ROG Xbox Ally/Ally Xは、AMD製の小型PC向けAPU(GPU統合型CPU)である「Ryzen Z2」シリーズを採用していることも特徴だ。ただし、同じシリーズながらも両モデルが搭載するAPUには“大きな差”がある。
ROG Xbox Allyが採用する「Ryzen Z2A」は、CPUコアが「Zen 2アーキテクチャ」(4基8スレッド)、GPUアーキテクチャは「RDNA 2アーキテクチャ」(8基)となる。世代的にいうと、CPUコアは最新から3世代前、GPUコアは2世代前だ。
一方で、ROG Xbox Ally Xが採用する「Ryzen AI Z2 Exterme」は、CPUコアは最新の「Zen 5アーキテクチャ」(Zen 5コア3基+Zen 5cコア5基)、GPUコアは0.5世代前の「RDNA 3.5」(16基)だ。これに加えて、AIにおける推論演算に特化したNPUも搭載している。
NPUは現行の「XDNA 2」アーキテクチャで、ピーク時の性能は50TOPS(毎秒50兆回)となる。AI単体なら「Copilot+ PC」の要件を満たすが、ROG Xbox Ally XはCopilot+ PCを特にうたっていない。
ROG Xbox AllyとROG Xbox Ally Xは、メモリ/ストレージ(PCI Express接続SSD)/バッテリーの容量も異なる。
ROG Xbox Allyはメモリが16GB、ストレージが512GB、バッテリー容量(定格値)が60Whとなっている。それに対して、ROG Xbox Ally Xはメモリが24GB、ストレージが1TB、バッテリー容量(定格値)が80Whだ。
ディスプレイは両モデル共通で、1920×1080ピクセル(フルHD/1080p)でタッチ操作対応の7型液晶パネルを搭載している。リフレッシュレートは最大120Hzと、ゲーミング用途に適したものだ。ただし、ROG Xbox Allyは標準で1280×720ピクセル(HD/720p)表示に設定されている。これはGPUコアのパフォーマンスを考慮した結果だろう。
主にAPUのスペックの違いから、ROG Xbox Allyは「720p解像度の低〜中画質でのゲームプレイ」あるいは「クラウドゲーミングサービスのリモートプレイ」を想定しているのに対して、ROG Xbox Ally Xは「720pの高画質〜1080pの中画質でのゲームプレイ」を想定している。同じシリーズだが単なる“色違い”ではポジショニングの違いがあるので注意したい。
ここからは、ROG Xbox Ally/Ally Xのパフォーマンスをベンチマークテストを通してチェックしていく。両製品は過去のROG Allyシリーズと同様に、ASUSのゲーミング向けユーティリティーアプリ「Armoury Crate」を通して動作モードを「ターボ」「パフォーマンス」「サイレント」から選べる。今回はパフォーマンス最優先のターボ設定を使って試してみた。
なお、参考としてROG Ally Xのレビューで取ったスコアも掲載する。
3Dレンダリングを通してCPUの性能をテストする「CINEBENCH R23」の結果は以下の通りだ。
両テストでROG Xbox Ally Xがベストスコア……とはならず、マルチコアテストではROG Ally Xがトップとなった。これはROG Ally Xが搭載するAPU「Ryzen Z1 Extreme」のCPUコアが8基全てが同じものなのに対して、ROG Xbox Ally Xが搭載するRyzen AI Z2 Extermeは8コアのうち5基がパフォーマンスを少し抑えたZen 5cコアとなっていることが影響している。
一方で、ゲーミングにおいてより重要とされるシングルコアのスコアは、順当にROG Xbox Ally Xがベストを記録している。ゲームにおけるCPUパフォーマンスは、着実に上がっているといっていいだろう。
ROG Xbox Allyシリーズは、形状こそゲームに特化しているが中身はWindows PCそのものだ。キーボードやマウスをつなげばWebブラウズや文章作成などもこなせる。USB Type-C端子を介して外部ディスプレイもつなげば、より快適になる。「家ではデスクトップPCみたいに使うんだ」と考えている人もいるだろう。
そこでPCの総合ベンチマークテストアプリ「PCMark 10」でWindows PCとしての普段使いのパフォーマンスも確かめてみた。総合スコアは以下の通りだ。
こちらもCPUコアの構成の違いが若干響いて、ROG Xbox Ally XよりもROG Ally Xの方が少しだけ良いスコアだった。いずれにしても、標準的なノートPCと比べて高めであることには変わりない。
これらと比べると、ROG Xbox Allyのスコアは少し低めに見える。しかし、Webブラウズやオフィスアプリの利用であれば必要十分なパフォーマンスは確保できている。
次に、3Dグラフィックスのパフォーマンスをチェックするアプリ「3DMark」で、幾つかのテストを実施した。
今回はDirectX 12を使用する「Time Spy」「Night Raid」と、DirectX 11を使用する「Fire Strike」の3種類のスコアを比較する。レンダリング解像度はTime Spyのみ2560×1440ピクセル(WQHD/1440p)で、残り2つは1920×1080ピクセルとなる。Time SpyとFire Strikeについては、より高い解像度のテストも用意されているが、テスト機“単体”ではオーバースペックということもあり割愛している。
総合スコアは以下の通りだ。
GPUコアの理論性能通りの結果となり、全てのテストでROG Xbox Ally Xがトップに立った。ROG Ally Xでも「サイズの割に頑張っているな」という印象だったが、ROG Xbox Ally Xはそれを上回るスコアを叩き出している。これだけのスコアであれば、重ためのゲームでも設定を少しいじるだけで十分に遊べるはずだ。
一方で、ROG Xbox AllyはCPU/GPUアーキテクチャの古さが響いて、スコアで差が開いてしまっている。先ほども触れた通り、オンデバイスでゲームを遊ぶ場合は、1280×720ピクセル解像度の低〜中品質が良さそうだ。
実際のゲームベースのベンチマークテストもやってみようということで、「FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONベンチマーク(FF15ベンチマーク)」を実行してみた。1920×1080ピクセルの「高品質」でのスコアは以下の通りだ。
FINAL FANTASY XV WINDOWS EDITIONは、発売から時間が経過している。しかし、CPUやGPUの使い方的には今でも“重量級”だ。1920×1080ピクセルの高品質でも「普通」評価が出るROG Xbox Ally Xは、“ポータブル”であることを考えるとかなり魅力的といえる。ゲームを遊ぶ上で、一般的な据え置き/ポータブルゲーム機からポータブルゲーミングPCに主軸を移そうと考えている人は要チェックだ。
ROG Xbox Allyについては、さすがに1920×1080ピクセルの高品質は荷が重い。1280×720ピクセルの軽量〜標準品質くらいで遊ぶと良さそうだ。
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