ASUSの「ROG Xbox Ally」シリーズでPCゲームはどれだけ楽しめる? 2モデルを比べてみて分かったこと(2/4 ページ)

» 2025年10月15日 22時00分 公開
[迎悟ITmedia]
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モデルによってアーキテクチャが異なるAPU

 ROG Xbox Ally/Ally Xは、AMD製の小型PC向けAPU(GPU統合型CPU)である「Ryzen Z2」シリーズを採用していることも特徴だ。ただし、同じシリーズながらも両モデルが搭載するAPUには“大きな差”がある。

 ROG Xbox Allyが採用する「Ryzen Z2A」は、CPUコアが「Zen 2アーキテクチャ」(4基8スレッド)、GPUアーキテクチャは「RDNA 2アーキテクチャ」(8基)となる。世代的にいうと、CPUコアは最新から3世代前、GPUコアは2世代前だ。

CPU-Z CPU-Zで確認したRyzen Z2AのCPUコア情報
GPU-Z GPU-Zで確認したRyzen Z2AのGPUコア情報

 一方で、ROG Xbox Ally Xが採用する「Ryzen AI Z2 Exterme」は、CPUコアは最新の「Zen 5アーキテクチャ」(Zen 5コア3基+Zen 5cコア5基)、GPUコアは0.5世代前の「RDNA 3.5」(16基)だ。これに加えて、AIにおける推論演算に特化したNPUも搭載している。

 NPUは現行の「XDNA 2」アーキテクチャで、ピーク時の性能は50TOPS(毎秒50兆回)となる。AI単体なら「Copilot+ PC」の要件を満たすが、ROG Xbox Ally XはCopilot+ PCを特にうたっていない。

CPU-Z CPU-Zで確認したRyzen AI Z2 ExtermeのCPUコア情報
GPU-Z GPU-Zで確認したRyzen AI Z2 ExtermeのGPUコア情報

 ROG Xbox AllyとROG Xbox Ally Xは、メモリ/ストレージ(PCI Express接続SSD)/バッテリーの容量も異なる。

 ROG Xbox Allyはメモリが16GB、ストレージが512GB、バッテリー容量(定格値)が60Whとなっている。それに対して、ROG Xbox Ally Xはメモリが24GB、ストレージが1TB、バッテリー容量(定格値)が80Whだ。

 ディスプレイは両モデル共通で、1920×1080ピクセル(フルHD/1080p)でタッチ操作対応の7型液晶パネルを搭載している。リフレッシュレートは最大120Hzと、ゲーミング用途に適したものだ。ただし、ROG Xbox Allyは標準で1280×720ピクセル(HD/720p)表示に設定されている。これはGPUコアのパフォーマンスを考慮した結果だろう。

 主にAPUのスペックの違いから、ROG Xbox Allyは「720p解像度の低〜中画質でのゲームプレイ」あるいは「クラウドゲーミングサービスのリモートプレイ」を想定しているのに対して、ROG Xbox Ally Xは「720pの高画質〜1080pの中画質でのゲームプレイ」を想定している。同じシリーズだが単なる“色違い”ではポジショニングの違いがあるので注意したい。

ベンチマークテストで実際の性能をチェック!

 ここからは、ROG Xbox Ally/Ally Xのパフォーマンスをベンチマークテストを通してチェックしていく。両製品は過去のROG Allyシリーズと同様に、ASUSのゲーミング向けユーティリティーアプリ「Armoury Crate」を通して動作モードを「ターボ」「パフォーマンス」「サイレント」から選べる。今回はパフォーマンス最優先のターボ設定を使って試してみた。

 なお、参考としてROG Ally Xのレビューで取ったスコアも掲載する。

CINEBENCH R23

 3Dレンダリングを通してCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」の結果は以下の通りだ。

  • マルチコア
    • ROG Xbox Ally:4745ポイント
    • ROG Xbox Ally X:1万1737ポイント
    • ROG Ally X:1万3801ポイント
  • シングルコア
    • ROG Xbox Ally:1038ポイント
    • ROG Xbox Ally X:1936ポイント
    • ROG Ally X:1753ポイント

 両テストでROG Xbox Ally Xがベストスコア……とはならず、マルチコアテストではROG Ally Xがトップとなった。これはROG Ally Xが搭載するAPU「Ryzen Z1 Extreme」のCPUコアが8基全てが同じものなのに対して、ROG Xbox Ally Xが搭載するRyzen AI Z2 Extermeは8コアのうち5基がパフォーマンスを少し抑えたZen 5cコアとなっていることが影響している。

