今から50年前の1974年3月20日、電子式卓上計算機の生産数量が年間1000万台を突破した。また、初の国産電卓「CS-10A」(旧早川電機工業、現シャープが生産)誕生から10年(正確には1964年3月18日発売)の節目を迎えたこともあり、3月20日を「電卓の日」と日本事務機械工業会(現 ビジネス機械・情報システム産業協会)電卓部会が定めた。
電卓の日を前に、2024年10月に電卓事業60周年を迎えるキヤノンマーケティングジャパンが「キヤノン電卓事業60周年 記者説明会」を開催した。キヤノンマーケティングジャパン コンスーマ新規ビジネス企画部 コンスーマ新規ビジネス推進課 長健夫チーフがこれまでの歴史を振り返りつつ、今後の展望を語った。
キヤノンの電卓1号機は卓上型であり、世界初のテンキー式だ。発売は1964年10月20日で、名称は「キヤノーラ130」である。
「世界初のテンキー式」ということだが、それまでの電子計算機はどのようなキーを搭載していたのだろうか。それは「フルキー」方式で、1の位から10の位またはそれ以上の位まで、それぞれに1〜9のボタンが並ぶものだった。つまり、「33万9857」という数字を入力する場合、1の位の7を、10の位の5を、100の位の8を押す、というわけだ。
テンキー式にすることで、コンパクトかつ軽量になり、使いやすさも増した。1台39万5000円(当時の乗用車と同程度)という価格にもかかわらず、人気を博したという。
その後の60年間で、キヤノンが発売してきたモデルは合計で約400種に上り、累計出荷台数は2億9000万台にもなる。
それからわずか6年で、持ち運び可能な「ポケトロニク」を発売、小型軽量化を重ね、クレジットカードサイズの超薄型電卓「キヤノンカードLC-7」(1979年2月)まで誕生している。
なお、日本で売れたのは抗菌機能のある「HS-1200C」(1988年5月発売)や千万単位機能搭載電卓「LS-120TU」(2002年2月発売)、コンパクトで大画面、そして軽減税率に対応したカラフル電卓「LS-105WUC」(2017年7月発売)などがある。
興味深いのが、2023年に米国で売れたモデルとの比較だ。米国では、1位こそ「LS-82Z」という国内で販売されているのとあまり変わらないモデルであったが(それでも1ドルの価値が高いため桁数は8)、2位と3位ではプリンタ電卓となっている。
変わり種としては、21人分の電話帳データを記録できる「パームトロニクLCメモ」(1978年5月発売)、前述のクレジットカードサイズの超薄型電卓、PCのテンキーとして使える他に計算した結果をPCに送信でき、さらにトラックボールやスクロールホイールが付いた「KS-1200TKM」(2003年12月発売)、テンキー搭載マウス「LS-100TKM」(2008年7月発売)などだ。
キヤノン電卓の中の「最も○○な電卓」も紹介された。
最も高価だったのは、1967年5月発売の「キヤノーラ325」で価格は59万5000円だった。最も軽いのは「キヤノンカードLC-7」で重量は約37gだ。
2004年以降で最も売れたのは2009年8月発売の「HS-121T」で、累計出荷台数は98万台となっている。LS-121Tは抗菌タイプで、抗菌製品技術協議会ガイドラインで品質管理、情報公開された証であるSIAAマークを取得しているモデルだ。
そして、最もロングセラーとなったのは、プリンタ付き卓上電卓「MP1215D-V」だ。1987年8月の発売から2008年まで21年間も販売されていた。「今でも銀行や保険会社など金融機関で愛用していただいている」と長氏は付け加えた。
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