そんな新しいアートの開拓者、ホックニー氏の展覧会を開催している東京都現代美術館で、挑戦し続けるホックニー氏に感化されたのか、同館始まって以来の新しい取り組みが行われた。
「iPadで絵を描こう」という小学生以上を対象としたプログラムで「iPadとApple Pencilを使って絵を描いてみる」という体験を通して、絵を描くという行為の楽しさを再発見してもらうことを目的としたプログラムだ。
1回当たり約20名が参加するワークショップで、9月3日(日)の午前から合計3回開催された。実際に自分でも描いてみることで「ホックニーの表現をより深く理解する」という目的もあったようだ。
インストラクターを務めたのは、西中デザイン事務所の西中賢氏だ。同氏自身もこうした指導は初めてだという。
ワークショップで用意されたのは20台以上のiPadとApple Pencilだけ、お絵描きはiPadOS標準の「メモ」アプリを使って行うというものだった。
会場に用意されたテーブルには被写体として花が飾られており、これを小学校低学年から年配者まで幅広い層がホックニー氏同様にiPadで写生していた。仕上がった作品は記念として額縁のグラフィックと共にプリンタで印刷しプレゼントされていた。
何も特別なソフトを使わないワークショップではあったが、どこかに出品できそうなくらい上手に絵を描いている参加者もいれば、極めて個性的な絵を描く参加者もいて、画面上で見るデジタルの絵画でありながら、描いた人一人一人のパーソナルなストーリーを感じさせた。これは、昨今よく目にするAIで合成された絵ではそれらしく模倣することはできても、本質的には備わっていないものだろう。
残念ながら、ワークショップはこの日と10月に開催される2回目(既に予約受け付け終了)だけだが、最新のiPadとApple Pencilさえ手に入れれば、現代美術最高の画家とほぼ同じ条件で絵を描くことができる。
読者の皆さんも、ぜひとも1度、自分でもトライしてからホックニー展に足を運べば、展覧会もまた別の見方ができるのかもしれない。
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