Microsoftは、最新の「Windows 11 2025 Update(バージョン 25H2)」において、自律的に稼働する「Agentic AI」という概念を本格導入し始めた。
これまでのWindowsに入っていた「Copilot」は、ある意味でユーザーの質問に答える「チャットボット」に過ぎなかった。しかし、Agentic AIではユーザーの代わりにアプリを操作し、タスクを完遂することを目指している。
現在、Windows 11 Insider Previewの一部ビルドでは、設定メニューに「Experimental agentic features(実験的なエージェント機能)」というトグルスイッチが用意されており、これを有効にすると「このフォルダー内の写真を全てリサイズしてメールで送って」といった抽象的な指示を出すだけで、AIがバックグラウンドでエクスプローラーや画像編集アプリ、メーラーを自律的に操作し、タスクを実行するようになる。
ただし、この機能はあくまでもInsider Previewの一部ビルドで“実験的に”提供されているもので、Microsoft自身もブログなどで認めているように、他のチャットボット同様に「ハルシネーション(幻覚)」を起こす可能性がある。セキュリティ上のリスクも、完全には排除されていない。
Windows 11 Insider Previewの一部ビルドでは、Agentic AI機能を試験実装している。現在は提供範囲を順次拡大しているところで、一般ユーザーがプレビューするにはもう少し時間がかかりそうであるある意味で未完成な状態であるのに、Microsoftがこの方向に舵を切ったのはAIエージェントがOSの中核機能になる未来を見据えているからだ。これは、Windows 1.0が目指した「誰でもコンピュータを使える」というビジョンの、40年越しのアップデートといえるかもしれない。
かつてGUIは、コマンドラインを打たなくてもコンピュータを操作できるようにする観点で画期的なコンセプトだった。
それが現代では、AIがアプリの操作方法を知らなくても、言葉で指示するだけでタスクを完遂できるようにしようとしている。
一方で、スマートフォンでもAIエージェント化を志向する動きが起きている。モバイルとデスクトップという異なる土俵だが、同じ問いにプラットフォーマー(あるいはメーカー)がそれぞれ答えを出そうとしている。その構図を俯瞰(ふかん)することで、やろうとしていることはより鮮明に見えてくる。
Appleは「Apple Intelligence」としてAI機能を全面展開し始めたが、現時点では多くのユーザーが期待した「完全な変革」には至っていない。特に注目されていた「Siriの会話能力の抜本的強化」「端末内の情報を背景に、個人的な質問に応答するパーソナルコンテキストAI」の実現は2026年にずれ込んだ。Bloombergの報道によると、パーソナルコンテキストAIを実現するための“キモ”となる「画面上のコンテキストを深く理解してアプリを横断操作する機能」といったより大きな刷新は、少なくとも2027年までかかるという指摘もある。
Appleは、極めて慎重にAIへとアプローチしている。これはプライバシー保護を絶対的な差別化要素に据えており、可能な限り処理をデバイス内で完結させることに固執しているからだ。
このプライバシーファーストの姿勢は一定の評価を受けているものの、機能の実装スピードやAIの賢さという観点では、競合に後れを取っている。
対照的に、Google(Android)陣営はAI機能の投入に極めてアグレッシブだ。Googleの「Pixel 10」シリーズや、サムスン電子の「Galaxy S25」シリーズは、オンデバイスAIとクラウドAIをシームレスに組み合わせることで、実用的な機能を次々とユーザーに提供している。
写真の不要なオブジェクトを消すだけでなく、「生成AIで背景を描き足す」「通話をリアルタイム翻訳する」といったように、「AIで何ができるのか?」を具体的に体験させる観点で先行している。次世代でも、この流れは加速している。
GoogleのAIエージェント「Gemini」の大幅な性能向上も手伝って、AndroidスマートフォンとAIの融合に関する期待感は高まる一方だ。
そしてMicrosoftは、「重い処理」「複雑なワークフロー」「創造的な作業」を担うPCという場において、Agentic AIによる自律操作を目指している。
三者三様のアプローチだが、共通しているのは「AIがユーザーの代わりに何かをする」という方向性だ。
コンピュータは使いこなす道具から、目的を達成するためのパートナーに昇格することを目指し始めているとも言えるだろう。
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