「iPhone 16」がiPhone新時代の幕を開く 試して分かった大きな違い(3/4 ページ)

» 2024年09月18日 23時00分 公開
[林信行ITmedia]

最適解の写真はAppleではなくユーザーが作る

 カメラコントロールでピント合わせができないのは残念だが、Appleが対応しなくても、今後、他社のアプリを使ってカメラコントロールでのピント調整が可能になるかもしれない。Appleは、このカメラコントロールの利用を同社の標準アプリだけに限定せず、必要ならカメラコントロールを押した時に、標準カメラではなくいきなり他社製アプリが立ち上がるようにも設定できる。

 他社に課せられたルールは、「カメラ以外の用途には使わないこと」というただ1つだけだが、1つの操作系にいくつもの意味を持たせるのはユーザーに混乱を招き、使われなくしてしまう最大の要因なので、これは良いルールだと思う。

 最近、iPhoneではライカ製のカメラアプリなども出て人気を博しているが、今後、カメラコントロールで起動するアプリによって、同じiPhoneで撮った写真でも撮る人によって個性が分かれてくるといったことが増えるのかもしれない。

 いや、それどころか標準のカメラアプリでも、今後は写真の出来栄えがユーザーごとに変わってきそうだ。

iPhone 16シリーズからは、フォトグラフスタイルがさらに進化した。あらかじめ用意されたプリセットから選ぶだけでなく、その上でトーンとカラーを調整して自分好みのテイストを作り込むことができるようになった。グリッドからの選択だけでなく、カメラコントロールからも調整可能だ

 iPhone 13から、ユーザーが撮影写真を自分らしい個性で味付けするフォトグラフスタイルという機能が提供されたが、iPhone 16からはこの機能が大きく進化した。

 Appleのエンジニア達が突き詰めて研究した結果、撮影写真の個性で大事なのは色のトーンと色合いだということが分かった。そこでiPhone 16シリーズでは、縦軸がトーン、横軸がカラーのグリッド上の点をドラッグして、よりきめ細やかに自分のスタイルを作り込むことができるようになった(カメラコントロールで、トーンとカラーを単体で調整することも可能だ)。

 これまでデジタルカメラ写真の仕上がりはメーカーごとの味があり、例えばやや緑黄色がかった写真が撮れるスマートフォンや色の強調が強めなモデルとか、端末メーカーそれぞれが出した写真の仕上がりの最適解があって、ユーザーはそれを受け入れるしかなかった。

 これに対して、これまでずっとニュートラルな色作りに徹してきたAppleが、ここへきてベースがニュートラルだからこそできる、ユーザーごとの味付けを支援する方向に舵を切ったのは面白い。メーカーが写真の見栄えの最適解を決める他のスマートフォンに対して、iPhoneはユーザーが最適解を決める仕様に進化した、といってもいいかもしれない。

 レンズそのものも進化している。標準モデルレンズは標準モデルもProモデルも48MP Fusionカメラだ。約4800万画素であること、一部切り出しで約1200万画素の2倍光学ズームレンズで撮れることなどは従来通りだが、センサーのデータ読み出し速度が倍に高速化されたため、約4800万画素の写真の撮影も一瞬で終わり次の撮影までのラグがない。

 今回、大きく変わったのは超広角レンズだ。iPhone 16と16 Plusは超広角レンズがマクロ撮影に対応した。

 一方、Proモデルの超広角レンズはこれまでの約1200万画素から約4800万画素に解像度が向上し、マクロ撮影などもより鮮明に撮れるようになった。

 Proモデルだけが備えていた望遠レンズは、前世代ではProモデルが3倍、Pro Maxのみ5倍ズーム(35mm換算で120mm相当)だったが、今回から本体サイズが小さいiPhone 16 Proも5倍ズームレンズを搭載するようになった。

空間オーディオでビデオ撮影し後から自動でミキシング

 ビデオ撮影に関しても大きな進化がある。4K画質で毎秒120フレームの撮影が可能になったことも大きい。しかも、コントラスト比が高い映像を忠実に再現できるDolby Visionでの撮影が可能だ。

 だが、個人的にそれと負けないくらい大きな変更点として、音を立体的に再現できる空間オーディオで記録できるようになったことを挙げたい。マイクが4基あるProシリーズの方が、より立体的に録れるが、標準のiPhone 16でも空間オーディオでのビデオ撮影が可能だ。

 撮影した動画は空間オーディオのデータと、ステレオの両方の音声トラックが含まれているようで、書き出す時には互換性重視でステレオ音声のみが書き出されるため、今のところ撮ったビデオを空間オーディオで楽しむにはiPhoneで再生する以外の手段がないが、間もなく「Final Cut Pro」や「iMovie」といったアプリが空間オーディオの編集に対応するかもしれない。

iPhone 16 Pro/16 Pro Maxでは、4K/120fpsでDolby Visionの撮影が可能になった他、スローモーション撮影もできる

 あまり話題になってないが、筆者はただ空間オーディオでビデオが撮れるというだけでも、かなりすごいことだと思う。しかし、Appleはそこにとどまらず、新たに空間オーディオ録音のメリットを感じやすい「オーディオミックス」という機能も用意した。

 これは映像を撮影後に音をリミックスする機能で、例えばガヤガヤしているところで2人の人物が話しているところを撮影しておいて、後から映像に写っている2人の会話だけを強調したり、背景での話し声も聞こえるようにしたりとサウンドを調整できる。

 こんなすごい編集が、OS標準の写真アプリでできてしまう。これからはソーシャルメディアにアップされるビデオの音質もかなり向上しそうだ。

iPhone 16で撮影したコンサート中のトークを、オーディオミックス機能の設定を変えて聞き比べてみた。これはマイクを2基備えたiPhone 16も、ビデオの音を空間オーディオで録音しているからできるものだ。例えばフレームという設定では周囲の音を抑えて、カメラの正面、画面に映っている被写体からの音だけを強調する【協力:Asile アジール Kanazawa Jazz Music live house & Bar/出演:ミヤタコーヘイ&バター(小畑和彰)】

 残念ながら、録音アプリのボイスメモは空間オーディオではないものの、ステレオ録音に対応する。さらに重ね合わせ録音(2トラックの多重録音)もできるはずなのだが、今後のOSアップデートで提供予定なのか今回は発見できなかった。

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