「ロボット掃除機を身近に感じてほしい」 革命的といえるラインアップに刷新したアイロボットジャパンの挽野社長が自信を深める理由IT産業のトレンドリーダーに聞く!(2/3 ページ)

» 2025年08月22日 16時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

日本のルンバユーザーの特徴

―― 日本のルンバユーザーに特徴はありますか。

挽野 ルンバを家電製品として使っていただくだけでなく、ルンバに名前を付けて、家族の一員として使っていただいたり、家庭の中のコンパニオンとして使っていただいたりといったケースがとても多いのは確かです。また、全国から廃棄予定のルンバをオーナーのみなさんが持ち寄って、お納めの儀を東京・神田の神田明神で行いましたが、かなりの応募数がありました。ここまで愛着を持って使っていただいているのは、日本ならではの特徴だといえます。

アイロボットジャパン iRobot ルンバ ブラーバ Roomba ロボット掃除機 床拭き 2024年に神田明神で開催された「ルンバ感謝祭」(写真提供:アイロボットジャパン)

―― 2024年4月に、ゲイリー・コーエンさんがCEOに就任しました。30年以上、CEOを務めてきた創業者のコリン・アングルさんからのバトンタッチによって、アイロボットは何が変わり、何が変わらないのでしょうか。

挽野 コーエンがCEOに就任してから1年以上が経過しました。創業以来、初めてのCEOの交代ですから、まさにアイロボットが大きく変化するタイミングでもあります。競合環境や市場環境の変化を捉えて、これまで全てを自前でやってきた製品開発体制を変更し、より迅速にアイデアを実装し、製品を市場に投入できるようにパートナーとの連携を強化しました。

 これは大きな変化です。その成果が、2025年4月に発表した製品ラインアップの一新につながっています。ただ、変わらないこともあります。アイロボットのブランドバリューには変化がなく、そのバリューを大事にする経営者であることも変わりません。また、私たちが掲げたミッションにも変化がなく、人々の生活をより豊かにするための活動を続けていきます。コアといえる部分は変わりません。

―― 米国本社とアイロボットジャパンの距離感には変化がありましたか。

挽野 その点では、より近くなったと思っています。残念ながら、アイロボットは3年連続で赤字を計上しています。そして、2024年度は大規模な人員削減を行い、社員数は約半分となりました。

 ただ、その分、組織の階層が減り、日本の声が届きやすくなったともいえます。私自身、毎週火曜日に必ずコーエンと話をしており、結果として、本社の経営トップと話す頻度が増え、それに伴い、意思決定のスピードも速くなっています。

 日本のユーザーが欲しい機能や、日本市場の特性に合わせた設計を本社に要望することが増えていますし、それを検討するスピードも速くなり、今後の新製品にも反映されていくことになります。この結果がどうなるのかは、私自身とても楽しみな部分です。新たな体制による変化は、日本のユーザーにとってもプラスになるといえます。

アイロボットジャパン iRobot ルンバ ブラーバ Roomba ロボット掃除機 床拭き 4月の発表会で、初めて日本で記者会見に臨むコーエンCEO

―― 2024年度業績において、負債の借り換えや企業売却の可能性など、さまざまな選択肢を視野に入れた取り組みを開始したことを明らかにしたことで、年次報告書(Form-10K)では「企業としての存続に課題がある」と指摘されました。経営に対する疑念が生じたことで市場での混乱が見られましたが、アイロボットは、これからも存続できるのでしょうか。

挽野 確実に言えることは、アイロボットは、これからも存続するということです。2025年3月に、私たちの真意が伝わらない一部報道があったことで、誤解を招くような事態となったわけですが、4月の新製品発表に合わせてコーエンが来日し、記者会見の場などを通じて、アイロボットの事業運営や製品開発、製造およびサービスの提供に関しては、全く影響を及ぼすものではないことを、直接、話をさせていただきました。

 かなり踏み込んだ形で説明をし、「私たちはしっかりとビジネスを継続する。安心して引き続き使って欲しい」ということが訴求できました。さらに、同時に発表した新製品が、そのメッセージを裏付けるだけのパワーを持った製品であったことが伝わり、疑念はかなり払拭できたと思っています。

 実は、私たちの真意が伝わらない一部報道の影響が、一番大きかったのは日本でした。日本における3月の販売数量はかなり減少しましたし、ルンバユーザーからは、今後のサポートは大丈夫なのかといった問い合わせをいただきました。

 ここまでの影響が出たのは、世界全体の中で日本だけで、言い換えれば、それだけ日本においてアイロボットやルンバの認知度が高いことの裏返しだったともいえます。また、海外では3月時点で新製品発表を行いましたから、それが誤解を払拭することにつながっていたのですが、日本での発表が、そこから1カ月遅れたことも影響しています。

 日本での新製品発表は、当初から4月を予定していました。このタイミングで、私たちの状況をしっかりとお伝えすることが大切だと考えました。最初のプランでは、新製品の発表に集中した構成だったのですが、「これでは日本のユーザーが納得しない」と、コーエンとも話をし、何度も修正を加えて、しっかりとメッセージを出してもらいました。この件について、コーエンが、こうした形で直接話をする場を設けたのは日本だけです。

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