アルトマンCEOと学生との質疑応答では「ブレインマシンインターフェイス(BMI/BCI)」への言及もあった。
アルトマンCEOは「ブレインマシンインターフェイスを含む『脳とコンピュータとの直接的なインタラクション』は、今後大きな可能性がある」と語る。このテーマはOpenAIの直接的な研究テーマではないが、恐らくこうした脳との接続に関する技術は、今後さまざまなアプローチが出てくるのだろう。
同CEOは「今はまだ試行錯誤の段階だ」と釘を刺しつつも、「将来的に脳波や脳活動のデータを詳細に入出力することを実現すれば、人間がより自然にAIと連携できるようになる」と期待を寄せた。
これまでのBMI/BCIのアプローチは、脳に直接電極を埋め込むといった侵襲的な手法が主流だった。そうなると、倫理面や安全面での懸念がどうしても拭えない。しかし、アルトマンCEOは、軽量なウェアラブル型インタフェースなど身体的リスクを抑えたアプローチが有望になりつつあるとの見方を示す。
今後、AIの性能が向上すればするほどに、インタフェースとしてのBMI/BCIの重要性も増す。言い換えれば、AIの進化は研究開発を促すわけで、OpenAIの研究が進むことで「今後もっと多くの面白い会社や研究者が出てきて、この領域が一気に実現に向けて動き始める」とアルトマンCEOは予想する。具体的な企業名は出さなかったものの、「この半年ほどで、興味深いBMI関連の新興企業をいくつか見てきた」とも語り、実用化が進む手応えを感じているようだ。
ちなみに、どのような製品になるかは不明だが、OpenAIも独自のハードウェアを発売する予定があることは認めている。「次の来日の時に製品をローンチするかもね」とのことなので、そう遠い日のことではなさそうだ。
この日、アルトマンCEOがよく使ったフレーズが 「Intelligence too cheap to meter」だ。これは商用電力の発明/普及の黎明(れいめい)期にうたわれた「Electricity too cheap to meter(電力をメーターで測る必要がないほど安価に)」を引用した例えで、知能を誰でも使えるほど安価に提供することの必要性を説いている。
OpenAIはGPT-3、GPT-4といったLLMをさらに拡張しつつ、推論リクエスト当たりの計算コストを削減すべく開発を進めてきた。推論アルゴリズムを洗練させることでコストは大きく下がっており、今後も継続的にモデルの高速化と効率化を進めていくという。
またアルトマンCEOは全ての人がアクセスできる“知能のプラットフォーム”の構築も進めると語る。単なる言語処理だけでなく、計算/推論/問題解決など、あらゆる知的タスクを担うプラットフォームを整備し、それを広範に提供するという構想だ。サーバリソースやAPIキーなどの制限を極力下げて、世界中の個人/企業/学生が使える環境を作ることが目標だという。
一方で、同社はさらに大規模なLLMの開発(GPT-5/GPT-6 など)も進めている。アルトマンCEOはGPT-4の推論能力を上回るモデルを動かすことを視野に入れつつ、最終的なユーザーへの利用コストを低減させるべく、計画的に歩んでいることを強調していた。
使いこなしという別の視点での(結論を得るための)コストに関しては、エージェント機能の整備やマルチモーダル対応が鍵となる。音声や画像、外部APIといった複数のモードを統合し、必要に応じてシームレスに連携、使い分ける一体的なモデルを作り、全世界における各国語で利用可能にするという。
その課程では電力のコストがハードルとなりうるが、アルトマンCEOは「核融合発電」の有望性に言及し、この発電方法がAIの発展への貢献つながると期待している様子が伺えた。
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