次に触れておきたいのが、MacBook ProとMac miniの冷却性能の違いだ。もっと具体的にいえば、CPUやGPUに対する負荷を長時間かけた場合のシステムの振る舞いの差である。
とても小さくなったとはいえ、新しいMac miniには比較的直径の大きな冷却ファンが装着されている。どうしても冷却ファンを薄型/小型にしないといけないMacBook Proの方が放熱面では不利……と思いきや、MacBook Proは、Mac miniよりも高性能な(≒発熱が大きくなりうる)「M4 Maxチップ」を選択できる。もしかすると、熱設計面ではMacBook Proの方が上限値を高く設定されているのかもしれない。
先に紹介したベンチマークテストでも触れた通り、M4 Proチップ構成同士で比べてみると、14インチMacBook ProとMac miniでは大きなパフォーマンスの差は見受けられない。強いて違いを挙げるとすると、冷却ファンのノイズの出方が違う程度だ。もっとも、冷却ファンがけたたましい音を立てて回るのは、マルチスレッド処理でCPUに高負荷をかけ続けた時のみと考えていい。
GPUコアに対して負荷をかけた場合も、それなりの発熱が生じる。しかし、「CINEBENCH 2024」でGPU負荷が100%となる状況を10分、30分となるようにテストを回してみたのだが、サーマルスロットリング(過剰発熱を避けるための性能抑制)は見られない。本体はほんのり暖かい程度だ。GPUに関しては、サーマルスロットリングを気にする必要はないだろう。動画のレンダリングなどを含むGPU依存が高い処理では、安定して長時間のパフォーマンスを期待できる。
なお、より発熱が増えるであろう「M4 Maxチップ」を搭載するMacBook Proでは、状況に応じた電力制御が加わると予想される。
一方で、CPUコアに高い負荷を与える場合は、SoC全体により大きな発熱が生まれ、サーマルスロットリングが入る確率が高くなる。すなわち、M4 ProチップではCPU負荷が高いシチュエーションの方を気にしないといけないだろう。
新しいMac miniとMacBook Proは共に、エネルギー/バッテリー設定で「低電力モード」に加えて「高出力モード」なるものが用意されている。デフォルトでは「自動」に設定されているが、ユーザーがどちらかを能動的に選ぶことも可能だ(MacBook Proは「電源アダプタ使用時」と「バッテリー使用時」で個別に設定できる)。
通常は「自動」にしていても、十分に消費電力は低く、バッテリーの駆動時間も長い。そのため、低電力モードを使うシチュエーションはあまり思いつかない。一方、高出力モードはCPU依存の大きいアプリではパフォーマンスの改善につながるかもしれない。
“かもしれない”というのは、CINEBENCH 2024でマルチコアのCPUレンダリングのテストを行うといった、全てのCPUコアが完全に回り切る状況でしか違いを計測できなかったからだ。M4 Proチップにおける冷温時の1ループ目のスコアは「1654ポイント」だったが、自動モードではこのテストを行うと数分動かすだけでサーマルスロットリングが作動し「1583ポイント」に低下してしまう。
とはいえ、スコアから見える性能低下率は4〜5%程度で、ほとんど変わらないといっても差し支えはないだろう。
これを高出力モードに切り替えると、どうなるだろうか。CINEBENCH 2024のテスト中、冷却ファンはフルに回転するようになり、かなりけたたましい音を立てるようになる。「お、これは高いポイントが出るか?」と思いきや、結果は「1643ポイント」と自動モードとの大きな違いはない。ピーク性能を長く引き出す必要に迫られない限りは、自動モードで問題ないだろう。
少し見方を変えると、高出力モードはM4 Maxチップ搭載モデルのために用意されたと考えるのが妥当だ。動作の様子を見る限り、Mac miniにもM4 Maxチップを搭載できる余力がありそうなのだが、なぜ用意されなかったのだろうか……?
Mac miniとMacBook Airの一部モデルでは、エネルギーモードに「高出力」が用意されている。CPUのピーク性能を長時間維持したい場合は「高出力」にしておくとよいが、ファンがうるさくなるので普段は「自動」で運用した方がいいだろう
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