Appleの最新アクセシビリティー機能にみるインクルーシブな試み林信行の「テクノロジーが変える未来への歩み」(1/4 ページ)

» 2023年05月18日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]
2023年後半に利用できるようになる「Assistive Access」「Live Speech」といったAppleの新しいアクセシビリティー機能 2023年後半に利用できるようになる「Assistive Access」「Live Speech」といったAppleの新しいアクセシビリティー機能

 Appleは5月16日、毎年恒例のアクセシビリティー機能の進ちょくとして、コミュニケーション機能に重点をおいた年内搭載予定の新機能を発表した。

 毎年5月の第3木曜日、2023年でいうと5月18日は「Global Accessibility Awareness Day(GAAD)」で、デジタル分野(Web/ソフトウェア/モバイルなど) の「アクセシビリティー」を考える1日となっている。

 世界に20億人いる、何らかの障害を持った人々のアクセシビリティーについて話し合うべく、世界規模のオンラインイベント「GAAD」が開催され、18日には日本版のイベント「GAAD Japan 2023」で人気の発話アプリ「UDトーク」の開発者である青木 秀仁氏の基調講演が行われる。

 1月に全製品をアクセシビリティー対応宣言をしたソニーは、いち早く15日に5万人の社員の3分の1がアクセシビリティー研修を受講したことなど、取り組みの進ちょくを発表している。

 この時期、毎年アクセシビリティー関連の新機能を発表しているのがAppleだ。

 2021年にはApple Watchの操作性を向上させる「AssistiveTouch」や、直営店での手話によるサポート「SignTime」(日本では「HandTime」)を、2022年には弱視の人を支援する「拡大鏡」アプリに、目的の建物の入り口を認識する「ドアの検出」(LiDARセンサーを備えたiPhoneのカメラにドアが映るとドアの種類や距離を教えてくれる)、そしてApple WatchをiPhoneから操作する機能が発表された。

 既報の通り、2023年も年内に搭載予定のアクセシビリティー新機能の発表が行われた。だが、2023年の発表は量だけでなく、その内容も例年とは比較にならないほど重要なものだ。

 そこでこの機会に、Appleがどのようなプロセスでこれらの機能を開発し、使う人目線でどのような工夫を施したのかを読み解いていきたい。

ハードとOS両面からの統合的アプローチでより良い体験を提供

 アクセシビリティー機能というと、何か特別な人向けに余計な機能を作っていると捉えている人がいるかもしれない。しかし、人間誰しも歳を取れば若い頃に比べて目も耳も不自由になるし、怪我をすればしばらくは手足の自由が効かなくなることもある。

 アクセシビリティー機能を理解することは、そういった状況に対して、どんな人にとってどんなことが障害になり得るのかという新しい視点を獲得することであり、それに対しての解決策に想像力を巡らせることでもある。

 実は日本的な美徳と言われる「思いやり」や「おもてなし」の力を磨くことでもあれば、「なるほど、そういうこともあるのか」と学ぶことが多く、実は非常に創造的で面白い。

 そして、こういったアクセシビリティーの視点を学ぶ上において、Appleは理想の手本と言える。

 その理由はいくつかあるが、1つ目はご存知の通り、Appleは技術主導が多いテクノロジー業界において、珍しいデザイン主導の会社で、作る人側の視点だけではなく、常に使う人の目線でモノを作っているため、工夫が行き届いている場合が多いことだ。

 2つ目は、Appleが他の会社と異なり、MacやiPhoneといったハードウェアも作れば、そのOSやアプリも開発していることにある。つまり、ハードとソフトの垣根を超えた統合的な工夫が多いのだ。

 他社製のハードやOSとの互換性を考えていては、本当に良い使い勝手の開発は難しい。おそらくMicrosoftやソニーが、まずはゲーム機のアクセシビリティーから充実させているのも、両社にとってゲーム機こそが他社の介入なく統合型アプローチが取れる製品だからだろう。

 3つ目は、最近のアクセシビリティー機能の開発では画像や音声などを認識する機械学習機能が無視できない存在だが、Appleはこの機械学習に適したプロセッサを自ら開発し、デバイス上での機械学習を重視している点にある。

 クラウドベースの機械学習と違い、ネット回線の状態に左右されず反応が速く、しかも安心して極めてプライベートな場面でも利用できる。

 Appleは、iPhone/iPad/Mac/Apple Watchと多彩な製品を提供しており、最近ではiPhoneからのApple Watchの操作など、機器同士を連携させた体験も開発し始めている。

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