iPhoneへの「マイナンバーカード」搭載で、日本は再び世界の「デジタルライフスタイルのリーダー」に(2/3 ページ)

» 2025年06月24日 17時00分 公開
[林信行ITmedia]

優れた安全性で詐欺も撲滅!?

 iPhoneのマイナンバーカードは、プラスチックカード(原本)と比べると安全性と利便性の両面でより優れている

 まず安全性について見ていきたい。これまでの原本を使った本人確認では、「カード上の写真と利用者の顔を見比べる」という手法が主で、設備が整っている場合は「カード内のICチップで本物のカードであることを確認する」といった感じだった。

 それに対して、iPhoneのマイナンバーカードは、より安全な本人確認方法として定評があるFace ID(顔認証)かTouch ID(指紋認証)で本人確認をしないと使えない。そのため、例えば「iPhone内のメモリを取り出す」といった強引な方法で情報を盗み取ろうとしても、それは暗号化された安全な領域にあり、生体認証情報がないと復号できない。

 その上、カード自体には医療履歴や銀行口座といったプライバシー性の高い情報は記録されていない。本人認証が必須の「マイナポータル」にアクセスして、初めて取り出せる状況だ。

 このため万が一、iPhoneを紛失したり盗まれてしまっても、悪用される心配はない。紛失/盗難に遭った場合、別の端末から位置情報を確認したり、音を鳴らして探したりする機能がある他、盗まれたと確信した際には端末のデータを抹消する「リモートワイプ」といった機能も利用できる。iPhoneのマイナンバーカードの情報に限っていえば、デジタル庁の「マイナンバー総合フリーダイヤル(0120-95-0178)」で24時間/365日体制で一時利用停止を受け付けている。

カードは安全 iPhoneのマイナンバーカードは、マイナンバーカードそのものよりも高い安全性を備える

 iPhone版マイナンバーカードは、偽造も極めて難しい。高度な暗号化技術を利用している他、政府が持っている「秘密鍵」の情報などがないとカードのデータを作成できないようになっている。

 マイナンバーカードの原本も、ICチップのデータ偽造は非常に難しいのだが、カードそのものの外観を似せることは難しくないという問題を抱えている。実際にインターネット上で探してみると、1枚1万〜2万円で偽造カードが売られており、詐欺行為に使われて問題になったことがある。

 これに対して、iPhoneのマイナンバーカードを使った本人確認は、画面上の情報ではなく必ず端末にタッチして暗号化された情報を交換することが前提となっている。こうなると、偽造のハードルが大幅に上がる。

 筆者は、最近増えている「偽の身分証明書を用いた詐欺行為」がiPhoneのマイナンバーカードの普及によって減ることを期待をしている。

端末 iPhoneのマイナンバーカードでは、端末などにタッチして本人確認を実施することが前提となる

国境をまたいで実感できる「利便性」

 一方、この技術はどんな利便性を提供するのか。

 一番恩恵を受けるのは、酒やタバコを買う人たちかもしれない。店舗での年齢確認をiPhoneのマイナンバーカードで行えるようになるからだ。ウォレットからマイナンバーカードを呼び出し、生体認証をして、店舗のICカードリーダーにかざせば済む。ただし、仕組み上、店舗側の設備改修も必要となる。

 Androidスマホの電子証明書には、属性証明の情報が付帯していない。そのため、Androidスマホでは当面このような使い方はできない。現時点では、iPhoneのマイナンバーカードならではの使い方ということになる。

情報 iPhoneのマイナンバーカードには属性証明情報も含まれる。確認したい場合は、ウォレットアプリからマイナンバーカードの情報を開き、「マイナンバーカードの情報」をタップした後に生体認証を行う

 iPhoneがこの機能をいち早く実装できたのは、先述の日本における法改正はもちろんだが、AppleがiPhoneを使った本人確認を世界中で提供できるようにできるように準備を進めていたからだ。

 同社はこの技術を「ISO/IEC 18013-5」「ISO/IEC 23220」という国際標準規格に沿って実装している。日本政府も、iPhoneのマイナンバーカードについては国際標準規格に定められた「mdoc」という仕様に沿って開発を進めてきた。

 Appleはただ単に技術を用意するだけでなく、この技術が使える店舗や行政機関でそれを明示する世界共通の「Verify Age with Apple Wallet(Apple Walletで年齢確認)」、「Verify Identity with Apple Wallet(Apple Walletで本人確認)」というロゴマークも準備している。

mdoc iPhoneのマイナンバーカードは、mdoc形式で実装されている
Verify Appleもウォレットを使った認証用アイコンを用意している(参考リンク

 デジタル庁によると、この本人/年齢確認手法は、当初は日本におけるiPhoneのマイナンバーカードでのみ利用されるという。しかし、国際標準に従った実装をしているということは、今後は電子本人証明書が利用可能な他の地域の人も、同様の方法で本人/年齢確認が行える可能性がある。

 例えば米国の一部の州では、iPhoneに運転免許証を搭載できる。その州の住民が、訪日観光旅行中に同じ端末で自州の運転免許情報を使って年齢を証明し、酒やタバコの購入を実現できるかもしれない。このようなことが現状難しいのだとしたら、デジタル庁にはできるだけ早期に実現できるように取り組んでもらいたい。

 全国チェーンのコンビニなどで活用されるようになれば、訪日観光客は日本のデジタルライフスタイルの先進性を改めて実感できるだろう。

運転免許証 米国の一部の州では、iPhone(やApple Watch)のウォレットアプリに運転免許証のデータを格納できる

 本人/年齢確認のためのアプリは、デジタル庁自ら「マイナンバーカード対面確認アプリ」として提供している。

 本アプリでは7月中にiPhoneのマイナンバーカードに対応する予定で、このアプリを起動したiPhoneやAndroidスマホに、生体認証をしたiPhoneをタッチすることで本人/年齢確認ができるようになる見通しだ。

 「銀行や証券の口座開設」「携帯電話回線の申し込み」「キャッシュレス決済の申し込み」といったより確実な本人確認を必要とする業界では、生体認証によるマイナンバーカード利用が増えそうである。

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