「AIの良さや限界を認識することが重要、AIはツールだ」 立命館、AI人材育成でアドビと協定 日本MSに続き

» 2023年09月29日 15時42分 公開
[山口恵祐ITmedia]

 「生成AIは万能ではない。実際に使ってみて限界や有効性を知るリテラシーが必要だ。これらを間違えず、うまく活用できれば、私たちの力は倍増するだろう」──学校法人立命館(京都市)の仲谷善雄さん(総長)はそう話す。

 立命館とアドビは9月29日、AI活用スキルの育成などを目的とした独自のカリキュラム開発で連携すると発表した。立命館の小中学校、高校、大学に通う児童、生徒、学生の計5万人を対象に、クリエイティブな発想やデジタルリテラシーの育成を目的とした講座などを持続的に展開する。

photo 学校法人立命館の仲谷善雄さん(写真=左)と、アドビのクレア・ダーレイさん(写真=右)(立命館のライブ配信より)

 立命館は、2024年4月から社会課題解決と人材育成を目的とした教育プログラム「QULTIVA」(カルティバ)を始める。この中で、生成AIや3D、メタバース、アフターコロナなどをテーマにしたセミナーやデジタルスキルの育成を目指す一部講座をアドビと共同開発する。

photo 連携する取り組みの内容(立命館のライブ配信より)

 デジタルクリエイティブツール「Adobe Creative Cloud」や「Adobe Express」を活用する、先進的なカリキュラムや教育活動を推進する教育機関の認定制度「Adobe Creative Campus」の認定を取得するための取り組みも共同で行う。

 同制度では全世界で約70校が認定されており、立命館は日本初の認定校を目指すことで、今後は世界各国の教育機関と教育コンテンツやベストプラクティスを共有する機会を増やしたい狙いだ。

 アドビのクレア・ダーレイさん(デジタルメディアWW フィールド セールス&カスタマーサポート担当上級副社長 兼 アドビ株式会社 社長)は「未来を担う、次世代のデジタルリテラシー育成にかかわるということは、アドビにとって最重要であり、誇りでもある。今月から正式に提供を始めた『Adobe Firefly』は、進化したクリエイティビティーを世界中の学生や顧客に提供する新しい時代の幕開けになる。人間の想像力を高めるためのベストフレンドになることを心から期待している」と話した。

 仲谷さんは「立命館の目指す創発的な人材の育成は、教育機関単体でなしえないものだ。アドビ様をはじめとする最先端のプレーヤーと手を携えて、今回の連携を実りあるものへの育てていきたい」とコメントした。

ありきたりな「教育機関×企業」連携を脱する

 こうした連携においては「連携企業のツールを使うだけ」という状況に陥りがちだが、立命館の三宅雅人さん(総合企画室 副室長)は、そうではないと説明する。

 「本当の意味で何ができるのか、何をしたいのか、というところをディスカッションするところからアドビ様と検討した。学生がツールの使い方をマスターするだけではなくて、ツールを活用してどのようにイノベーションを起こす人材を生むようなプログラムを作れるのか、そうしたことに注目することを目指して今回の協定に至った」(三宅さん)

 立命館ではこうしたプログラムを常に改良したり、海外の大学との連携したり、多言語化まで進めたりすることで、先進的な教育を持続的に提供したい考えだ。

 立命館は8月、DX人材の育成やスタートアップ創生、生成AIの開発といった取り組みで日本マイクロソフトとの連携も発表するなど、先進テクノロジーを活用した人材育成に前のめりだ。

photo 取り組みについて説明する立命館の仲谷善雄さん(立命館のライブ配信より)

 「私はAIを長年研究してきた立場でもあるが、(近年の生成AIの発展について)ようやくわれわれが目指してきたところに来たかと思っている。脅威に感じるという声もあるが、新しい技術が生まれたときは必ずそうした意見は出る。実際に使ってみて良いところ、限界をしっかり認識することが重要だ。昔から『AIは人格を持つのでは』といわれるが、だまされてはいけない。AIはツールだ」(仲谷さん)

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