以上、ざっと使ってみたが、機能自体は極端に目新しいわけではなく、既存のサードパーティー製スキャナアプリの機能がiOSの標準機能として取り込まれたというだけだ。その一方で、書き出すフォーマットがPDFに限定されていたり、形状補正が台形だけだったりと、物足りなさを感じるところもある。
個人的に気になったのは、トリミングの機能がないことだ。書類の範囲選択は、自動的に行われるのはありがたいのだが、やや広めに行われる傾向があるようで、上下/左右に書類の境目が残ってしまうことが多い。もう少し内側でカットしたいと思っても、自動モードのまま「ほんのわずかに内側」と指定する機能はなく、キャプチャ後にトリミングする機能もない。どんな機能が欲しいかと言われたら、筆者は迷わずこれを挙げる。
こういったことから、これまで別のアプリを使って書類のスキャンを行っていた人にとっては、乗り換えるメリットはない……と言いたいのだが、何せOS標準で無料で使えるのは、サードパーティー製のスキャンアプリを有料で使っていた人にとっては大きなアドバンテージだ。まずは機能面で不足がないかチェックするところから始めてみてほしい。
なお、一般的なスキャナアプリと使い勝手は同じであることから、仕上がりの品質を上げるためのノウハウも共通だ。具体的には、書類の境目がはっきりと分かるよう、黒い台紙を敷くなどして、原稿と背景のコントラスト差をはっきりさせること、加えて書類が平らになるよう、上から押さえつける透明なアクリル板などの補助ツールを用意するといった類いのノウハウだ。
最後に、今回紹介した機能がiPad止まりなのか、それとも今後iPhoneにも適用されるかは気になるところだ。iPhoneはスクリーンサイズが小さいため、キャプチャした書類のプレビュー時に品質を確認しづらいデメリットはあるが、デバイス自体が軽量でハンドリングしやすいだけに、今回の機能がiPhoneに追加されれば便利なことは間違いない。
事実、iPhone 14 Pro以降のモデルはアダプティブTrue Toneフラッシュを既に搭載しており、ハード的な制約もないように思える。Appleならではの特徴を持った機能の進化にも期待したいところだが、それと並行してiPhoneへの採用も、ユーザーとしては楽しみにしておきたい。
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