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「AI PC」は普及する? 「日本市場だからこそ広がる余地がある」HPの幹部に聞く(2/3 ページ)

» 2024年08月15日 08時00分 公開

エントリーPCも「AI PC」になるのはいつ?

 PCがハードウェアにひも付く新機能を搭載したとして、それが全ラインアップとは言わずとも、広い範囲に適用されるまでには数年の歳月を要する。PCには一定の「買い換えサイクル」が存在するからだ。

 加えて、こうした特別な機能は、得てしてハイエンドの製品から投入される傾向が強く、ミドルレンジ〜ローエンド(エントリー)にまで広がるまでには一定の時間を要する。

 ただ、チャン氏は現状では“特別な機能”であるNPUは、比較的早期に浸透すると見ているという。

チャン氏 確かに、われわれが(Copilot+ PCを含むAI PCの)デモにおいて示しているユースケースの多くは企業の従業員とクリエイターの生産性向上に結びついていて、(対象としては)限られたものかもしれません。

 一方で、実際にAIが使われている場面を見ると、学生の間で最も浸透していることも分かっており、幅広いセグメントでの需要があることが見て取れます。

 AI PCはハイエンドなセグメントでスタートしていますが、業界では数年後にAI PCの普及率が56%がに達すると予想しています。当社も、今後の12カ月間でAI PCのラインアップをさらに拡大する予定です。そうすれば、2025年は2024年よりも確実にAI PCの価格は下がり、より多くのユーザーの手に届くものになると考えています。

HP AI HPでは、40TOPSを超えるAI処理パフォーマンスを備えるPCに「AI Helix」というブランドを付与し、製品にロゴを印字する取り組みをしている(参考記事

日本に最適化されたAIアプリはさらに増加する?

 とはいえ、AI PCの普及には懸念事項もある。

 例えば、オンデバイスAIにおいてPCに先行するしているスマホの世界では、プラットフォーマー各社のAI機能投入合戦が過熱している。スピードと“深化”に比重を置くがゆえに、機能面でもプラットフォーマーらの“母国語”である英語が優先され、サービス自体も米国限定となるケースが珍しくない。日本語を含む他言語は“後回し”または“機能限定”にされがちだ。

 AI PCの世界においても、このような「英語優先」「米国優先」という問題が発生する可能性も否定できないが、チャン氏は日本市場攻略の観点から次のように指摘する。

チャン氏 おっしゃる通り、多くのAI企業や大規模な基盤モデルの開発者は、シリコンバレーなど米国に拠点を置いており、当然ながら“自国市場”の母国語である英語を第一優先としています。しかし、Microsoftを筆頭に、既に多くのアプリがサポートしているAIベースの「ライブ翻訳」機能では、対応言語に日本語も含まれています。これは(英語を母国語とする)私たちにとってはそれほど意味のある機能ではないのかもしれませんが、日本市場にとっては大きな意味を持ちます

 同時に、米国と日本のテクノロジー企業がさらにAIをサポートし、さまざまなユーザー行動やUX(ユーザー体験)のデザインに至るまで、ターゲットをローカル市場に絞るようになることも期待されます。「LINE」のように、米国ではほとんど利用されていませんが、日本では非常に人気のサービスは「顧客にとっての価値は何か?」を考える上で、重要なものだと考えています。LINEヤフーのような日本のIT企業が、AIを完全に受け入れることにも期待しています。(生成AIは)まだ普及の初期段階であり、今後も進化が期待できるでしょう。

 日本の経済は巨大で、人口も世界の国々では多い方です。技術的な深みもあり、ビジネスに与える影響も大きいと考えます。ゆえに、日本向けに最適化された日本固有のAIサービスとソフトウェアが、間もなく利用可能になると確信しています。

 チャン氏はマクロな話題だけでなく、HP自身の日本市場に対する取り組みについても説明している。

チャン氏 私たちは、日本市場に適した製品への投資も継続していきます。直近では1000ドル未満のカテゴリーに属する「HP Pavilion Aeroシリーズ」の新製品をリリースしたばかりですが、こうした日本の顧客に“響く”デバイスへの投資は重要です。

 日本市場について、より語れる人物は他にもいるかと思いますが、私が実際に現場を見て気付いたのは、顧客が一貫して“非常にハイスペックな”消費者向けデバイスを買っている点です。その一方で、最新のテクノロジーのサポートと共に下位互換性を含む“全て”を求めていること、具体的にはアナログRGB(D-Sub)出力端子の実装や、ノートPCへの光学ドライブ搭載を求めている点は驚きでした。これは、他の市場では見られない傾向です。例えるなら、高齢者の方が年に1回などのあいさつ状を印刷するために必要な素材やデバイスを求めているのです。

 1000ドル以下のPCを求める需要から“全て”を載せたPCを求める需要まで、(日本市場には)非常に洗練されて幅広いニーズがあるといえます。

HP Pavilion Aeroシリーズ HP Pavilion Aeroの最新モデル(HP Pavilion Aero 13-be)は、最軽量構成で約957gという重量ながらも、直販価格で10万9800円から購入可能な比較的手頃なモバイルノートPCだ(2024年8月14日現在)

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