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日々の生活や業務から学習まで――最先端の半導体メーカーのキーパーソンはどうAIを活用する?HP Amplify Conference 2025(1/2 ページ)

» 2025年04月02日 15時00分 公開

 2024年から「AI PC」という言葉を聞く機会が増えた。「ただのPCメーカー側のマーケティング用語ではないのか?」と指摘されると、確かにそうした側面は多分にある。

 しかし、一方でAI PCと呼ばれる世代以降のPCと、それより前のPCではターゲットとする市場が少し異なる面がある。AI PCは今後登場してくるであろう新しいアプリや、ユーザーによる新しい使い方に応えられるだけの性能を織り込んでいる。ある意味で、5年以上先を見据えた“未来志向”の製品だともいえる。

 PC業界における2025年は、10月14日(米国太平洋時間)にWindows 10のサポート終了(EOS:End of Service)が控えている。Windows 11のハードウェア要件から古い世代のPCが“引退”を余儀なくされる中、PCメーカー各社は2025年に入ってからメインストリームに当たるミドルレンジ以下のPCにもAI PCを拡大しつつある

 AI PCを選ぶ決め手となる「キラーアプリ」がまだ存在せず、さらなるAIの活用に向けた試みが進んでいる中、いかにユーザーに対してAI PCのメリットをアピールするのか――米HPが3月18日から19日(米国中部時間)にかけて開催した「HP Amplify Conference 2025」では、同社に半導体チップを供給するパートナー4社のトップによる社内でのAI活用方法や将来の展望が語られていたので紹介したい。

エンリケ・ロレス氏 HPのエンリケ・ロレスCEO

最先端半導体メーカーがAIでやっていること

 「皆さんも同じようなことをしていると思いますが、人事から営業、マーケティング、法務部門など、非常に基本的な従業員の業務での活用のみならず、AI技術でより優れたチップを開発する高度な業務まで、さまざまな分野で活用しています」というのは米AMDのリサ・スーCEOだ。

 同氏は「AI導入は企業全体で見てもまだ初期段階だ」と認めているものの、この最新技術を活用することでビジネスや従業員の生産性をどう高められるのか、生成AIの活用により1日に何時間を節約できるのかを考えつつ、仕事の未来のために企業のあらゆる業務にAIを取り入れていくべきだという考えだ。

 具体的な活用について見えていない部分こそあるものの、将来的に全てのPCにAIを動作するためのNPUのようなコンポーネントが導入されるのは間違いない。スーCEOは「半導体メーカーとしては、HPのようなPCメーカーと協力しつつ、実際に顧客がこれを受け入れやすくなるように業界として推進していくのが役割だ」と話す。

 先述の通り、2025年は「Windows 10のEOS」が見えている。スーCEOは「人々が次に使うべきPCの選定に入るであろうタイミングで、適切な商品やアドバイスを行う優れたパートナーが求められている」とも語る。

リサ・スーCEO 今回、リサ・スーCEOはスケジュールの都合で会場参加がかなわなかったため、事前収録されたロレスCEOとの対談が再生された

 AIの積極活用については、米Intelのミシェル・ジョンストン・ホルトハウス製品担当CEOも同社の事例を紹介している。

 AMDのスーCEOは「過去1年間に何百ものパイロットプログラムを動かしてAIの実務検証を行っている」と述べていたが、ホルトハウス氏も同様に「大量のパイロットプログラムを工場全体で走らせている」と強調する。主にソフトウェア開発部門でプログラムコードの精度向上や動作速度の改善に活用されているようだが、「テクノロジー企業であるならば“先駆者(First Mover)”であれ」というのが同氏の考えだ。

 AIを見て「怖い」「導入方法が分からない」ということで様子を見るのも自由だし、私たちのように先駆者を目指すのもいい。先駆者になることにはメリットとデメリットの両方があり、何かを間違えたときにはそれを学ぶ必要が出てくる。一方で、テクノロジーの最先端に位置し、競争相手に勝ちたいのであれば、テクノロジーを積極的に受け入れるべきだ。

ミシェル・ジョンストン・ホルトハウス氏 Intelのミシェル・ジョンストン・ホルトハウス製品担当CEO。実は同氏がイベントに登壇する数時間前に、同社から新CEOとしてリップブー・タン氏が就任する旨の発表が行われており、本来はIntelの暫定共同CEOとしてステージに登場する予定だった

 AI半導体メーカーとしての評価が定着した米NVIDIAも、ソフトウェア開発にAIを積極活用している点で同様だ。同社のジェンスン・ファンCEOは「NV Bugs」と呼ばれるバグデータベースの存在を紹介している。

 同社では、チップデザイナーやシステムエンジニア、ソフトウェアエンジニア、アーキテクトといった開発メンバー全員が動作する機能やそうでないものについて、必要な情報を全て共有している。ただ、その“バグ”の解析は非常に難解だ。特にチップとシステム内の別のチップと相互作用する部分など、互いの影響範囲の検討は難しい。

 NVI Bugsは、関連する人物やその内容/原因/影響範囲などを集約し、当該のバグの解析に役立つAIだという。単純なデータベースの上にAIという“セマンティックな”レイヤーを設け、理解するのに役立つエージェントとしての役割を担うという。

 この他、ファンCEOはサプライチェーンの立案にAIを活用する事例を紹介しており「困難な問題解決にAI活用を進めている」とのことだ。

 またファンCEOは、個人的に活用しているというのが家庭教師(チューター)とAIアシスタントとしての役割だ。

 私個人としてAIを毎日使用しており、家庭教師として学びたいことにAIを活用している。もう1つのお気に入りが、研究アシスタントとしての活用で、将来的に私たち全員がこのような形でAIの支援を受けるようになると考えている。それは私のような研究アシスタントとしての活用かもしれないし、人によってはプログラミング、あるいは自身の業務アシスタントかもしれない。

ジェンスン・ファンCEO NVIDIAのジェンスン・ファンCEOは、同日にサンフランシスコで行われていた「GDC(Game Developers Conference)」に参加する都合で現地からの生中継で参加した

 自身をトレーニングするための家庭教師としてAIを積極活用するという事例は、AMDのスーCEOも触れていたが、便利な先端テクノロジーに躊躇(ちゅうちょ)がないというのは、固定概念がない層ほど該当するのかもしれない。

 IT企業トップの話からは少し離れるが、今回のカンファレンスでHPのサミュエル・チャン氏(シニアバイスプレジデント兼コンシューマPCソリューション担当部門プレジデント)にインタビューした際に、チャン氏が「最初期のChatGPTユーザー」だとして紹介していたのが“高校生”だった。いわく「高校生はサービス開始から1週間以内に一斉に使い始め、半年後には米国の高校生におけるChatGPT普及率がほぼ70%に達していた」という。当時は「エンタープライズ(企業)における普及率が10%未満だった」にも関わらずだ。

 インタビューの場にいた他のメンバーが大学の事例を挙げて「学生はみんなChatGPTで回答を求めてこようとするので、教授がそれ(ChatGPT)で解決できない問題を出題する“知恵比べ”が起きている」とも述べた。非常に興味深い。

チャン氏 インタビューに応じるHPのサミュエル・チャン氏。コンシューマ市場でのAI PC活用について語った
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