バッファローのWXR18000BE10Pは、国内メーカーとしては初めてWi-Fi CERTIFIED 7を取得したWi-Fiルーターだ。しかし、先に触れた通りIEEE 802.11beという規格自体はまだ確定していない。
IEEE 802.11シリーズの無線LANでは、過去にもDraft時点で認定プログラムが登場したり、対応製品が発売されたりしたこともある。その際はDraftから仕様が大幅に変わることがなかったので、Draft準拠の製品も規格確定後に「正式規格に準拠したもの」として見なされた。
とはいえ「まだ確定していない規格の製品を買っても大丈夫なのか?」という不安はどうしても拭いきれない。このことを率直にバッファローの皆さんに伝えたところ、成瀬廣高氏(ネットワーク開発部 第一開発課長)がこう答えた。
結論からいうと、大きく2つの理由から心配する必要はないと考えています。
1つは米IEEEにおける規格の議論状況にあります。IEEE 802.11be規格に関するタスクグループでは2023年6月頃から「Draft 4.0」の議論が進行していますが、「Recirculation Ballot(投票の再実施)」という標準化を前にした細部のすり合わせ段階に入っており、本規格にさらなる新機能が搭載されるリスクはないことを意味します。少し言い方を変えると、IEEE 802.11be対応の通信チップの再設計を求められるような仕様変更はあり得ないということです。
もう1つは、当社製品の話になりますが、今回発売したWXR18000BE10PはWi-Fi CERTIFIED 7の認証を“しっかりと”取得したことです。この認証を取得するには、「新規格における互換性」はもちろんですが、「旧規格との互換性」や「他ベンダーとの互換性」を確保することも求められます。新旧規格で互換性のある運用を行える“お墨付き”を得たことになりますので、少なくとも同認証を得たWi-Fi 7機器は、安心して購入して頂いても大丈夫です。
時系列を振り返ると、2023年12月に「規格の合法化」が行われた後、WXR18000BE10Pは2024年1月に「Wi-Fi CERTIFIED 7取得」、同年2月に「発売」と、かなり短いタイムスパンで発売までこぎ着けたように見える。なぜ、ここまでスピーディーに認証を取得し、発売にこぎ着けることができたのだろうか。
成瀬氏は「実は想定よりも約4カ月前倒しされた」と明かした上で、次のように説明した。
本製品(WXR18000BE10P)の開発は、半導体メーカーなどと密にコミュニケーションをとりながら約2年間をかけて進めてきました。電波法や関連規則類の改正タイミングは、メーカーとして把握するのは難しかったので、できることは先に進めておこうと準備を進めてきた格好です。
当初、IEEE 802.11be規格に関連した規則改正を2024春頃に行われると予想していたのですが、それがまさかの2023年の年の瀬に早まってしまいました。
早期の発売に当たっては、ハードウェア面でも半導体のリードタイムが非常に長い時期でしたので苦心しましたが、一番大変だったのはファームウェアの調整工程だったと思います。
ファームウェアは、ルーターを動かすために必要なソフトウェアだ。その開発に当たった市川剛生氏(ネットワーク開発部 FW第一開発課長)が、こんなエピソードを語ってくれた。
当社では普段、コンシューマー製品と法人向け製品でファームウェアの開発チームを分けているのですが、想定よりも早くIEEEE 802.11beが解禁されたことに伴って法人向けチームを巻き込んだ“総力戦”で開発に挑みました。人員の規模でいうと、普段の2〜3倍程度です。ベテラン社員の知見などを生かしつつ、チームメンバーの1人1人が自主的に取り組むことで、想定よりも短縮されたスケジュールにも何とか対応できました。
もちろん、IEEEE 802.11be(の通信機能)自体は、チップベンダーが作りこんでくださったので大きな苦労はありませんが、そこにセキュリティ機能を始めとするバッファロー独自機能も組み込む必要もあります。ここにはしっかりと投資をしなくてはなりません。
Wi-Fi CERTIFIED 7の取得にも、苦労があったという。必要な試験に対応するために、一部のスタッフは台湾に1カ月半ほど出張していたそうだ。
そこまでして早期に発売することにこだわったのはなぜなのか。下村洋平氏(コンシューマーマーケティング部 BBSマーケティング課 次長)はこう語る。
「Wi-Fi 7」というキーワードは、かなり早い段階から一般に認知されるようになっていましたので、我々としても早く販売したいという思いやプレッシャーはもちろんありました。一方で、この先の数年間で主流になっていく規格の“始まり”でもありますから、中途半端なものに仕上げてはいけない面もあります。
迅速なリリースを意識しつつも、安心して使ってもらえる品質の製品に仕上げることにもこだわりました。実際のところは、我々の納得のいく製品をお届けするために、ユーザーの皆様をお待たせしてしまったくらいかもしれません。
WXR18000BE10Pは、Wi-Fi 6E対応ルーターのフラグシップモデル「WXR-11000XE12」の事実上の後継でもある。なぜ、初めてのWi-Fi 7対応ルーターをフラグシップモデルとしてリリースしたのだろうか。
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