VK720ALはeスポーツ志向のハイエンドゲーミングキーボードだが、その柔軟な設計により、幅広いユーザー層に訴求し得る製品に仕上がっている。
まず、やはり本命はFPSやTPSなど反射神経と連打性能が求められるゲームだろう。VK720Aで実装された追従式トリガーによる超高速なキー連打と、浅いストローク+軽い荷重による素早いキー入力は、敵との撃ち合いやカウンターストレイフなどで有利に働く。
さらにVK720ALではキー高さが低く手首の負担が少ないため、長時間の練習や大会でも疲労がたまりにくいというメリットが加わる。プロゲーマーや競技志向のプレイヤーにとって、疲労軽減=集中力・パフォーマンス維持は見逃せない要素だ。
クリエイターやプログラマーなど、ゲーム以外のパワーユーザーにもVK720ALは魅力的だ。耐久性の高さは、日常的に長時間キーボードをたたくユーザーにとって安心材料となる。物理接点のない磁気スイッチは摩耗によるチャタリングも起きにくく、PBTキーキャップは汗や摩擦でもテカリにくい。メーカー保証も2年間だ。
また、キーピッチやレイアウト自体はフルサイズ準拠なので、タイピングそのものは65%キーボードが初めてのユーザーでも違和感なく行える。機能キーは独自配列であるが、ファンクションキーも備えているため、開発ツールのショートカットやExcelのようなソフトウェア環境下の操作もスムーズだ。
加えて、キーごとのアクチュエーションポイント設定は一般の執筆作業でも応用できる。例えば誤入力しやすいEnterやDeleteキーのみ深めに設定してミスタイプを防ぐ、逆に軽快に入力したい文字キーは浅くしておく、といった調整が考えられる。
唯一と言っていい制約は、現時点で接続方式がUSBによる有線のみという点だろうか。昨今の高級キーボードではUSB+Bluetoothデュアル接続やマルチペアリング対応も珍しくないが、VK720A/ALは有線接続しかサポートしていない。
そのためデスク上でケーブル一本は増えてしまうが、右側面のUSBハブポートにワイヤレスマウスのレシーバーなどを挿せるので、PC側のUSBポートを消費してしまう問題に対しては、ある程度対処が可能だ。ただ、ビジネス用途で使用する人であれば「この値段だったらBluetoothが欲しかったな」と思うかもしれない。
VK720ALは、前モデルのVK720Aで高い評価を得た磁気式アナログスイッチ技術をさらなる高みへと引き上げた意欲作だ。
ロープロファイル化による恩恵は、速度重視のゲームプレイから長時間のタイピング作業まで幅広く現れており、「より軽快に、より正確に」というキーボードの理想に一歩近づいた印象を受ける。
実際に触れてみて、リニアスイッチならではのスムーズな押下感と、吸音対策の行き届いた澄んだキータイプ音が心地よく、キー入力が楽しくなるデバイスだ。また、VK720Aに比べても疲労感が低減されるのも見逃せない。
カスタマイズ性もVK720A同様に極めて高く、自分だけの最適な設定を煮詰めていく過程は、キーボードマニアならずともワクワクするだろう。
VK720Aとの比較においては「より速く、小さく進化したVK720A」というのがVK720ALのシンプルな評価だ。ロープロファイルは「キーストロークを犠牲にしてポータビリティを高めたもの」というのが一昔前の感覚だったが、今やそういった認識は当てはまらなくなっている。
価格も記事執筆時点で3万円を切るところもあり、市場の相場から大きく外れるものではない。光学式や静電容量方式など、他の高性能キースイッチを搭載した製品と比べても、本シリーズのコストパフォーマンスは良好に思える。前モデルのVK720Aユーザーにとっても、買い替えを検討する価値がありそうだ。
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