HPの創業の地となったパロアルトの民家とその車庫だが、HPが他のオフィスに移転した後は、普通の賃貸用の民家に戻り、HPとは関係のない一般の住人が住んでいたという。
しかしその後、HP自身が“歴史の保存”の必要性を感じて、2000年に当時のオーナーから買い取ることを決断。そして先述の通り、現在は限定公開のライブラリーとして運用されている。
このHP Garageは、道の外から誰でも外観は見られるが、中を見学するにはHPまたはHPEの従業員を通して予約を行う必要がある。
今回筆者が訪れている間も、ツアーガイドに連れられた日本語を話す観光客の一団が、外からHP Garageを眺めていた。どうやら、パロアルトの観光名所となっているようだ。
ただし、HP Garageは、閑静な住宅街にある。入口にある「シリコンバレー生誕の地」の看板を見逃すと、本当に「住宅街にある1件の邸宅」と勘違いしてしまいそうなレベルで溶け込んでいる。
自動車などで訪れる際には、近所の迷惑になったりしないように配慮が求められる。
サンフランシスコからパロアルトを経てサンノゼまで広がる一帯を「シリコンバレー」と呼ぶようになったきっかけの1つとして、この「HP Garage」が含まれることは間違いない。シリコンバレーの生誕時の様子を後世に伝えるべく、HPは一種のメセナ(文化/芸術支援)活動として、このHP Garageの維持/整備に努めている。
かつてパッカード夫妻が住んでいた民家は2階建てなのだが、公開されているは1階のリビングルームやキッチンのみとなっている。カーテンなどはパッカード夫妻が暮らしていた当時のままだそうで、保存状態は思っている以上によい。
パッカード氏が住んでいた離れと、作業場だった車庫も公開されている。離れと車庫は、ある意味でHP Garageの“真骨頂”といえる展示で、離れにはヒューレット氏が使っていた机が再現されている。車庫にも当時利用していた装備などが再現されており、「ああ、ここでビル・ヒューレットとデーブ・パッカードがHP 200Aを開発していたのだな」と、当時の様子が想起されるような工夫も見られる。
現在でも、シリコンバレーのスタートアップ企業などに行くと「ガレージ・プロジェクト」と銘打って、エンジニア自らがはんだごてを持って作業することなどが強調されることが多い。その“元ネタ”がHP Garageであることを実感できた。
HP Garageは、以上のような展示物で構成されている。今回、見学した際にHPに関する“面白い”話を聞けたので、その話で本稿を締めようと思う。
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