対応アプリやサービスの増加によって、今後もAI PCに対する需要は増加する――少なくともメーカーの視点では「AI推しの施策は思ったほど受け入れられないのでは?」という懸念を抱いていないことは分かった。
チャン氏は「PCは人間にとって最高の生産性と創造ツールの1つであり、その体験はAIによってさらに向上する。私の記憶では、過去10〜20年ほどの間にISV(独立ソフトウェアベンダー)がこれほど盛り上がっている様子は見たことがない」と語る。AIが盛り上がりを見せるタイミングで積極的にハードウェアとソフトウェアまで幅広い分野に投資を行うことで、AIトレンドを一層盛り上げていこうという意思が感じられる。
もう1つ、筆者が抱いていた懸念がある。現状で「AI PC」をうたうためにはCPU/SoCの選択肢が限定的であり、各社が性能面でPCの差別化を行いにくくなっているという点だ。Copilot+ PCの要件を満たすとなると、選択肢はさらに絞られてしまう。
しかし、チャン氏はこのような見方に否定的だ。
例えばSnapdragon X Eliteを採用したノートPCの場合、他メーカーでは16時間程度のバッテリー駆動時間しか提供していないのに対し、HPでは26時間以上の駆動時間を確保しています。このように、ハードウェアだけでも多くのことをエンジニアリングで差別化できると思います。
加えて、私たちは「AIコンパニオン」のようなものにも投資を行っていきます。当社が開発するソフトウェアレイヤーは、顧客にとって価値とメリットを多く含みます。差別化ありきの機能追加ではなく、顧客が実際に見て感じて体験できる価値を実際に組み込むことで、私たちのビジネスチャンスにもなると考えています。
同じPCでも、エンジニアリングや各分野における投資の差異が大きな差別化ポイントとなるという。
CPU/SoCの選択肢という観点では、Snapdragon X Elite/Plusに加えて、OmniBook Ultra 14が採用したRyzen AI 300シリーズが登場した。そして9月にはIntelが「Lunar Lake」(開発コード名)が発表される見通しで、同じタイミングで各社からも搭載PCが続々と発表されることになるだろう。Snapdragon Xシリーズについては、10月にも新製品の発表を控えているとされる。AI PCで利用できるチップは、水平展開が拡大している。
この流れに乗る形で、今後はAIソフトウェアの開発もさらに活発になると見られる。この新しい技術によって、PC市場はしばらく盛り上がることになりそうだ。
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