ロレスCEOも示唆していたように、AIの世界は変化が早い。ビデオ対談にゲストとして登場したServiceNowのビル・マクダーモットCEOも、その急速な変化について強調している。
ServiceNowは、SaaSベースで企業のビジネスワークフローの簡素化/自動化を実現するサービスを提供する企業だ。近年では特にAIを活用することで企業のビジネス支援を加速しており、近年の企業AIの変化を“最前線”で見つめてきた会社の1つでもある。
マクダーモットCEOは2014年、ERPの世界企業として知られるドイツのSAPのCEOに米国人として初めて就任した人物だ。2019年にServiceNowのCEO就任に伴い同社を離れるまでの期間を合わせ、企業のビジネスをITの視点で支えてきた実績もある。そんな同CEOは、このように語る。
私はキャリアの中でインターネット時代を経験し、その後ビジネスはクラウドへと移行している。2007年に「iPhone」(日本未発売)が登場したことをきっかけに、モバイルビジネスが主流になったが、今は「エージェントAI(Agentic AI)」の時代だ。これの素晴らしいところは、私たちがこれまで見てきた中で唯一といえる、20兆ドル規模の市場が2030年に出現することが見えていることで、AIが世界のビジネス経済に影響を及ぼす点にある。
AIに1ドルを投資すると、5ドルのリターンが見込まれる。全ての企業が自らを改革し、ビジネスを変革する点で、これまでにない興奮を抱いている。
実際、以前なら準備に3年を要していた戦略が、今では3カ月で実行されるようになっていることもあり、私たち自身が非常に素早く行動しなければならなくなっている。
AIを企業に浸透させるには、経営陣と従業員も危機感を共有することが大切だと、マクダーモットCEOは語る。
AIの世界において重要なのは、こうした危機感を経営陣が持つだけでなく、個々の従業員も共感(共有)することにある。テクノロジーは、役に立ってこそ投資する価値がある。ServiceNowを例に挙げれば、1カ所であらゆる質問の回答を得られるユーザー体験のみならず、全ての機能に対して“文字通りの”仕事をこなすことが可能になる。
ServiceNowは各機能にAIエージェントを提供しつつ、他の全てのエージェントとの統合も実現する。なぜなら、企業のシステムは「サイロ化」されており、これらを協調させる必要があるからだ。
例えば、世界的な電力管理会社であるEatonでは、ServiceNowのAIエージェントで10万人近い従業員をカバーしており、これまで人力で処理されてきたケースの最大2倍の処理を可能にしている。
マクダーモットCEOは、AIを使うことによって人々の生活を再びシンプルにすることが大切とも指摘する。
もう1つ重要なのは、人々の生活を再びシンプルにする必要があると認識することだ。かつてレオナルド・ダ・ヴィンチは「洗練の究極の形は、シンプルさそのものである」と述べている。
従業員が気軽にシステムに質問してインテリジェントで適切な回答を得られる――企業システムはこれくらいシンプルであるべきで、これを実現することが真の“ルネサンス”につながると考える。「AIで仕事を失う」という漠然とした不安を抱く人もいるが、それは単に慣れていないからだといえる。
ここで私が思い出すのは、1966年のTime誌の記事だ。そこでは「当時の仕事の90%は将来的になくなり、残る10%の管理職のみが生き残る」と書かれていたが、私たちはそれが真実でなかったことを知っている。AIとそれがもたらす創造性を活用することで、企業のビジネスモデルを変革できると考えている。
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