過去の製品展開を振り返ると、バッファローがWi-Fi 6E対応ルーターの“初号機”として出したのは、「Wi-Fi Easy Mesh」対応のミドルレンジモデルだった。
今回、Wi-Fi 7対応ルーターの第1弾として、フラグシップモデルを投入したのはなぜなのか。下村氏に尋ねるとこう答えた。
Wi-Fi 6Eの際に、あえてメッシュ対応Wi-Fiルーターと、そのセット品を先にリリースしたのは、6GHz帯の無線LANに端末するクライアント機器(端末)がすぐには出てこないだろうという状況を踏まえた判断でした(参考記事)。Wi-Fiルーター間のバックホール通信で6GHz帯を生かしてもらおうと思ったわけです。
一方、今回のWi-Fi 7ではやはり「最大通信速度46Gbps」というポテンシャルに期待してフラグシップモデルを求めるお客さまが最も多いだろうと考え、その期待に応えられる製品から投入いたしました。
なお、同氏は「Wi-Fi 6E対応モデルには、6GHz帯が使えるメリットがある」ともし、今後もメインストリームモデルを中心にWi-Fi 6E対応モデルを継続展開する可能性を示唆した。
バッファローは、Wi-Fi 7対応端末は比較的早期にリリースされると予想しているという。そのメリットを生かすべく、WXR18000BE10Pは従来の同社製ルーターから変更された仕様がある。
従来の同社製ルーターでは、初期状態でアクセスポイント(SSID)を「2.4GHz帯用」「5GHz帯用」「6GHz帯用(Wi-Fi6E対応モデルのみ)」と、周波数帯別に用意していた。それに対して、WXR18000BE10Pでは初期設定で6GHz帯用SSIDを2.4GHz/5GHz/6GHzのいずれの帯域からもアクセスできるようにしたした(※2)。これは、Wi-Fi 7で新たに搭載される「MLO」を生かしやすくするための工夫だ。
(※2)設定を変更することで、従来通りの6GHz用SSIDも用意できます
このようにした狙いを、永谷卓也氏(コンシューマーマーケティング部 BBSマーケティング課)は以下のように語る。
当社がWi-Fi 7においてユーザーメリットが一番大きいと考えている機能がMLOです。これまでのWi-Fiでは1つの周波数帯でしか通信ができませんでしたが、MLO対応のWi-Fi 7機器では複数の周波数帯を同時に使って通信できるようになります。
MLO対応のアクセスポイントと端末を組み合わせると、5GHz帯と6GHz帯の通信を自動的に切り替える「切替モード」を利用できます。これは従来製品における「バンドステアリング」よりも周波数帯切り替え時の遅延を低減できます。
また、MLOには複数のチャンネルを束ねて1つのSSIDとして通信できる「同時モード」もあります。こちらはMLO対応端末で使えばスループット(実効通信速度)を向上できますし、このモードでメッシュネットワークを構築すれば、MLO非対応端末でも親子間通信のスループット向上による通信品質改善効果を得られます。
IEEE 802.11beにおいて対応必須なのは「4K-QAM対応」のみで、「320MHz通信対応」と「MLO対応」はオプション扱いとなる。バッファローが今回発売したWXR18000BE10Pはオプション機能にも対応しているため「“完全版”のWi-Fi 7ルーター」となる国内メーカー初のコンシューマー向けWi-Fi 7ルーターとなったWXR18000BE10Pの実売価格は、税込みで6万円台半ば程度だ。Wi-Fiルーターとしては若干高価ではあるが、機能面をよく考えるとメリットの多い製品なっている。
本製品の“深掘り”は、別の記事に譲りたい。
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