先のグラフでも触れた通り、本機はもともとの性能が優れているので、パフォーマンス設定を下げたりバッテリー動作をしていたりしても十分に速いです。それに、GeForce GTX 1650に匹敵するといわれていた前世代のCPU内蔵GPUから、さらに改善したRadeon 890Mが搭載されています。
そこで生きるのが、省電力モバイルノートPCとしての使い道です。設定アプリでGeForceをオフにしたり、ウィスパーモードに設定したりはすぐにでき、普通のモバイルPCのような使い方ができます。
この設定で充電器を取り外してWebブラウジングを試したところ、バッテリーは約9時間でゼロになるペースで減っていきました。この設定ならば、コンパクトな充電器でも十分運用できるでしょう。
個人的には、これが本機の真骨頂だと思います。デスクトップPCの置き換えにもなり、ハイパフォーマンスPCにもなり、モバイルPCにもなるわけです。
自分みたいなPCオタクなら、まあ、目的ごとにPCを複数台持つハメになったとしても「置き場所もお金もなくなっちゃったね、楽しいね」で済んでいきます。ですが、クリエイティブ用途にPCが必要な人が、皆PC好きというわけではありません。デスクトップPCの煩雑さや複数台持ちの負担は避けられるなら避けたいというのが本音でしょうし、それがかなう可能性を本機は秘めています。
ところで、本機が採用するRyzen AI 9 HX 370について、ももう少し触れておきましょう。基本的には従来通りのノートPC用Ryzenですが、従来の上位モデルと比較して大きく進化しています。
といったところです。CPUも内蔵GPUもしっかり進化していますが、NPUの仕様値がざっくり3倍になっているのが目立ちますね。ところで、イマドキのモバイルプロセッサにはいろいろなものが入っていて、 幕の内弁当に例えることができます。下は「いらすとや」にある、8コアのCPUと5グラフィクスコアのGPUが載ったモバイルプロセッサのイラストです。
弁当箱の容積の中で、バランス感や工夫をこらして食材を割り振っていくわけですね。そして下が、AMD製の幕の内弁当です
左下のNPUが、かなりの面積を取っていることが分かります。モバイルプロセッサは、あるコストで作れる面積の割り振りの中で機能や性能が決まっていきます。例えば、仮にNPUを搭載しない決断をすれば、CPUをあと何コアか増やしたり、GPUの演算ユニットを数十%増やしたりといった面積の余裕ができます。そういうせめぎ合いの中で、大きなNPUを採用しているわけです。
そして、良いトンカツを入れた幕の内弁当には「トンカツ幕の内弁当」と名付けたくなるように、RyzenにもNPUをたっぷり詰め込んだので「AI」を付けたくなったのかもしれません。その真偽はともかくとしてモデル名はこうなったわけですが、その結果、単にとっ散らかった印象になってしまったたけでなく、
実際の製品はこんなにシッカリしているのに、なんでこう……ネーミングセンスというか……行き当たりばったり感というか――。最近は特に“忙しい分野”だしというのは分かるのですが、もうちょっと落ち着いてほしいと思ってしまいますね(個人的には「Ryzen 9 390HX」とかにして、堂々としていればいいのにと思います)。
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