Appleの最新アクセシビリティー機能にみるインクルーシブな試み林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(4/4 ページ)

» 2023年05月18日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]
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iPhoneを目の代わりに!? 「拡大鏡」アプリの進化

「拡大鏡」アプリの新機能「Point-And-Speak」では、家電製品のボタンについた文字のラベルを読み上げてくれる

 コミュニケーションという大きなテーマからは外れるが、Appleは今回、この他にも多くのアクセシビリティー機能を発表している。

 まず、視覚障害者向け機能では、コロナ禍に大きな進化を遂げた拡大鏡アプリが、また少し進化した。拡大鏡は、視力が弱い人に虫眼鏡の代わりとしてiOSに標準搭載されていたアプリだが、ソーシャルディスタンスが重要視されていた2年前に新たに「人を検出」する機能が追加された。

 拡大鏡を周囲に向けてそこに人が映ると、その人とどの程度の距離が測れているかをLiDARセンサーで測って教えてくれるという機能だ。2022年には、ここに「ドアを検出」する機能が加わり、建物の入り口までの距離が分かるようになった。

 2023年のアップデートでは、さらに「Point & Speak」という機能が加わる。家電製品のボタンなどに書かれたラベル文字を指さすと、それを読み上げてくれる機能だ。

 手の自由が利かず、音声で文字を入力する人向けの機能改善もある。キーボードを使った文字入力ができず、声で文字を入力する機能は既に長い間提供されてきたが、使っていると音が似ている単語の誤変換がしばしば生じ、その修正も煩雑なことが多い。新しいアップデートでは、音が近い別候補がある単語を選ぶと、すぐに代替候補の一覧が現れ、候補の横の番号を選ぶだけで単語を修正できる。

 また、このような人たちは機器を音声で操作することが多いが、その際にどうやったらうまく音声操作ができるかを紹介するガイドコンテンツ「音声コントロールガイド」も新たに提供される。

 細かいところでは、視覚障がいのあるユーザー向けにFinder/メッセージ/メール/カレンダー/メモなどのMacアプリケーション全体で、テキストサイズをさらに調整しやすくなったり、Siriが話しかける速度を0.8倍〜2倍の範囲でカスタマイズしたりする機能、メッセージとSafariでGIFなど動く要素のある画像を自動的に一時停止する機能、「Made for iPhone」認証を受けた補聴器などのヒアリングデバイスを、iPhoneだけでなくMacともペアリングできるようにする機能、手足が不自由でスイッチコントロールという方法でiPhoneやiPadを操作しているユーザーに、そのスイッチを使ってゲームコントローラー並みのゲーム操作を提供する機能なども用意される。

 ニーマイヤー氏のAssistiveWareが開発した「SwitchXS」は脊髄性筋萎縮症で手足がまったく動かないにも関わらず、ゲームレビューワーとして活躍したマイク・フィリップス(Mike Phillips)氏を支援していたこともある。そのためかニーマイヤー氏は、これらの機能の中では特に「ゲーム対応」を高く評価していた。

 そして、最後にこうも付け加えた。

 「Appleは毎年素晴らしいアクセシビリティーのアップデートを提供し続けています。それが私たちがAppleのプラットフォームだけで開発を続ける理由です。我々と多くの価値観を共有しており、Appleは自社のデバイスを私たちが対象とするユーザーにとってより魅力的にしています」(ニーマイヤー氏)

 今回は2023年の新機能の発表が中心になったが、アクセシビリティー領域におけるAppleは極めて面白い存在だ。どういう点が面白いかは後日、改めて紹介したい。


【追記】

 本記事の掲載後、AssistiveWareのデビッド・ニーマイヤーCEOが米AppleのNewsroomで大きく取り上げられた。

 記事は主に自閉症の子どもが使い、世界に30万人のユーザーがいる同社の補完/代替コミュニケーション技術(AAC)アプリ「Proloquo2Go」を紹介する記事で、AppleのVoiceOverやスイッチコントロール技術とも連動したこのアプリを使うことで、さらに多くの人が意思伝達の機会を与えていると紹介するものだ。

 本記事執筆時点でニーマイヤー氏は、記事が載ることは知りながらも秘密保持契約で話せない状況にあった。またここまで大きな取り扱いになることは知らなかった模様だ。

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