シリコン飢餓とデバイスに忍び込むAIの幻影――不惑を迎えたWindowsと、AIに飲み込まれた2025年のPC業界を振り返る(4/6 ページ)

» 2025年12月31日 12時00分 公開
[本田雅一ITmedia]

「Windowsの40年」が示す未来 PCは「道具」から「エージェント」へ

 話を元に戻してWindowsの40周年を振り返ると、このOSは常に“時代の鏡”であった。

 最初期バージョンのWindows 1.0は「GUIの大衆化」という夢を追いかけた。Windows 95はインターネット前夜の高揚感と、「Start Me」を合言葉にしたマルチメディアの到来を象徴していた。Windows XPは「安定と成熟」を、Windows 7は「Windows Vistaの挫折からの復活」を体現した。

Windows 3.1 日本マイクロソフトがWindowsの市販を手掛けるようになったのはWindows 3.1からだが、同バージョンでは「PCメーカーがカスタマイズしたWindows」も存在していた(画像は日本アイ・ビー・エムがカスタマイズした「IBM版Windows 3.1」の起動ロゴ)。メーカーによるOSカスタマイズは、次バージョンの「Windows 95」をもって事実上終了した

 では、2025年のWindows 11は何を象徴しているのか――それは「OSとは何か?」という根本的な問いに対する、新しい答えの模索だろう。

 従来のOSは「ユーザーがコンピュータを操作する道具」であった。ユーザーがマウスをクリックし、キーボードで入力し、アプリケーションを起動する。OSはその仲介者として機能していた。だが、2025年のWindows 11は、「ユーザーに代わって操作を行う代理人(エージェント)」へと進化しようとしている。

 その象徴は、Microsoft自身が提唱し始めた「Copilot+ PC」と、これに準拠するPCで利用できる「リコール(Recall)」機能だ。

リコール機能の「炎上」と「信頼回復」

 リコール機能はWindows 11 2024 UpdateにおけるCopilot+ PC限定の新機能として提唱された……のだが、当初「プライバシーを破壊する悪夢の機能」として激しい反発を受けた

 PC上の全ての操作をスクリーンショットとして記録し、検索可能にするこの機能は、便利さの裏に、深刻なセキュリティリスクを抱えていた。というのも、当初のバージョンでは記録されたデータが平文で保存され、マルウェアによって容易に盗み出せる状態にあったのだ。

 その後、リコール機能は再設計され、抜本的なセキュリティ対策が講じられた。その核心となるのが「VBS Enclave(Virtualization-based Security Enclave)」という技術である。これは、ハードウェアベースの仮想化技術を利用して、通常のOS(Windowsカーネル含む)から隔離された安全なメモリ領域を作成するもので、ハードウェアの力でOS自身からも見えない「金庫」を作り出し、そこにリコールのデータを格納するようにしたのだ。

 リコールのデータはVBS Enclaveで隔離され、アクセスするには「Windows Hello ESS(Enhanced Sign-in Security)」による生体認証が“必須”となっている。これにより、理論上はユーザーが管理者権限を持つマルウェアに感染したとしても、Enclave内のデータにアクセスできないようになっている。

 「離席中に勝手に操作履歴を見られる」リスクも、生体認証の必須化によって排除されている。

リコール機能 Copilot+ PCの目玉機能の1つであるリコール機能は、セキュリティへの懸念から再設計が行われた。当初の設計と比べると、機能自体の安全性はとても高まっている

 炎上は望むべきことではなかっただろうが、この技術的な刷新は、MicrosoftがAIの利便性をPCに組み込んでいくプロセスにおいて「セキュリティをどう取り扱うのか?」という全社的な取り組みを可視化できた観点で、結果的にはプラスになったと考える。

 Windows内のAIが、人間の代わりにエージェントとして働く――そんな未来に向けた、セキュリティ基盤となるだろう。

Copyright © ITmedia, Inc. All Rights Reserved.

アクセストップ10

2026年01月05日 更新
  1. イヤフォン連携&文字起こし無料! 無線機能を省いて物理ボタン搭載の異色AIレコーダー「HiDock P1」実機レビュー (2026年01月04日)
  2. 充電ストレスからの解放! 「Apple Watch Ultra 3」を選んだ理由と実機を使って分かったこと (2026年01月03日)
  3. アイ・オー・データが「Amazon 初売り」に参加 ゲーミングディスプレイやスティックSSDなどがお買い得 (2026年01月03日)
  4. トラックボールの大定番がモデルチェンジ! 新「Expert Mouse TB800 EQ」(レッドボール)を試す (2025年12月29日)
  5. 「35歳以下は節約しか知らない」 シャープが“野性味”を取り戻すために選んだ、オール日本人体制への回帰 (2026年01月01日)
  6. クルマは95%の時間停まっている――シャープが挑む「部屋になるEV」と、大阪・堺筋本町への本社移転が示す覚悟 (2026年01月02日)
  7. 家族4人で「XREAL One Pro」を使ってみた “推し活”からガチの格ゲーまで、視野角57度の魅力 (2025年12月30日)
  8. 現役情シスの2025年ベストバイ 外付けGPUボックスで脱・デスクトップ、そして“ZUNDAルーター” (2025年12月30日)
  9. 光学ドライブをあきらめない! 2026年に向けた「手持ちパーツ流用」で安くPCを延命/自作ガイド (2025年12月31日)
  10. 75万円のGeForce RTX 5090が瞬殺! 26万円マザーや4画面付き水冷ヘッドなど年末の「超」ハイエンド製品まとめ (2025年12月29日)
最新トピックスPR

過去記事カレンダー

2026年