今回は静止画カメラとしてのiPhone 15 Proをレビューしてきたが、もちろん動画カメラとしても進化している。
今回の目玉はProRes記録時にLogエンコードを使って撮影が可能になったことだ(参考リンク)。これにより、グレーディング処理で絵作りを後から行えるようになるので、他社のシネマカメラなどとの混在撮影時の色味合わせがやりやすくなる。
加えてiPhone 15 Proでは、ProRes撮影時にUSB Type-C端子に外付けストレージ(※1)をつないでおくと、そこへと動画を自動保存する機能が追加された(※2)。本格的な“作品作り”において、カメラとしてiPhoneを使うモチベーションが高まったともいえる。
(※1)書き込み速度が毎秒220MB以上かつ消費電力が最大4.5WのUSBストレージ
(※2)本体ストレージが128GBの場合、4K/60fpsのProRes動画を撮影するには、(※1)の要件を満たすUSBストレージが必要です(内蔵ストレージだけでは撮影できません)
実際のところ、要件を満たす外付けストレージをつなげば、4K/60fpsのProRes撮影が可能なので、画質面ではかなり良い線を行っている。適切なリグを使えば、小型ゆえにこれまで撮影が難しかったようなシーンも容易に撮影可能だ。
今後、撮影現場での評価が進めば、映画やドラマの一部をiPhoneで撮影するといったことがさらに増加していくかもしれない。
もっと身近なところでは、「Cinematicモード」で電子ズームが可能になった。これまで、同モードでは「1xモード」と「2xモード」の二択だったが、電子ズームに対応することで絵作りの自由度が高まったことはもちろん、撮影途中に画角を変えることもできるようになった。
このように、iPhone 15 Proは「より楽しく多彩で、創造的な撮影」ができるようになってきた。しかし、iPhone 11 Proの発表時に語られていた“理想”からはまだ遠いというのも事実だろう。
iPhone 11 Proの発表からの4年間で、絵作りのファインチューンも進み、レンズ交換式デジタルカメラで撮影するようなクリエイティブな作業も、ある程度楽しめるようになった。iPhone 15 Pro/15 Pro Maxでは懸案の1つだったレンズコーティングを改善し、逆光に強くなっている。
28mm/35mm画角への切り替えや固定が可能な点は、作品作りという文脈で感覚的になじみやすいという人もいるだろう。筆者個人としては、日本やアジアの街中なら28mmでの撮影がシックリとくるが、欧米の街では35mmで切り取る方が感覚的に合う。
恐らく、撮影する街や場面ごとに好みの画角も変わってくるだろう。単なる操作性と画像処理の話だといえばそれまでだが、“写真機”としてiPhoneを楽しむための仕掛けと考えれば、「Pro」を選ぶモチベーションにもなるのではないだろうか。
ポートレートモードでの被写体分離やボケ処理は確実に進化している。とはいえ「じゃあレンズ交換式デジタルカメラが不要になるの?」と聞かれたら、まだそこまには至っていないと思う。“写真機を目指す”という道は、まだ半ばなのだ。
しかし、1年ごとの違いは小さくとも、年数を重ねることで絵が変化し、操作性にも違いが出てくるという意味で着実な進歩は感じ取れたのは間違いない。
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