このように、バッテリー交換できるノートPCの流れは着実に来ているのだが、こうした動きは日本メーカーにとどまらない。PCの世界市場でトップを走るLenovoも、バッテリーをユーザーが交換できる仕組みを整え始めている。
同社は以前から、PCのメンテナンス用マニュアルを積極的に公開するなど、ユーザー自身によるメンテナンスに寛容だ。特に法人向けPCの場合、企業のいわゆる情シスが部品交換を行うようなケースも想定している。
その際に「この部品はユーザー企業が交換してよい」「この部品はメーカー(Lenovo)のエンジニアが行う」と、それぞれ部品ごとに定めており、前者は「CRU(Customer Replaceable Unit)」、後者は「FRU(Field Replaceable Unit)」と呼んで区別している。
ThinkPadの場合、SSDなどはCRUとされており、メーカーから送られてきた交換用のSSDを情シスが交換して修理することが許可されている(=保証が継続する)。
PCの仕組みを理解している情シスにとっては、わざわざメーカーに製品を送らなくても自分の手で素早く修理して社内のダウンタイムをなくしたいと考えるはずだ。CRUはそうしたニーズに応えられるものだ。
それに対して、FRUはメーカーのエンジニアでなければ交換できないと定義された部品として、ThinkPadならディスプレイパネルや無線のアンテナ、そして内蔵バッテリーがそれに該当する。
しかし、2024年2月に発表されたThinkPad TシリーズおよびLシリーズの一部モデルでは、バッテリーがCRUに変更された。
ThinkPadを含むLenovoの法人向け製品の開発責任者である塚本泰通氏(レノボ・ジャパン 執行役員 副社長 開発担当 CPSD 大和研究所)は「バッテリーをCRUにする取り組みは、EUの規制が発表される前から取り組んできました。PCエコシステム全体を持続可能にするという観点で考えれば、『何かを変えれば使い続けられる』──これは実現した方がいいと考えています」と話し、PC産業の持続可能性を考えて、そうした取り組みを加速していきたいという意向を明らかにしている。
塚本氏によれば、バッテリーのCRU化に向け、ユーザーが交換する際に事故が起きないようにバッテリーパックの外装を従来の黒から茶色に変えるといった工夫もしているという。これは黒いネジをバッテリーパックの上に置いたままカバーを無理やり閉めて傷つけるといったケースの事故を防止するためだ。
もちろん、エンドユーザーがバッテリーのセルを扱うことを前提にして、バッテリーに強固なカバーを装着するとった新たな工夫も重要だと塚本氏は指摘した。
もっとも、今回の件は全てのThinkPadのバッテリーがCRUになったというのではなく、まずはTシリーズやLシリーズなどのメインストリーム向け製品で始まったものだ。
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