iPhoneのマイナンバーカードの恩恵は対面利用だけに留まらず、オンラインでの本人確認にも活用できる。
「オンラインバンキング」「オンライン証券取引」「個人売買サイト」「シティサイクルや電動キックボードの利用登録」といったオンラインサービスにおける本人確認では、「自分の顔と本人確認書類(マイナンバーカードなど)の原本を、PCやスマホのカメラで角度を変えて何度か撮影する」という手法が主流だ。これだけでも煩雑さを感じるが、大抵の場合はこの後に人による審査(確認)も入る。30分〜1時間程度でサービスを利用できるようになればいい方で、場合によっては1日以上かかってしまうこともある。
その点、このような本人確認でiPhoneマイナンバーカードを利用できるようになると、煩雑さはほとんどなくなる。本人確認画面で「iPhoneのマイナンバーカード」を選択すると、画面の下からウォレット上のマイナンバーカードが呼び出される。その後、相手(サービス提供者)に提供される情報をを確認し、問題がなければサイドボタンをダブルクリックして生体認証を行うことで本人確認が完了する。
サービスにもよるが、契約手続きの待ち時間はほぼゼロになるだろう。
このオンライン本人認証の仕組みは、既に「マイナポータル」のログインや、同サイトから行える行政手続きの一部で利用できる。iPhoneのマイナンバーカードを一度登録してしまえば、ログイン操作は生体認証だけでOKだ。医薬品/医療費/年金情報の確認や、引越しなどのオンライン申請、そして住所変更の登録もiPhoneだけで完結できる。
ユーザーの安全性と利便性を第一に考え、体験をデザインしていくAppleならではの「リアル」と「オンライン」をまたいだ快適な電子証明技術といえる。
日本はこの極めて安全で使いやすく、利便性も高い身分証明書を世界で初めて提供する国となるのだ。
Appleは、財布を持ち歩かなくても済む世界を目指して「Apple ウォレット」という技術を開発してきた。
現金の代わりとして使える電子マネー「Apple Cash」(米国のみ提供中)や、クレジット/デビット/クレジットカード/デビットカード、公共交通カード、飛行機/鉄道の搭乗券、店舗のポイントカード、マイカーのカギ、家やホテルのカギ、そして身分/資格証明書――これまで財布に入れていたような大事なもの“全て”を1つの端末に格納し、生体認証、端末検索機能とリモートワイプ機能で“より安全に”した状態で提供することを目指している。
残念ながら、Apple ウォレット対応がどのような利便性をもたらすのか理解していない企業が日本には多い。鉄道の搭乗券(きっぷ)やホテルの予約票、ホテルのカギ、ポイントカードといった分野では、Apple ウォレットがほとんど使われていない。
鉄道会社のチケットレスサービスは自前アプリ主義が強く、座席を確認するために毎回アプリを起動してサーバに接続しないといけないため、サーバの負荷が重くなり、ただ乗る車両を確認したいだけなのに画面に「ただ今、アクセスが集中しています。○分お待ちください」などと表示されてストレスを感じることが多い。
これをApple ウォレット用のチケットとして発行できるようにすれば、いちいちサーバにアクセスすることなく確認できるようになる他、列車に乗る時間が近づくとチケットがロック画面に表示されるので、ユーザーの利便性も高まる。
まだApple ウォレット対応を果たしていない企業は、一度、先進事例を体験してユーザー体験第一で検討し直してほしいと思う。
Apple ウォレットの目指す「財布不要世界」を実現する上で、最後のピースとも言えるのが電子身分証明書だ。最初は学生証などの形で米国の一部の大学などで使われていたが、その後一部の州/自治領(※2)において運転免許証として利用できるようになった。今後も、対応する州は広がることが期待される。
(※2)アリゾナ州、メリーランド州、コロラド州、ジョージア州、オハイオ州、ハワイ州、カリフォルニア州、アイオワ州、ニューメキシコ州、プエルトリコ
2025年秋にリリースされる「iOS 26」では、米国の一部の州においてパスポート(旅券)の情報をウォレットに格納できるようになる。ただし、パスポートの電子化については国際的対応ができているわけではないので、現時点では「米国内の旅行における身分証明書」という扱いとなる。
iOS 26では、米国のパスポート情報をiPhoneに格納できるようになる。ただし、パスポートの電子化については国際的対応ができているわけではないため、当面は「米国内旅行の身分証明書(デジタルID)」という扱いとなるいずれにしても、我々の社会生活でわずらわしいと感じていた本人証明や行政手続きの一部が、国が安全性と使い勝手に優れた技術を選択し、大幅に利便性が向上するのは歓迎すべき動きだ。
それだけに、公正取引委員会が進めている「スマートフォンにおいて利用される特定ソフトウェアに係る競争の促進に関する法律」(スマホ新法)が、こうした動きの足を引っ張るものにならないことに期待したい。
iPhone上のマイナンバーカードの情報は極めて安全な場所に保管されており、盗まれることはないことはもちろん、悪用される心配は極めて低い。しかし、代替ストアなどを通して個人情報を監視するアプリが普及すれば、例えば誰がいつどこでマイナンバーカード機能を利用したかなどの「行動情報」を拾えてしまう可能性は否定できず、それが将来悪用されないとは限らない。
スマホ新法では、代替アプリストアを提供する企業に対しても、App Store同様のレベルで、個人情報をどのように扱っているかの明示を義務付けるなどしてほしい。
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