AMDは9月7日(米国太平洋夏時間)、2023年以降に出荷を開始するモバイル向けプロセッサ(CPU/APU)において、モデル名の付与ルール変更を発表した。現行のルールにおけるモデル名の数値が“限界”に近づいていることと、異なるアーキテクチャに基づくプロセッサの新製品が今後順次リリースされることを受けて、新しいプロセッサの性能や位置付けをより分かりやすくするため制定したのだという。
まず、プロセッサのブランドは従来通り「Athlon(アスロン)」と「Ryzen(ライゼン)」の2つを使い分ける。その上で、サブブランドとしてAthlonは「Silver」「Gold」、Ryzenは「3」「5」「7」「9」をプラスするのも従来通りだ。
告知では特に触れられていないが、企業向けの管理/セキュリティ機能を強化したプロセッサには「PRO」が付与されるのも今まで通りだと思われる。
その上で、大きく変わるのはブランド名に続く「4桁の数字」と「アルファベット」の意味合いだ。2023年以降に出荷を開始する新プロセッサでは、以下のルールに基づいて数字とアルファベットが付与される
- 千の位:モデルのポートフォリオ年次(出荷開始を予定する年)
- 7なら「2023年」、8なら「2024年」、9なら「2025年」
- 百の位:マーケットセグメント(ターゲットとなるPCの種別)
- 1は「Athlon Silver」、2なら「Athlon Gold」
- 3か4なら「Ryzen 3」、5か6なら「Ryzen 5」
- 7か8なら「Ryzen 7」、8か9なら「Ryzen 9」(8は重複あり)
- 十の位:プロセッサ(CPUコア)のアーキテクチャ
- 1は「Zenアーキテクチャ」または「Zen+アーキテクチャ」
- 2は「Zen 2アーキテクチャ」
- 3は「Zen 3アーキテクチャ」または「Zen 3+アーキテクチャ」
- 4は「Zen 4アーキテクチャ」
- 5は「Zen 5アーキテクチャ」
- 一の位:機能面における差分の区別
- 0は「下位モデル」、5は「上位モデル」
- 十の位で区別しきれない差分が生じる場合に想定
- 区別する必要のない場合は「0」になる
- アルファベット:フォームファクタやTDP(熱設計電力)
- e(小文字)はファンレス設計用(TDPは9W、Uプロセッサの派生)
- CはChromebook向け(TDPは15〜28W)
- Uはプレミアム薄型モデル向け(TDPは15〜28W)
- HSは薄型ゲーミングモデルやクリエイター向け(TDPは最大35W超)
- HXは最大パフォーマンス重視(TDPは55W超)
新ルールに基づく数字とアルファベットの付与方法
この新ルールに基づいて、2023年は5つの「Ryzen 7000シリーズ」が登場する。
- 7020シリーズ:開発コード名「Mendocino」
- 日常利用向けで、Athlon、Ryzen 3、Ryzen 5を展開
- Zen 2アーキテクチャベース
- 7030シリーズ:開発コード名「Barcelo-R」
- メインストリームの薄型軽量ノートPC向け
- Ryzen 3、Ryzen 5、Ryzen 7を展開
- 2022年に出荷されたRyzen 5000シリーズのリフレッシュ版
- 7035シリーズ:開発コード名「Rembrandt-R」
- プレミアム薄型軽量ノートPC向け
- Ryzen 3、Ryzen 5、Ryzen 7、Ryzen 9を展開
- 2022年に出荷されたRyzen 6000シリーズのリフレッシュ版
- 7040シリーズ:開発コード名「Phoenix」
- 最上位の薄型軽量ノートPC向け
- Ryzen 3、Ryzen 5、Ryzen 7、Ryzen 9を展開
- Zen 4アーキテクチャベース
- 7045シリーズ:開発コード名「Dragon Range」
- 最上位のゲーミング/クリエイターノートPC向け
- Ryzen 5、Ryzen 7、Ryzen 9を展開
- Zen 4アーキテクチャベース
2023年に出荷を開始する予定のモバイル向けプロセッサのシリーズ分け
AMDによると、この新ルールは今後5年間利用する想定テストを実施済みだという。現時点は2025年の利用までを見越しているが、最長でも2027年まで破綻することなく利用できるようだ。告知では新ルールに関するフィードバックも募集しており、反響によってはさらなる変更が加わる可能性もある。
なお、今回のルール変更はあくまでもモバイル向けプロセッサにのみ適用されるもので、デスクトップPC向けプロセッサのモデル名付与は従来通りのルールで行われる。
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