シリコン飢餓とデバイスに忍び込むAIの幻影――不惑を迎えたWindowsと、AIに飲み込まれた2025年のPC業界を振り返る(2/6 ページ)

» 2025年12月31日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

シリコン飢餓――NVIDIAが変えた半導体の地図 Blackwellがもたらしたもの

 2025年のPC業界は、ある“1社”の動向に振り回された年だったと言っても過言ではない。NVIDIAである。

 同社が2025年初に投入した次世代GPUアーキテクチャ「Blackwell」を搭載した「GeForce RTX 50シリーズ」は、AI開発者やハイエンドゲーマーからは歓喜をもって迎えられた。しかし、それは同時に、一般的なコンシューマー市場との決定的な“分断”を象徴する出来事でもあった。

 BlackwellアーキテクチャのGPUは技術面、特に生産面でのジレンマを抱えている。製造プロセスはTSMCの4nmクラス、つまり前世代の「Ada Lovelace(GeForce RTX 40シリーズ)」と基本的には同クラスだ。つまり、微細化による劇的なトランジスタ密度の向上という恩恵を、もはや享受できていない

 いわゆる「ムーアの法則」の鈍化が、ここでも現実として突きつけられている。

GeForce RTX 50シリーズ 「CES 2025」に合わせてBlackwellアーキテクチャを採用する「GeForce RTX 50シリーズ」が発表された。しかし、半導体の製造プロセスに着目すると、先代のAda Lovelaceアーキテクチャ(GeForce RTX 40シリーズ)から据え置かれている

 この制約を乗り越えるため、NVIDIAはデータセンター向け製品において大胆な設計変更を行った。露光装置が一度に焼き付けられる限界である「レチクルリミット」に達する巨大なダイを2つ接続するチップレット技術の採用だ。同様の技術は、Appleも自社設計のハイエンドSoCで用いている。

 これにより、NVIDIAはデータセンター向けGPU「B100」「B200」では2080億個ものトランジスタを搭載することに成功した。

 一方で、同じアーキテクチャでも、コンシューマー向けフラッグシップである「GeForcre RTX 5090」は依然としてモノリシック(単一ダイ)設計を維持している。チップレット技術をコンシューマー製品に“降ろす”ことによるコスト増と製造面での複雑さを避けつつ、限界ギリギリまでダイを巨大化させることで、CUDAコア数は2万1760基まで増やした。

 いずれにせよ、「90番台」のGeForce RTXシリーズが従来の“ゲーミング枠”を超えた存在になったことは明白だ。

GeForcre RTX 5090 GeForcre RTX 5090は、一応コンシューマー向けではあるものの、スペック的には“ゲーミング枠”を超えた存在だ(写真は日本未発売のNVIDIA自社設計グラフィックスカード「GeForcre RTX 5090 Founders Edition」)

 半導体の集積率向上ペースを超えた高性能化は、最終製品の高価格化をもたらした。GeForcre RTX 5090を搭載するグラフィックスカードに提示された、発売当時の想定価格は米国で1999ドル(税別)、日本で39万3800円(税込)と、前世代から明らかに上がっている。しかしその入手は困難で、日本では円安の影響も手伝って12月時点では40万〜50万円台の製品が多い

 これでは、価格的にも「ゲーミングGPU」というカテゴリーを超えてしまっている。NVIDIAは明確に「90番台」のGPUを、純粋なゲーマー向けから、AI開発やコンテンツ制作を行う「プロシューマー」向けへと再定義しているといえる。

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