サードウェーブのブースは4面展開で、「PCメーカー」というよりも「AIソリューション企業」という印象を強く受ける展示内容だった。その中心は、オンプレミス(ローカル)環境で動作する「ローカルLLMソリューション」だ。
担当者は「機密情報を扱う企業から、クラウドに出せない(機密性の高い)データでAIを使いたいという要望が非常に多い」と語る。そこで同社はハードウェア(GPUサーバ)込みでローカルLLMソリューション「Aviary」を提供することにしたという。
LLMのモデルについては「Llama」「Qwen」「DeepSeek」など主要なオープンソースモデルに対応している。「お客さまの要望に応じて、いろんなモデルを切り替えてテストできるようにしている」とのことだ。RAGやファインチューニングも自社で対応し、製造業、金融、教育機関など機密データを扱う企業への導入が進んでいるという。
Aviaryはインターネット接続不要で、企業内ネットワークで完結できる。価格は構成によって異なり、500万円から3000万円となる。ブースでのデモンストレーションでは、この後発売予定の「raytrek 4C Avaryモデル」が使われた。本モデルは最新の「NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition」を搭載していることが特徴で、その“威力”を体感できた。
raytrek 4C Aviaryモデルは、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Editionを搭載している。なお、NVIDIA RTX PRO 6000 Blackwell Workstation Edition単品の実売価格は170万円前後となるブースでは、NTTデータとの協業で展開する「つなぎAI」や、SI&Cとの協業で展開する業務ナレッジ活用ソリューションなど、パートナー企業と共同展開するソリューションのデモンストレーションも行われた。
つなぎAIはDifyベースのノーコード開発プラットフォームで、チャットbotやワークフロー自動化を簡単に構築可能だ。トヨタ紡織での実証では、チャットbotの開発期間を3カ月から2週間に短縮した実績があるという。
業務ナレッジ活用ソリューションは「AIエージェント」「RAG」「ローカルLLM」の組み合わせで、社内情報の機密性を確保しつつ、自社の知見を最大限引き出しやすくなる。
サードウェーブブースでは「DXハイスクール」向けの事例も紹介されていた。
惺山高等学校(山形市)のeスポーツ部では、サードウェーブのPCショップ「ドスパラ」の協力のもと、生徒がゲーミングPCを5台自作したという。「安い」「PCの構造を覚えたい」「光らせたい」という高校生らしい理由から始まった取り組みが、ネットワーク知識の習得にまで発展している。
同校では「GALLERIA」「raytrek」の両シリーズを使い分け、eスポーツだけでなくクリエイティブ教育にも活用されている。
「AIで何を解決しようかというのもなかなか出てこないのが日本企業の課題」と担当者は語る。同社はハードウェア提供だけでなく、AIで何ができるかから伴走する姿勢で、オンプレミスAI市場の開拓を進めている。
NASキットで知られるSynology(シノロジー)のブースでは、COMPUTEX TAIPEI 2025で発表されたばかりのオールフラッシュストレージ「PAS7700」と、データ保護アプライアンス「ActiveProtect(DPシリーズ)」が展示されていた。この2つの新製品群で、エンタープライズ市場への本格参入を印象付けた。
PAS7700は、4Uラックマウントに最大48本のNVMe SSDを搭載できることが特徴だ。説明員が「200万超のIOPS(1秒当たりの読み書き回数)に対応し、4K(4096バイト)ランダムアクセスにおいても優れた性能を持つ」と説明する通り、圧倒的な性能を備えている。拡張ユニットを7台追加すれば、容量は最大1.6PBまで拡張可能だ。その場合、システム価格は数百万円になるという。
用途について聞くと「AIや機械学習のストレージとして、かなりの読み書きを要求されるようなミッションクリティカルな用途」との説明。ゲノム解析など、高度な研究用途でも採用が見込まれている。
万が一の故障時でもサービスを継続できる冗長構成も大きな特徴だ。
一方、ActiveProtectはデータのバックアップに特化した新カテゴリーの製品だ。
従来のバックアップでは、データの変更履歴を保持するため、元データの2倍以上の容量が必要で、IT管理者の負担となっていた。その点、DPシリーズは「重複排除機能」によってその課題を解決している。トヨタ・モーター・ベトナム(トヨタ自動車のベトナム法人)が発売直後に導入したという事例も紹介していた。
「直感的に簡単にバックアップ構築ができる」という独自OSのUI(ユーザーインタフェース)も印象的だった。IT管理者の負担を軽減できる画期的な製品として位置付けられている。
NASの新製品では、全モデルで2.5GBASE-Tポートを標準搭載した2025年モデル(「DS925+」「DS1825+」など)が展示されていた。2025年モデルでは、ランサムウェア対策として管理者権限でも削除できない「イミュータブルスナップショット」機能を利用可能にしている点もポイントだ。
監視カメラソリューションでは、Synology純正カメラを使えばライセンス費用がかからない点や、AIによるナンバープレート認識機能などをアピールしていた。
UGREEN(ユーグリーン)は、今回のInteropで初めてブースを構えた。スマートフォンやタブレット向けのアクセサリーで知られる同社だが、展示されていたのはAI機能を前面に押し出したNASキットのみだった。
展示の中心は、1月のCES 2025で発表された「NASync iDX6011シリーズ」だ。
CPUとして通常モデルはCore Ultra 5 125H、ProモデルはCore Ultraプロセッサ(シリーズ2)を搭載し、AIの処理性能は通常モデルが34TOPS。Proモデルが96TOPSとなる。メモリは32GBまたは64GBで、ストレージは最大196TBまで搭載可能だ(30TB HDD×6+8TB M.2 SSD×2)。ネットワークポートは10GBASE-T(10Gbpsイーサネット)×2とThunderbolt 4端子×2を備え、Proモデルは「OCuLinkポート」も搭載する。価格については現時点では公表されていない。
NASにおけるAI機能について担当者に聞くと「自然な会話で『何々を探してください』と尋ねれば、すぐに返事が来る」という。会議の音声データを入れれば要約やポイントを自動抽出する「AIミーティングサマライズ」や、ファイルを開かなくても内容が分かる「スマートタグ」といった、実用的な機能も搭載している。
AIアルバム機能のデモでは、「Bicycle」と入力すると自転車の写真が瞬時に表示された。似ている写真を自動で認識して、重複ファイルの削除に役立てることもできるという。ただしAI機能の日本語対応については「これから」とのことだ。
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