsやSkype、Google Meetなどもあったが、その中でZoomが大躍進した。その理由は、アカウントがなくてもURLにアクセスするだけで会議に参加できること、無料でも同時アクセス最大人数が多いこと、機能が豊富なことなどが挙げられる。
そのZoomの日本法人ZVC JAPANが4月26日に、東京都渋谷区で「Zoom Experience Day」を開催した。目的は、新しい働き方の最新トレンドやZoomの最新製品を紹介するというもので、Zoomの豊富な機能を使い切れていない、あるいは知らなかったというような部分についての紹介、あるいはZoomを使いこなしている企業の事例などが取り上げられた。
まず、ZVC JAPAN 代表取締役会長兼社長の下垣典弘氏がトップバッターを飾った。キーノートのタイトルは「新たな世界へ Delivering Happiness」というもので、Zoomというソリューションがどのように「幸福な世界へ」つなげるのかを軸にセッションが進行した。
下垣氏が解説したのは「Zoomがどのようにして誕生したのか」という内容だ。「画面越しに相手の飲んでいるコーヒーの香りが伝わり、ハグできるようなコミュニケーション体験を実現したい」というのが創業者兼最高経営責任者のエリック・ユアン氏の理念だという。
ビジョンは「ビデオコミュニケーションで日々の業務をよりスムーズにする」ことだが、ビデオコミュニケーションだけで終わらせるのではなく、「人と人とをつなぐために必要なものを全て提供する」ことを目指しているという。
Zoomが世界中で利用されている理由に、使いやすさ、接続が切れない信頼性の高さなどがあるが、それはその誕生時の背景にあるという。
Web会議システムの中には、既存の電話や音声のみの会議などからステップを踏んで今ある形に進歩してきたものがある。そのため、既存の枠──電話であればPBXなどにとらわれがちだと主張した。
しかし、Zoomが開発された頃には、クラウド上にネットワークができあがっていた。そのため、全く新しい価値観での開発が可能になり、コミュニケーションに必要なテキストチャット/音声通話/ビデオ会議/ホワイトボード/カレンダーといった、さまざまな機能を1つのプラットフォームに持たせることができたのだと述べる。
下垣氏は、同社が考える「新たな世界観」に含まれるものを挙げた。
コロナ禍によってテレワークが定着したが、コロナ禍で大学に入学した学生たちにとっては、リモートが当たり前となっている。キャンパスへ行かず、自宅でZoomを利用して学習していた学生たちが、2024年4月には新入社員として社会へ出る。
そのような学生たちが、既存の固定観念である「オフィスへ行って仕事をする」だけという働き方を選ぶのは難しい。
さらに、それまでオフィスで仕事をしていたが、コロナ禍でテレワークをしてきた従業員の中にも、「オフィスの規模が縮小していて、自席がなくなっている」こと、通勤しないことによって生まれた、家族と過ごす時間を大切にしたいなどの理由から引き続き在宅で仕事をしたいと考える人がいる。
企業側は、リアルで会ってコミュニケーションをしたい、オフィスを新しくしたのだから来てほしいという考え方を持っている。
下垣氏は「私も直に会いたい、(2022年)7月にできたばかりのオフィスに来てもらいたい」と考えていると明かしつつも、「それでもコミュニケーションの民主化は止められない」と述べ、今やコミュニケーションの取り方、働き方を企業ではなく従業員が決めるようにしないと、従業員の採用も定着も望めないと語った。
「これからのコミュニケーションやコラボレーションは、対面と非対面を組み合わせ、どのように働く場所と時間から解放させるのかということを考えていく必要がある。これは、単なる企業だけの課題ではない。働きやすさは企業を支え、それが引いては将来の日本を支えることにつながるからだ。それがそこに住む一人一人の幸福へとつながるのだ」(下垣氏)
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