ソニーグループとAppleの関係は、1983年に初代「Macintosh」向けフロッピーディスクドライブから始まった。ノート型のMac「PowerBook」の一部モデルの開発/製造に携わったことでも知られている。
カメラで使われるCMOSイメージセンサーの市場シェアを調べてみると、2023年はソニーグループがシェアを45%に伸ばし、2025年現在も首位の座を維持し続けている。この圧倒的な地位は、ソニーグループによる継続的な技術革新と投資によるものだ。
「裏面照射型」「積層型」、そして世界初となる「2層トランジスタ画素積層型」のCMOSイメージセンサーと、技術革新の歩みは止まらない。生産拠点も九州に3拠点を構えている。
もちろん、「世界でもっとも高品位」といわれるセンサーの素性の良さがソニーのイメージセンサーの強みだが、実は顧客が求める用途に合わせた柔軟性の高さも大きな強みだ。例えば自動車用イメージセンサーは、光のダイナミックレンジを広く取ることが重要な上、内蔵すべき事前処理回路も通常のカメラとは異なる。またデジタルカメラ用イメージセンサーであれば、各社が求める信号処理のプロセスに応じて、必要な処理回路を組み込む必要が生じることもある。
ソニーのイメージセンサーの真の強みは、「画素部分と回路部分を分離して、これらを積層したパッケージを柔軟に作れること」にある。「画素センサーの層は高画質化に特化したチップを作り、回路部分は高機能化に特化した製造プロセスを適用することで、異なるアプローチで高性能化を図れる」ことがメリットだ。
ソニーのイメージセンサーは、現在ソニーセミコンダクタソリューションズが開発/製造している。モバイル(スマートフォン)向けセンサーについては「LYTIA(ライティア)」という独自ブランドも立ち上げている(Webサイトより)iPhone 17シリーズに採用されている4800万画素センサーは、ソニーセミコンダクタソリューションズが開発した1つのカラーフィルター領域を4分割することで、光量のセンシング解像度を上げている。これは単なる“高画素化”ではないところに競争上のポイントがある。
センサーにはAIを活用した画像処理用ロジックが内蔵されており「センサーレベルでAI処理を最適化」しているのだという。この技術により、8K動画や240fpsのスローモーション撮影において本体(SoC)にかかる負荷を軽減できる上に、バッテリー消費を抑えつつAI処理を施すことが可能になった。
Appleとの協業では、Appleが独自に開発している信号処理に流れに応じた処理に必要な回路を盛り込むなど、相互に「次のカメラはどうするか」「次の世代では何ができるように準備しているのか」といったことを意見交換しつつ、最終的なカメラ仕様に落とし込んでいく、長いスパンでの協業体制を構築しているとのことだ。
ソニーセミコンダクタソリューションズのエンジニアは「お互いの得意分野をよく分かっている」という信頼関係と「少しでも高品位な映像を求める企業文化」の両方が、関係を深めてきたと話す。センサー内の処理とISP(画像処理プロセッサ)での処理の最適な分担を、両社で議論しながら決定するレベルにまで達している関係は、そう簡単には壊れそうにない。
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