らくつぐで大枠の文面を作った上で、詳細な遺言書の作成を同事務所に依頼することもできる。「オーダーメイド遺言」と名付けられたオプション機能で、自筆証書遺言の場合の報酬額は17万8000円となる。その他、戸籍謄本などの代行取得や立ち会いでの相談手数料は別途かかる。
このあたりの費用感は一般的な法律事務所の水準になっており、同事務所に直接依頼が届いた場合も同じ額で受けている。しかし、アプリ経由での相談では、金額や手間などのすり合わせが難しいと感じるケースが多くあった。
「無料アプリからいきなりこの額ということで、ミスマッチが生じているのだと思います」
お金をかけずにスマホで気軽に試せる「らくつぐ」と、報酬を受けてプロが本格的に取り組む「オーダーメイド遺言」。両サービスには大きな隔たりがあり、中間的なサービスを開発する必要があるのではないかと所内で議論が進められるようになった。
日経新聞がデジタル遺言制度について報じたのは、そんな矢先のことだった。
報道によると、政府は2024年3月を目標にデジタル遺言制度の創設を検討しているという。詳細はまだ不明ながら、デジタルを活用することで遺言書の作成を促す狙いがあることは伝わってくる。
2019年にアメリカの統一州法委員会(ULC)がデジタル遺言に関する法律「e遺書法」を承認するなど、海外でも導入の動きが広がっている。元から録音証書遺言が認められている韓国では、スマホを使った遺言作成が以前から人気だ。
「これから動向を追いかける必要がありますが、政府の動きを踏まえて、速やかに新サービスがリリースできるように動きたいと思っています」
士業が立ち会う業務となると、どうしても高額となってしまう。遺言を作りたい人が自宅で取り組める気軽さを維持しつつ、コストを抑えて法的に有効な遺言書が作れるところまでサポートする――思い描いているのは、そんな中間的な有料サービスだ。
今後は遺言作成のハードルもデジタル化でどんどん低くなっていくかもしれない。ただ入り口は、既に相当低い。自分に万が一のことがあったときに家族がもめる要素はないか? 誰に何が渡りそうか? 気になった人は「らくつぐ」を試してみるといいだろう。
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