生成AI、とりわけ画像生成AIの急速な進化は、クリエイティブ制作に携わる人たちに大きな影響を与えていることはいうまでもない。毎日ネットを見る中で、AIが生成した画像に出会わないことはない――そう言い切ってもいいだろう。
こうした状況において、デジタル作品の「権利の帰属」「真正性」の確保という新たな課題が生まれている。クリエイターの中には、自分の作品や写真が勝手に引用されている経験をしたことがある人もいるだろう。その文脈で「知らないうちに、自らの作品がAIモデルに組み込まれる」という懸念も広がっている。
かつて、歴史的なアーティストが自らの作品に署名を加えたように、デジタルクリエイターもまた、自身の作品が「誰によって作られたものか」を示す、安全で現代的な方法を求めている。
クリエイター向けのアプリ/サービスを展開するアドビは、生成AI「Adobe Firefly」に見られるようにAIに関する取り組みも積極的に進めている。「クリエイターの権利保護」と「AIの機能強化」をどう両立させるのか――その取り組みについて紹介したい。
アドビは主力製品にAI機能を組み込み進化させることと並行して、クリエイターの権利保護を行う仕組みもアップデートしている。
先日開催されたハイブリッドイベント「Adobe MAX London 2025」では、Adobe Fireflyの新しいAIモデル(Firefly Image Model 4シリーズ/Firefly Video Model)や「テキストからベクター生成」機能、他社のAIモデルとの連携機能など、生成AIに関する発表が多数行われた。
「Photoshop」「Premiere Pro」「Illustrator」「Illustrator」「InDesign」「Lightroom」「Adobe Express」など、アドビの主力製品/サービスでは生成AIの“進化”が着実に統合されてきており、クリエイターのワークフローを効率化し、プロフェッショナル以外の人でも新たな表現を作り出すことを可能にしている。
Adobe Fireflyの画像生成AIは早くも第4世代となり、標準品質モデル(Firefly Image Model 4)に加えて高品質モデル(Firefly Image Model 4 Ultra)も登場したこのように生成AIの進化と利用拡大が進む中で、アドビはデジタルコンテンツ、特に画像作品の「帰属表示」と「真正性」を保護する取り組みとして「Adobe Content Authenticity」アプリをパブリックβとしてリリースしている。
このアプリの中核をなすのは「コンテンツクレデンシャル(Content Credential)」と呼ばれる技術だ。これはクリエイター自身やその作品に関する情報を記録したセキュアなメタデータのことで、アドビが主導して4500以上のステークホルダーが関与する「C2PA(Coalition for Content Provenance and Authenticity)」という共同プロジェクトが策定した規格に基づく。
C2PAの取り組みは、これもアドビが立ち上げた任意団体「CAI(Content Authenticity Initiative)」を通して推進されている。
コンテンツクレデンシャルは、物理的なアーティストが絵画や彫刻に署名するような感覚で、作品にデジタル署名を埋め込んだものと考えれば分かりやすい。この仕組みは“耐久性”に優れていることも特徴で、作品をスクリーンショットで「盗用」した場合でも、クレデンシャルが維持される。
クリエイターやコンテンツ利用者は、Adobe Content Authenticity内の「Inspectツール」、あるいはGoogle Chrome向けの「拡張機能」を使用することで、署名情報を簡単に表示/復元を行える。「誰がその作品を作ったのか」「作者がどのような情報を付与しているのか」をすぐ確認できる他、コンテンツを別の人間が編集/改変している場合でも、その編集履歴などの情報を追いかけることが可能だ。
Adobe Content AuthenticityはWebアプリ(画像)として提供されており、静止画/動画/音声ファイルをドラッグ&ドロップするとコンテンツクレデンシャル情報を確認できる。Google Chromeに組み込める「拡張機能」を通しても利用可能だ
アドビが画像AI「Adobe Firefly」をアップデート モバイルアプリも近日公開
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