プロナビ

スパコン「さくらONE」に「NVIDIA B200 GPU」を追加 社会を支える「計算のインフラ」を整備(1/2 ページ)

» 2025年10月22日 15時00分 公開
[大河原克行ITmedia]

 さくらインターネットが、NVIDIAのBlackwell GPUを採用したマネージドスーパーコンピュータ「さくらONE」を10月20日から提供開始した。AI処理に特化した最新GPU「NVIDIA B200 GPU」を搭載したスパコンを国内に設置することで、国内における大規模言語モデル(LLM)や、生成AIの研究、開発を推進できるという。

さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU 9月に発表した「NVIDIA H200 GPU」採用プランに続き、最新の「NVIDIA B200 GPU」も追加された「さくらONE」

NVIDIA H200 GPUモデルに加えBlackwell GPUモデルを併せて提供

 さくらインターネット AI事業推進室/さくらインターネット研究所 上級研究員の小西史一さんは、「求められる計算力を持つインフラを日本国内に整備し、誰もが高い付加価値を作ることができる社会を提供することを目指す。さくらONEは、それを実現することができる。新たなサービスは、大規模言語モデル(LLM)の学習や生成AIの研究開発に特化した設計であり、継続事前学習や強化学習に適している。産業競争力強化にも貢献できると考えている。日本におけるスパコン市場をリードしていきたい」と述べた。

さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU さくらONEに適している利用分野

 AI開発や先端研究には、極めて高い演算能力をもつ計算インフラが必要だが、このような環境は、これまで一部の機関に限定されていた。Blackwell GPUを採用したさくらONEを商用環境で提供することで、より多くの企業や大学、研究機関が先進的なAIを開発できる社会を実現することができるという。

 さくらインターネットでは、1999年にデータセンターを開設したのに続き、2011年に石狩データセンターを開設。2016年から、機械学習を行うために、高性能GPUを利用した「高火力リソースサービス」の提供を開始している。

さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU さくらインターネットの石狩データセンター

 2023年度からは、第一次整備計画として約130億円の総事業費によって、NVIDIA H100 GPU(Hopper アーキテクチャ)を2000基以上採用した2.0EFLOPSのクラウドインフラ環境を整備し、生成AI向けクラウドサービスを提供したことで、2025年6月に発表された国際性能ランキングの「TOP500」では、世界49位を獲得した実績を持つ。

 2024年度の内閣府戦略的イノベーションプログラム(SIP)第3期課題の「総合型ヘルスケアシステムの構築」においても、このインフラが活用された。

 また、第二次整備計画として2027年度までに合計で1000億円の事業費を計上し、NVIDIA B200 GPU(Blackwellアーキテクチャ)を始めとしたGPUを8000基以上採用し、第1期整備と合わせて1万基のGPUを採用する。総計算能力で18.9TFLOPSを目指しているところだ。

さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU 第一次と第二次整備の概要

 さくらONEは、2025年9月から「NVIDIA H200 GPU」(Hopper アーキテクチャ)を8基搭載したサーバを55台、合計440基のGPUを採用したサービスを提供してきたが、今回は新たに最新GPUのNVIDIA Blackwell GPUを8基搭載したサーバを最大48台、合計384基のGPUリソースを同時に活用できるようにした。

 「H200とB200の2種類のノードで構成され、GPUを使い分けられる。また、H200 GPUは1基につき700W、B200 GPUは1基につき1000Wのフルパワー電力で利用できる」とした。

 NVIDIA H200 GPUモデルでは、CFDや医療/防災などの科学技術計算分野に適しており、NVIDIA Blackwell GPUモデルでは、生成AIやLLM学習などに適しているという。

さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU さくらONEの概要
さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU さくらONEの仕様

 「創薬研究やゲノム解析などの医薬品開発およびバイオインフォマティクスなどの他、大規模モデル学習やロボティクス、AIエージェントなどに活用できる。科学技術とAIの両領域をカバーするスパコンである」としており、気候科学や気象予測、自動車や航空宇宙(CAE)、次世代バッテリー材料、エネルギー分野、金融サービス/リスク解析、地球科学などの利用も想定している。

 また、さくらONEは計算環境の立ち上げから日常的な運用管理までを一括で支援。インターネットを経由し、アクセス管理ノードを通じて、インタラクテイブノードにアクセスし、H200およびBlackwellの環境を利用でき、性能によって使い分けた利用も可能だ。

 具体的なユースケースとして、LLMの開発において90日間に渡って10ノードのH200を使用して、合成データを作成する。60日間を経過した時点で20ノードのB200の並行使用を開始し、継続事前学習を実施するなど、1つのシステムの中で異なるGPUを利用するといった使い方ができるとした。

さくらインターネット AI NVIDIA GPU スパコン マネージド Blackwell  B200 GPU 具体的なユースケース

 さくらONEは、最低30日から1日単位で利用できるという。共有ストレージシステムや専有ストレージシステムに加え可搬ストレージの使用も可能であり、利用者の使い勝手を高めている。

       1|2 次のページへ

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

最新トピックスPR

過去記事カレンダー