ロジクールといえば、マウスやキーボードなどのPC周辺機器を思い浮かべる人が多いだろう。これらは仕事の生産性に直結する重要なデバイスで、同社の主力製品であることに変わりはないが、“彼ら”が次に目を付けたのは「オフィス空間」そのものだ。
ロジクールは12月8日、「THE NEW LOGIC OF WORK」というテーマで事業戦略発表会を行った。テーマを直訳すれば「仕事の新しい論理」だが、同社がこれから法人向けの領域で目指すのは、オフィス内外での快適なコミュニケーションを実現すること、またメンバーの健康を損ねることなくコミュニケーションを活性化させることだという。
そこで新たな取り組みとして始めるのが、自社で提案しきれない分野を他社とコラボすることで補う「ロジクール ONE“with Office”パートナーシップ」である。
生産性の高い快適なオフィス空間を構築するためには、良いキーボードやマウス、Webカメラなどをそろえるだけでは不十分で、オフィスのデザインそのものや器具、あるいは制度まで見定める必要があるというところにロジクールはたどり着いたということだろう。
現在のところ、新しいパートナーシップへの参画を表明しているのは、オフィスデザイン・オフィス家具分野でイトーキ、ハーマンミラー、ソーシャルインテリア、スチールケース、ワークプレイス ソリューションズの5社、システムインテグレーター・ITコンサルティングの分野では野村総合研究所だ。
オフィスデザイン・オフィス家具分野での提携では、それぞれ分野の異なる顧客基盤への営業提案を行うこと、販売パートナーシップとなること、さらに一歩進んで製品開発といった上流部分からのコラボなどをしていく。同じ業種の企業がパートナーシップに参画していても、「協業の仕方はパートナーによって異なる。働く人たちに幸福と安心感を与えたいという共通のミッションを持ち、コンセプトや活動の方向性に共感してもらうことが重要だ」とロジクールの笠原健司社長(代表取締役)は話す。
「コロナ禍を経て、多くの人の働き方への考え方が変わった」──と、笠原社長は話を続ける。従来は月曜から金曜まで、出社して仕事をこなすのが当たり前だったが、今では62%が「オフィスでのフルタイム勤務に戻るのであれば離職したい」と考え、82%がリモートワークを支持するようになった」と変化を説明した。
働き方の変化により、企業が抱える課題も増えている。従業員のモチベーションアップ、ハイブリッドワークにふさわしい環境構築、生産人口の減少に対する優秀な人材の確保や離職率低下の回避などだ。
それらを解決するには、場所にとらわれていた旧来の「オフィス」概念を捨て、「働く場所がオフィスである」という新しい考え方を取り込むことが必要だという。
その上で、ロジクールは「イノベーティブな働き方を模索している企業をテクノロジーで支援する」ことをこれからの事業戦略として打ち立てた。
これまで、ロジクールといえば、キーボードやマウスなどコンシューマー向けPC周辺機器を開発している企業というイメージが多かった。それを方向転換し、法人ビジネスに目を向けたというのが新たな事業戦略の1つである。
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