今回は代表的なサプライヤー4社から話を聞くことができたが、実際は他にも多数の日本企業がサプライヤーとしてApple製品に携わっている。その中には中小企業も含まれる。
AppleのYTCは光学分野を中心にさまざまなR&D活動を行っており、数百人の日本人エンジニアが勤務している。中でも「日本語で閉じる開発ループ」を作り上げていることがAppleのカメラの実力を高めているという。
YTC勤務の日本人エンジニアは、「海外拠点にプレゼンテーションに行かなくとも、日本語で密なコミュニケーションができる上、(コンポーネントの)サンプルを調達して横浜で試作できる」ことや、「(コンポーネント類に)問題点を発見した際のフィードバックを母国語で行えることなど、開発ループが日本国内で閉じている意味は大きい」と、YTCが存在することのメリットを語る。
日本には、特別な技術を持つ中小企業も多い。彼らとの関係を築けるのは、「日本国内で閉じた初期開発ループ」があるからこそだ。YTCのエンジニアは「(日本で)面白そうな技術があればここで開発して、うまくいったら米国のチームに提案する」という。米国本社からの指示に従うだけではなく、自発的な開発を行っているようだ。
こうした社内における双方向の技術交流もまた、iPhoneカメラの継続的な進化を支えている。
今回、クックCEOは日本を代表するサプライヤー4社のトップと会うためにYTCを訪問した。日本のエンジニアリングカンパニーとの関係性についてクックCEOに尋ねると、「Appleは(品質や使いやすさに対して)決して妥協しません。そして、この姿勢は日本企業にも通じています。決して満足せず、常に次を目指して働いていると感じます」と、日本企業とのパートナーシップを強化している“本質”を表現した。
この「永遠の不満足」こそが、毎年のように更新される製品サイクルの中で、わずかな改良ではなく、本質的な進化を実現し続ける原動力となっている。日本企業の「改善」の精神と、Appleの「Think Different」の哲学がYTCという場で融合し、新たな価値を生み出している。これはグローバル化の新たな形ともいえる。
コスト削減のための国際分業ではなく、それぞれの国や企業が持つ固有の強みを最大限に生かし、共に高め合うことで単独では不可能な価値を創造する「共創型ものづくり」の形である。
決して妥協しない――iPhone 17のカメラはこのような企業精神が完璧に組み合わさった結果なのである。
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