冒頭で触れた通り、法律は12月18日に全面施行される。もはや後戻りはできない。パンドラの箱は開かれるのだ。しかし、箱が開いた後に何が飛び出すか、そして最後に何が残るかは、これからの運用次第で変えることができる。
Appleは現在、日本の公正取引委員会(JFTC)と交渉中とみられ、新法に含まれる「例外規定(セーフガード)」の適用を模索している。プライバシーやセキュリティ、青少年保護のために正当な理由があれば、無制限な開放を制限できるという条項だ 。
例えば、子供の安全を守るための「スクリーンタイム」や「承認と購入」機能がおよばないアプリの動作を制限すること。あるいは、ユーザーの移動履歴や生活パターンを暴く可能性のあるWi-Fi情報へのアクセスを、これまで通り厳格に管理することだ。
これらは「競争阻害」ではなく、国民生活を守るための「必要最低限の安全装置」として認められるべきだろう。
制度設計に関わる官僚や政治家の方々には、「シリコンバレーの巨人を従わせた」という政治的な勝利の代償として国民のデジタルライフが危険にさらされることがないよう、後に振り返ってスマホ新法が良い立法だったと振り返られるように、実務的な防波堤を築くことに奮闘してもらいたい。
もし、しゃくし定規な法の適用によって、日本でも「Apple Intelligence」などの最新機能の提供が見送りとなった上に詐欺被害だけが増えるような事態になれば、それは「国益」を損なったと言われても反論できないだろう。
2026年の今頃、我々が「スマホ新法は言うほど悪くなかった」と言って、安心して胸を撫で下ろせていることを祈りたい。
政府がiPhoneを“再設計”!? Apple幹部が示す消費者無視の規制への懸念 スマホ新法の施行を迎える日本はどうなる?
テクノロジーはあなたの「道具」? あるいは「支配者」? Apple担当者と日本のアカデミアの議論から見えること
App Storeのプライバシーラベルに見るプラットフォーマーの責任
Appleは何故、ここまで声高に「プライバシー」保護を叫ぶのか?
WWDCに見る、Appleがプライバシー戦略で攻める理由Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.