国内の電卓市場は右肩下がりだ。特に2020年は、2019年の出荷台数が454万台以上あったのが393万台まで落ち込んだ。理由は新型コロナウイルスのまん延だ。「出社する人がいないから、備品としての電卓が必要ではなくなったのではないか」と長氏は見ている。
その後も台数は下がり続けており、2023年では出荷ベースで3300万台、2024年〜2025年には少子化の影響や、それまで電卓を使っていたような業種で、より便利なツールが登場していることから、さらに下がるとキヤノンマーケティングジャパンでは予想している。
とはいえ、キヤノンでは電卓事業の今後について悲観してはいない。その理由の1つは「しっかりした電卓への回帰が見られること」だ。クレジットカードサイズの電卓がもてはやされた時代もあったが、最近ではしっかりと素早くキーを打てる“きちんとした”電卓に人気が集まっているという。
また、スマホにも電卓機能があるが、日商簿記検定でスマホの利用は認められていないし、ビジネスパーソンであればスマホアプリ以外の電卓の所持を求められる。
その他の理由としては、自由度が高く小回りが利くことから、短いフローで商品化できること、抗ウイルス製品やバイオマスプラスチックなど時代のニーズを反映しやすいこと、「何より、やっていて楽しい仕事だと思えること」だと長氏。
「60年という歴史の重みに責任を感じつつ、長く愛用してくださっているお客さまを裏切らないような製品を作っていきたい。そして、60周年を迎えたばかりだが、70周年、そして80周年と続けていきたい」と締めくくった。
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