大阪・関西万博で話題を呼んだ「LIFE2050」が幕張に移設 Apple Vision Proを使った最先端の没入体験を「CEATEC 2025」のIPAブースで味わえる大阪・関西万博(1/2 ページ)

» 2025年10月13日 06時00分 公開
[林信行ITmedia]

 10月14日から千葉市美浜区の幕張メッセで始まる「CEATEC 2025」では、極めて限られた人数しか体験できない世界最先端のAR体験を得られるブースが出展される。独立行政法人 情報処理推進機構(IPA)のブースに展示される「LIFE200 Live Anywhere/星の島の学び舎」のことだ。

 IPAの資料では「専用ゴーグル」とだけ紹介されているが、実際には現時点におけるARの最高峰デバイスでもある「Apple Vision Pro」が使われており、その精度の高さや性能を、これまでのどのApple Vision Pro用コンテンツよりも魅力いっぱいに引き出したコンテンツとなっている。

 実は今回のCEATECでの展示の前に、大阪・関西万博のWASSEと呼ばれる展示エリアで先行披露が行われたが、連日10分以内に当日分の整理券が配布終了となる大人気の展示となった。

大阪・関西万博内にあるWASSEでの展示の様子 大阪・関西万博内にあるWASSEでの展示の様子。展示場の中に教室が1つだけの学校の建物を作ってしまったIPA。最先端没入体験はこの中で1度に1人ずつ体験する。かなりぜいたくな作りのコンテンツだ

最高の拡張現実体験のために、現実の建物を作る

 この展示、一体何がすごいのだろうか?

 Apple Vision Pro用のコンテンツの多くは、椅子に座った状態や立ち止まった状態で体験する。周囲の家具などにぶつからないように、そう作ることが推奨されているのだ。

 では、もし、そもそもぶつかるような家具などが置かれていない空間での体験に限定したコンテンツを作るとしたら、さらにはApple Vision Proでの体験を、さらに素晴らしいものにすべくApple Vision Pro体験専用の建物を作って、その中で体験するようにしたらどうだろうか?

 実はこれをやってしまったのが、「LIFE2050 Live Anywhere/星の島の学び舎」だ。万博のWASSE会場には、どこかから移築してきたような古びた学校の建物が建っていた(実際には新築して、あえて古びて見えるようにエイジング加工したそうだ)。

 体験は1回約6分、1度に1人だけが、この建物に通され完全に1人でこの建物を独占して体験する形になっている。このため、体験できる人数が限られてしまうのだ。

 実は、この建物が既に述べたようにApple Vision Proの体験のためだけにさまざまな工夫を施した施設で、例えば学校の教室のスライドドアを開けると、そこでスイッチに信号が通り、女優の橋本愛さんらが登場する3D映像コンテンツの再生がスタートする。

等身大の橋本愛さんの回りを歩き回って好きな角度から見られる

橋本愛さんが前のドアを開けて入ってきてあいさつをす 教室に入ると、橋本愛さんが前のドアを開けて入ってきてあいさつをする。教室の真ん中には勉強机が1つ置かれて生徒が1人座っているが、この机と子供は実は映像(体験していると机は映像なのか、本物なのか分からない瞬間がある)

 まず橋本愛さんが教室に入ってきて、あいさつをするのだが、この橋本愛さんの映像は、少し画質は荒いが完全な3Dのホログラムで、正面から話をしているところを見ることもできれば、横から見ることも、後ろに回り込んで見ることもできる。

 等身大で再生されており、自分の背丈と比べた橋本愛さんの大きさを感じたり、カメラ越しには見ることがないちょっとした動きのディテールなどを見たりすることも可能だ。

 Apple Vision Proは、現時点で最高峰の拡張現実のゴーグルだが、先に触れたガイドラインなどの関係もあり、このLIFE2050のように、自由に歩き回りながら体験するコンテンツは少ない。

 VR関連用語として、コンテンツの中でどれだけ動きの自由度が許されているかを表すDoF(Degree of Freedom)という表現がある。

 Apple Vision Proの空間コンピューティングでは、自分の部屋やオフィスの机の上に開いたWebブラウザのウィンドウやアプリ画面を、ただ正面から眺めるだけでなく、開いたまま横から眺めたり、後ろに回り込んだりもできる6DoFに対応している。

 ただ、冒頭でも触れたように、Appleが開発者に示しているヒューマンインターフェースガイドラインというガイドラインでは、部屋の中で歩き回って思わぬ怪我をするリスクを避けるため、Apple Vision Pro用のコンテンツは立って静止した姿勢か、座った姿勢で使うことを前提に作るよう推奨されている。

 このため、Apple TV+で提供している空間ムービーなどの多くのコンテンツも、より動きの制約された3DoFのフォーマットになっている。3DoFとは、固定位置から見ることが前提のコンテンツで、頭の向きを左右に回転させても上下に向きを変えても、左右に首を傾げても自然に見えるが、スクッと立ち上がって移動すると破綻してしまう体験だ。

 Apple Vision Proの本来の能力である6DoFは、この3つの動きに加えて前後方向の移動や左右方向への移動、しゃがんだり立ったりといった上下の動きをしても破綻しない体験の提供で、Apple Vision Proでは表示されるウィンドウや3Dオブジェクトはこの形で体験できるが、アプリなどは3DoF体験になっていることが多い。

 そのような中、星の島の学び舎は、6DoFデバイスとしてのApple Vision Proの性能と真価をフルに発揮させたコンテンツという点が画期的なのだ。

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