特急型を中心に、最近はスマートフォン/タブレットやPCを充電するための「コンセント」を備える鉄道車両が増えてきました。
万が一モバイルバッテリーを家に置いてきてしまっても、ACアダプター(充電器)さえあれば充電できるので便利なのですが、ちょっとした不便さを覚える場面もあります。どういうことなのでしょうか……?
鉄道車両のコンセントは、交流100V/2A出力のものが多いようです。ワット換算すると、最大で200Wまで行けるということで、思った以上に余裕はあります。
周波数は車両の仕様によってまちまちで、基本的には60Hz出力のものが多いです。ただし、今どきのACアダプターは50Hzと60Hzの両方で問題なく使えるので、周波数が問題になることはないでしょう。
コンセントの位置は、前方の座席(各車両の最前列席の場合は前方の壁またはテーブル)の案内表示に書かれていますので、それを参考にして探してみましょう。
鉄道車両のコンセントは、出力“だけ”を見ればスマホ/タブレットやスマホの充電には十分すぎる容量を備えています。極端に大きな電力を必要とするゲーミングノートPCでも使わない限りは、困らないはずです。
では何が「ちょっとした不便さ」なのかというと、コンセントのある場所だったりします。コンセントを備える鉄道車両は、その設置位置が車両によってまちまちで、一長一短なのです。
東海道・山陽新幹線のN700S系電車の普通車や、JR東日本(東日本旅客鉄道)のE259系電車(成田エクスプレス用車両)などは、座席の「肘掛け」にコンセントがあります。
このタイプの場合、左右どちらかの肘掛けを探せば、すぐにコンセントが見つけられることがメリットです。一方でACアダプターのプラグの形状によっては肘掛けの機能に悪影響を与えてしまったり、腕(肘)の動きですぐに外れてしまったり、うまく差し込めなかったりするデメリットもあります。
肘掛けで使うことを前提にすると、プラグ近辺のスリムな(≒ACコードが別体の)ACアダプターの方がベターかもしれません。
前の座席の「基部(支持部)」にコンセントが備えられている車両も多いです。このパターンの場合、視線を下にやるとすぐに見つかることが何よりのメリットです。肘掛けにあるパターンよりも見つけやすいかもしれません。
新幹線としては初めて全座席へのコンセント配備を実現したJR東日本のE7系電車とJR西日本(西日本旅客鉄道)のW7系電車では、窓側席を除く普通席のコンセントをこのように設置しています。
しかし、この設置パターンの場合、座席を回転させると利用できないことがあるという問題があります。ゆえに、最近は「パターン1」で紹介した肘掛け設置が多くなっているのだと思われます。
もっとも、E7系/W7系の場合、座席を回転させても窓側席用のコンセントは利用できるようにはなっています(1つだけなのですが……)。
車内の給電装置の性能限界もあってか、コンセント付き座席の黎明(れいめい)期は車両の側壁(≒窓側席)または最前列(最後列)席の壁面にのみコンセントを配置するパターンも多くありました。
東海道・山陽・山陽新幹線のN700系電車や、山陽新幹線の700系電車(レールスター)はその典型例です。先に少し触れた通り、E7系/W7系電車も、窓側席と最前列席のコンセントは壁面設置となっています。
また、車両の改造でコンセントを後から設置した車両も、側壁または最前列/最後列席にのみ設置というパターンが多いように思います。
この設置パターンの場合、ひとまず窓側(あるいは最前列)の席を確保できればコンセントにありつけることがメリットです。ただし、側壁のコンセントは窓側席専用“とはうたわれてはおらず、理屈の上では窓側以外の席の人でも利用可能です。窓側以外の席の人が「コンセントを使わせてほしい」と言われたら、相談に応じるようにしたい所です。
一方、特に側壁下方にコンセントが設置されている場合は、ACアダプターの構造/形状次第でケーブルが支障したり、そもそもうまく入らなかったりすることがあります 差し込む方向を変えると解決できる場合もありますが、パターン1と同様にプラグ近辺のスリムな(≒ACコードが別体の)ACアダプターを使うと悩まずに済むと思います。
側壁下方に設置の場合、ACアダプター本体やプラグを不用意に蹴飛ばしてしまうこともあります。これも注意したいポイントです。
加えていうと、最後列の席の場合、後方壁面のコンセントを利用できないこともあります。最後列座席でも、側壁などにコンセントを設けている場合はよいのですが、最前列(最後列)席だけ、側壁のコンセントを省いている車両もあるので気を付けましょう。
このように、位置による長短こそあれど、座席でコンセントを利用できる鉄道車両(列車)は確実に増えています。私自身は車内でノートPCを開いて仕事(原稿の執筆、編集や整理)を行う機会が多いので、コンセントで充電(給電)できるだけでものすごく助かります。特に、コンセントを使えない取材先が連続した場合は「ああ、コンセント様……」と(心の中で)感涙してしまうほどです。
ただ、中には「もうちょっと設置位置を考えてよ……」と思ってしまうこともあります。例えば、コンセントが座席の“内側”にある車両が存在します。この場合、高確率で太ももとプラグがぶつかります。こうなるのは、座席の構造の都合だと思われるのですが、検討の段階で「ももがぶつかっちゃう!」という指摘はなかったのでしょうか……?
あるだけで、断然助かる鉄道車両のコンセント。これからはただ「付ける」だけでなく、どんなACアダプターでも使いやすい配置を検討してほしいなと思う今日この頃です。
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