「XREAL Air」(旧Nreal Air)は、日本Xreal(旧日本Nreal)が展開するメガネ型のヘッドマウントディスプレイ(HMD)だ。そのXREAL AirとスマートフォンやPCをワイヤレス接続できるようにする新製品「XREAL Beam」が、「第1回 メタバース総合展 夏」(東京ビッグサイト、6月28〜30日)で披露された。
展示ブースに足を運んで実機を体験したので、その模様をお伝えする。
XREAL Airは、接続したデバイスのコンテンツを大画面で楽しめるメガネ型のHMDだ。スマートフォンやPC、ゲーム機と有線で接続し、4m先に現れる130型相当、または6m先で201型相当の仮想ディスプレイに映像をミラーリングできる。PCでは専用アプリを使うことで仮想トリプルディスプレイに画面を拡張することもできる。
これまでのVRやMRのデバイスといえばゴーグル型の製品が多く、その重さや取り回しの悪さから、長時間の装着が難しいという声もあった。その点、XREAL Airは扱いやすいメガネ型のデザインであること、重さが約79gと他のデバイスに比べて抜群に軽いこと、価格が4万6000円前後(税込み、以下同様)で入手しやすいことから、2022年3月の発売以降、じわじわと人気を集めている。
しかし、ユーザーからは機能の改善や追加を求める声も少なくなかった。例えば、次のような要望が日本Xrealには寄せられていたという。
これらのリクエストを実現するために、同社はXREAL Airの新モデルを開発するのではなく、機能を拡張するアクセサリーを投入した。それがXREAL Beamだ。
XREAL Beamは小型のモバイルバッテリーのような形状をしている。サイズは約105.8(幅)×65.68(奥行き)×18.2(高さ)mmで、重さは約153gだ。2つのUSB Type-Cポートを搭載しており、片方はスマホなどホストとなるデバイスを接続する入力用で、もう一つはXREAL Airと接続する出力用になっている。スマホとはMiracast経由でワイヤレス接続もできる。
内蔵するバッテリーの容量は4870mAhで、最大3.5時間の動画再生が可能だ。入力用ポートに電源を接続すれば、充電しながら使える。モードの切り替えやボリュームの調整、画面サイズの調整などXREAL Air用リモコンとしての役割も果たす。これで上記の要望をかなえられるというわけだ。もう少し具体的に見ていこう。
これまでは仮想ディスプレイが目の前に固定される「0DoF」(ゼロドフ)表示しか行えなかった。顔を動かすと、表示している画面も追従してくるイメージだ。しかし、XREAL Beamを介して接続することで、次の3つの表示方法を実現する。
このモードはこれまで同様、正面に仮想ディスプレイが常に表示されるため、ゲームプレイや動画視聴などに向いている。これまでの違いとして「Smooth Follow」というブレを補正する機能が使えるようになった。揺れる機内や新幹線といった不安定な場所でも快適にコンテンツを楽しめる。
長編映画などの視聴中に、ドリンクを取りに行きたい、ペットの世話を行いたいなど、現実世界を見る必要が生じることがある。そんなときに便利な機能だ。
XREAL Beamのサイドにあるモードスイッチを押すとモードが切り替わり、瞬時に画面サイズが縮小しながら、左上、右上、左下、右下のいずれかの隅に画面が移動する(リング状のクリックパッドで位置は変更できる)。元の大きさに戻したい場合はモードスイッチを押してモードを切り替える。
このモードでは、空間に画面を固定する3DoF表示を可能にする。0DoF表示のスマートディスプレイモードでは、顔を傾けると画面も追従して傾き、横や上を向いても画面が常に正面に表示されるが、空間ディスプレイモードでは、顔を下に向ければ画面は視界の上方に、顔を左に向ければ画面は視界の右側へと移動、または消えていく。
3DoF(X軸、Y軸、Z軸の回転に対応)であるため、しゃがむ、前後に移動するなどしても表示は変わらない。
日本XrealのNegi Ko氏(プロダクトマネージャー)は、「狭い部屋でもプロジェクターを使って巨大スクリーンで見ているような感覚、または置き場所に困るような大画面TVで見ているような体験ができる」と、同モードのメリットを説明する。
これらのモードに加え、XREAL Beamを使って画面サイズや画面との距離も調整可能になった。これはクリックパッドで操作する。距離は上下、画面サイズは左右を押して調整する。サイズと距離が決まったら、確定ボタンを押して完了だ。
体験では操作を覚えきれず、担当者に言われるがまま、大きくしたり距離を離したりしていたので、利用シーンが思い浮かばなかったが、この操作を習得すれば、絵を描くときに拡大/縮小するように、小さい文字を確認するために画面サイズを大きくしたり、また元に戻したりすることが簡単に行えるのではと感じた。
実際のディスプレイに顔を寄せたり離したりするのと同じことが仮想ディスプレイでも行えるイメージだ(XREAL Airは6DoFに対応していないため、前進しても画面に近づけない)。
XREAL Airは単体でも映像出力可能なUSB Type-Cポートを搭載しているAndroidデバイス、Windows、macOSの一部などに対応していたし、XREAL Adapterを併用することで、Lightningポート搭載のiPhone/iPadやNintendo Switch、一部のPlayStationなどと接続が可能だ。
しかし、XREAL Beamがあればワイヤレス接続ができるようになるため、対応機種がぐっと増える。オルタネートモード対応のUSB Type-Cポートを搭載しているハイエンドAndroidデバイスだけでなく、画面キャスト(Android 8.0以降)に対応しているスマホの画面を大画面の仮想ディスプレイに表示することもできる。Nintendo SwitchもDock不要でケーブル1本あれば接続できることになる。
ブースにいた担当者は「XREAL Beamで実現した機能の最大のトピックは、3DoFの追加と互換性の増大だと感じている」と語っていた。
XREAL Beamはスマートフォンやゲーム機の映像をもっと手軽に大画面表示したいという人にとって有用な製品になるだろう。XREAL Beamは現在、公式サイトで先行予約受付中だ。
一般販売価格は1万6980円だが、予約価格は少し安い1万5980円となっている。XREAL Airとのセットも予約受付しており、こちらはグラスの価格に予約価格をプラスした6万1960円となっている。いずれも発送は7月下旬だ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.