AlexaにジェネレーティブAIがやってくる 「まるで人間と会話しているような感覚に」──米Amazonがデモを公開

» 2023年09月21日 02時37分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 米Amazonは9月20日(現地時間)、AIエージェントサービス「Alexa」にジェネレーティブAI(生成AI)を組み込んだ新機能のデモを公開した。大規模言語モデル(LLM)によってより深く、自然な会話を続けられるようになるという。同社は「まるで人間と会話しているような感覚になるだろう」と紹介している。まずは米国在住のEchoデバイスユーザー向けにプレビュー版を提供する。

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 現行のAlexaは「アレクサ」というウェイクアップワードの後に質問すると返答される一問一答のような形式だが、デモで紹介された新しい「Let's chat」と呼ばれる会話機能では、Alexaに「アレクサ、レッツチャット」と呼びかけると「ではチャットをしましょう。何かお手伝いできることはありますか」と返答され、会話を続けられる。デモでは次のような会話を自然に行う様子が紹介された。


Alexa 「ではチャットをしましょう。何かお手伝いできることはありますか」

ユーザーA 「ロマンチックなデートのアイデアはある?」

Alexa 「あなたがやりたいアクティビティーはありますか?」


ユーザーB 「プエルトリコ旅行のベストシーズンは?」

Alexa 「プエルトリコのベストシーズンは4月から10月です。他にお手伝いできることはありますか?」


ユーザーC 「風船の話を書いてくれる」

Alexa 「面白いですね」

ユーザーC 「あ、やっぱりゼリーでもいい?」

Alexa 「もちろん、カレブという男の子がいて、世界で一番ゼリーが好きだったんだ」


ユーザーD 「ピーナッツやトライナッツが入っていないレシピをいくつか見つけたい」

Alexa 「ピーナッツや木の実のアレルギーはありますか?」

ユーザーD 「私はないけど、子供の一人がアレルギーだ」

文脈を理解して会話を続けることもできる

 イベントに登壇したデイブ・リンプ氏(デバイス&サービス担当 上級副社長)が行った長い会話のデモは次の通り。

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デイブ・リンプ氏 「アレクサ、レッツチャット」

Alexa 「こんにちは、何かご用ですか?」

デイブ・リンプ氏 「お元気ですか?」

Alexa 「私は元気です。チャットで毎日たくさんの人を助けることができてとても幸せです。あなたはどうですか?」

デイブ・リンプ氏 「素晴らしいよ。僕たちの最新のイノベーションをお客さんと共有できて幸せだ」

Alexa 「それは素晴らしいお言葉です。私たちにとってお客さまはとても大切な存在であり、お客さまの体験を向上させる方法を常に模索しています」

デイブ・リンプ氏 「それについては後ほどお話ししますが、私はあなたにいくつかの質問があります」

Alexa 「もちろんです。何を聞きたいですか?」

デイブ・リンプ氏 「私の好きなフットボールチームはどうしてる?」

Alexa 「ヴァンダービルトフットボールチームはSEC東地区で2位と2位で、5位にランクされています。APCFPやCoaches Pollではランクされていません」

デイブ・リンプ氏 「好きなフットボールチームはありますか?」

Alexa 「私はシアトル出身なので好きなチームはシーホークスです。私はずっと“12th Man”です」(同チームはファンを12人目の選手“12th Man”と呼んでいる)

デイブ・リンプ氏 「前回の試合はどうでしたか?」

Alexa 「延長戦でライオンズを37対31で破りました」

デイブ・リンプ氏 「素晴らしいね」

Alexa 「本当にうれしいです」

デイブ・リンプ氏 「ジェノ・スミスはどうだった?」

Alexa 「328ヤードを投げてタッチダウン2回でした」

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デイブ・リンプ氏 「次のシーホークスの試合はいつ?」

Alexa 「次の試合は9月24日、日曜日の午後4時です」

デイブ・リンプ氏 「日曜日に友達を呼んで試合をする予定なんだ」

Alexa 「楽しそうですね。試合は楽しみですか?」

デイブ・リンプ氏 「グリルがいいかな。バーベキューチキンに合うサイドメニューは?」

Alexa 「バーベキューチキンに合う他の部位としては、コルスラ、ポテトサラダ、ベイクドビーンズなどがあります」

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デイブ・リンプ氏 「シアトルの天気は?」

Alexa 「シアトルでは今度の日曜日、89%の確率でにわか雨が降り、89%の確率で雨が降ると予想されています。降水確率は89%、降水量は0.33インチです」

デイブ・リンプ氏 「じゃあ、日曜日の正午に友達を招待するメッセージを書いてよ」

Alexa 「久しぶりだね。日曜日のお昼に来ない?試合を見て、サイドメニューにバーベキューチキンを食べよう」

デイブ・リンプ氏 「僕の携帯に送って」

Alexa 「あなたのアプリにメッセージを送りました」


 このように、ウェイクワードを使わずに自然な会話を続けられる様子を紹介した。さらに前の文脈がその後の会話の内容に反映されていたり、文脈をもとにメッセージを生成する機能も披露している。

 デイブ・リンプ氏は「2014年に最初のAlexaを展開したときと同じように、時間がたつにつれてどんどん良くなっていく」と説明する。さらにユーザーがAlexaに話しかけているのか、それとも部屋にいる別の誰かに話しかけているのかを判断するために、カメラから得た視覚情報(ユーザーがディスプレイを見ているか)や音響モデルも活用するという。

Alexaの喋り方も進化

 さらにAlexaの喋り方も今後進化していく。ユーザーの現在の感情や声のトーン、声色を認識し、同じような感情の変化を声で表現する。例えば、ユーザーが好きなスポーツチームが勝った結果を知らせるときは喜びの声を出し、負けていた場合はユーザーに配慮するといった声色を使い分けられるようになるという。

 これらの進化が組み合わさることで、まるで人間と会話しているような感覚をAlexaで実現し、今後もユーザーにとって必要不可欠なアシスタントにしていくとした。

変更履歴(2023年9月22日 午後1時4分):記事初出時、誤って「サッカーチーム」と記載していたところを「フットボールチーム」に修正しました。訂正してお詫びいたします。

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