「HP」という社名は創業者の“コイントス”で決まった――シリコンバレー生誕の地「HP Garage」で知る、意外な逸話(2/3 ページ)

» 2023年10月05日 17時00分 公開
[笠原一輝ITmedia]

創業者が「HP 200A」を開発していた当時を再現

 HPの創業の地となったパロアルトの民家とその車庫だが、HPが他のオフィスに移転した後は、普通の賃貸用の民家に戻り、HPとは関係のない一般の住人が住んでいたという。

 しかしその後、HP自身が“歴史の保存”の必要性を感じて、2000年に当時のオーナーから買い取ることを決断。そして先述の通り、現在は限定公開のライブラリーとして運用されている。

 このHP Garageは、道の外から誰でも外観は見られるが、中を見学するにはHPまたはHPEの従業員を通して予約を行う必要がある。

HP Garageの入口には「シリコンバレー生誕の地」と書かれた看板がある。ここは施設の外なので、誰でも見ることができる

 今回筆者が訪れている間も、ツアーガイドに連れられた日本語を話す観光客の一団が、外からHP Garageを眺めていた。どうやら、パロアルトの観光名所となっているようだ。

 ただし、HP Garageは、閑静な住宅街にある。入口にある「シリコンバレー生誕の地」の看板を見逃すと、本当に「住宅街にある1件の邸宅」と勘違いしてしまいそうなレベルで溶け込んでいる。

 自動車などで訪れる際には、近所の迷惑になったりしないように配慮が求められる。

看板がないと見逃しちゃうようね HP Garageは、パロアルト市の閑静な住宅街にある。パッと見では隣近所の民家と同じ外観なので、看板がなければ見逃してしまうだろう

 サンフランシスコからパロアルトを経てサンノゼまで広がる一帯を「シリコンバレー」と呼ぶようになったきっかけの1つとして、この「HP Garage」が含まれることは間違いない。シリコンバレーの生誕時の様子を後世に伝えるべく、HPは一種のメセナ(文化/芸術支援)活動として、このHP Garageの維持/整備に努めている。

保存状態が良好な民家

 かつてパッカード夫妻が住んでいた民家は2階建てなのだが、公開されているは1階のリビングルームやキッチンのみとなっている。カーテンなどはパッカード夫妻が暮らしていた当時のままだそうで、保存状態は思っている以上によい。

リビングその1 パッカード夫妻が住んでいた民家のリビング
リビングその2 こちらもリビング
リビングその3 上の写真の右端にあった家具が何なのか聞いたところ、これは「収納式のベッド」で、夜になると引っ張り出して寝ていたそうだ
タイプライター 創業時に使われていたタイプライターも展示されている
キッチンはキレイ 先述の通り、HP Garageは2000年まで“普通の”借家だった。そのこともあり、キッチンには比較的新しい機材が導入されている
黒電話 こちらの黒電話は、パッカード夫妻が住んでいた頃を再現する過程で取り付けたそうだ

離れと車庫から伝わる熱気

 パッカード氏が住んでいた離れと、作業場だった車庫も公開されている。離れと車庫は、ある意味でHP Garageの“真骨頂”といえる展示で、離れにはヒューレット氏が使っていた机が再現されている。車庫にも当時利用していた装備などが再現されており、「ああ、ここでビル・ヒューレットとデーブ・パッカードがHP 200Aを開発していたのだな」と、当時の様子が想起されるような工夫も見られる。

 現在でも、シリコンバレーのスタートアップ企業などに行くと「ガレージ・プロジェクト」と銘打って、エンジニア自らがはんだごてを持って作業することなどが強調されることが多い。その“元ネタ”がHP Garageであることを実感できた。

離れの内部 ビル・ヒューレット氏が暮らしていた離れの内部。実際にはトイレも備わっていたそうだが、衛生状態があまりよくなったため撤去したという
机その1 再現されたヒューレット氏のデスク
机その2 ここでヒューレット氏がいろいろなものを“Invent”していたと考えると旨に熱いものがこみ上げる
車庫その1 こちらはHPの作業場だった車庫
車庫その2 車庫の入口近辺にある作業机の周辺
車庫その3 HPが創業当初に作っていたオーディオ発振器
車庫その4 あらゆる展示が当時のもので、シリコンバレーの生誕を強く実感しやすくなっている
車庫その5 実際に使われていたという旋盤
車庫その6 車庫の一角に置かれた無線機
車庫その7 創業者の手書きメモ(回路図)も貼られていた。もちろん、本物ではなくレプリカだ

 HP Garageは、以上のような展示物で構成されている。今回、見学した際にHPに関する“面白い”話を聞けたので、その話で本稿を締めようと思う。

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