以上のように、赤と黒のどちらも使えることで、モノクロに比べて格段に高い表現力を持つ本製品だが、ネックとなるのは画面の切り替え時の所要時間だ。E Inkの書き替えはある程度の時間がかかることはよく知られているが、本製品のそれはかなりまどろっこしい。
具体的にはボタンを押した後、白黒の反転やリフレッシュといった挙動を何度か繰り返しつつ、画面の切り替えが完了するまで、要する時間は十数秒だ。公称値では16秒とされているが、赤黒のE Inkの組み合わせによっては、プラス数秒程度はかかる場合もある。
もともとE Inkは、画面の書き換え時に発生する残像を消去するため、定期的に全体をリフレッシュさせる仕組みが採用されているが、Amazonの「Kindle」などE Inkの読書端末の場合、リフレッシュの頻度を数ページに1回に落とすことで挙動を高速化させており、最近のデバイスではほぼ意識せずに使えることも多い。
しかし本製品は、書き替えが発生するたびにおそろしく念入りに、複数回のリフレッシュを行って残像を完全消去するので、連続しての切り替えともなると数十秒はかかってしまう。
唯一の救いは、画面の切り替えが順送りだけではなく、ボタンの二度押しで逆送りが可能なことだが、電子書籍端末のようにタップやスワイプ1つでスムーズに切り替わるイメージを持っていると戸惑う。もし若干クオリティーを落としてでも動作速度を優先するモードがあれば、筆者はそちらを選ぶだろう。
以上ざっと使ってみたが、5つもの画面を切り替えられる上に、黒に加えて赤も表示できるなど表現力も高い。ハーフトーンを表示させるなどE Inkの特性に合わない使い方さえしなければ、アイデア次第でさまざまな用途に使えるだろう。
唯一の懸念点は前述の動作速度で、E Inkをある程度理解しているユーザでも、この遅さはどうしても気になる。ITリテラシーが低くても問題なく使える反面、動作速度に音を上げて徐々に使わなくなってしまうケースは十分に考えられ、そこにどう折り合いをつけるかがポイントになりそうだ。
ともあれ実売価格は税込み3880円と非常にリーズナブルなので、1つ入手して、実利用にフィットするか試してみる価値はある。量販店で多く見かけるプライスカードのようなリモートでの書き換え機能こそ搭載していないが、E Inkの可能性を感じさせてくれるアイテムだ。
Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.