 一方で、ゲーミングにおいてより重要とされるシングルコアのスコアは、順当にROG Xbox Ally Xがベストを記録している。ゲームにおけるCPUパフォーマンスは、着実に上がっているといっていいだろう。

CINEBENCH R23 CINEBENCH R23のスコア

PCMark 10

 ROG Xbox Allyシリーズは、形状こそゲームに特化しているが中身はWindows PCそのものだ。キーボードやマウスをつなげばWebブラウズや文章作成などもこなせる。USB Type-C端子を介して外部ディスプレイもつなげば、より快適になる。「家ではデスクトップPCみたいに使うんだ」と考えている人もいるだろう。

 そこでPCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」でWindows PCとしての普段使いのパフォーマンスも確かめてみた。総合スコアは以下の通りだ。

  • ROG Xbox Ally:3520ポイント
  • ROG Xbox Ally X:6893ポイント
  • ROG Ally X:7181ポイント

 こちらもCPUコアの構成の違いが若干響いて、ROG Xbox Ally XよりもROG Ally Xの方が少しだけ良いスコアだった。いずれにしても、標準的なノートPCと比べて高めであることには変わりない。

 これらと比べると、ROG Xbox Allyのスコアは少し低めに見える。しかし、Webブラウズやオフィスアプリの利用であれば必要十分なパフォーマンスは確保できている。

PCMark 10 PCMark 10の総合スコア

3DMark

 次に、3Dグラフィックスのパフォーマンスをチェックするアプリ「3DMark」で、幾つかのテストを実施した。

 今回はDirectX 12を使用する「Time Spy」「Night Raid」と、DirectX 11を使用する「Fire Strike」の3種類のスコアを比較する。レンダリング解像度はTime Spyのみ2560×1440ピクセル(WQHD/1440p)で、残り2つは1920×1080ピクセルとなる。Time SpyとFire Strikeについては、より高い解像度のテストも用意されているが、テスト機“単体”ではオーバースペックということもあり割愛している。

 総合スコアは以下の通りだ。

  • Time Spy
    • ROG Xbox Ally:1929ポイント
    • ROG Xbox Ally X:3929ポイント
    • ROG Ally X:3435ポイント
  • Night Raid
    • ROG Xbox Ally:1万8249ポイント
    • ROG Xbox Ally X:3万2596ポイント
    • ROG Ally X:2万9319ポイント
  • Fire Strike
    • ROG Xbox Ally:4859ポイント
    • ROG Xbox Ally X:8961ポイント
    • ROG Ally X:8042ポイント

 GPUコアの理論性能通りの結果となり、全てのテストでROG Xbox Ally Xがトップに立った。ROG Ally Xでも「サイズの割に頑張っているな」という印象だったが、ROG Xbox Ally Xはそれを上回るスコアを叩き出している。これだけのスコアであれば、重ためのゲームでも設定を少しいじるだけで十分に遊べるはずだ。

 一方で、ROG Xbox AllyはCPU/GPUアーキテクチャの古さが響いて、スコアで差が開いてしまっている。先ほども触れた通り、オンデバイスでゲームを遊ぶ場合は、1280×720ピクセル解像度の低〜中品質が良さそうだ。

3DMark 3DMarkの総合スコア

FF15ベンチマーク

 実際のゲームベースのベンチマークテストもやってみようということで、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマーク(FF15ベンチマーク)」を実行してみた。1920×1080ピクセルの「高品質」でのスコアは以下の通りだ。

  • ROG Xbox Ally:1899ポイント(動作困難)
  • ROG Xbox Ally X:3344ポイント(普通)
  • ROG Ally X:2883ポイント(やや重い)

 FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONは、発売から時間が経過している。しかし、CPUやGPUの使い方的には今でも“重量級”だ。1920×1080ピクセルの高品質でも「普通」評価が出るROG Xbox Ally Xは、“ポータブル”であることを考えるとかなり魅力的といえる。ゲームを遊ぶ上で、一般的な据え置き/ポータブルゲーム機からポータブルゲーミングPCに主軸を移そうと考えている人は要チェックだ。

 ROG Xbox Allyについては、さすがに1920×1080ピクセルの高品質は荷が重い。1280×720ピクセルの軽量〜標準品質くらいで遊ぶと良さそうだ。

FF15ベンチマーク FF15ベンチマークの結果

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