話を元に戻してWindowsの40周年を振り返ると、このOSは常に“時代の鏡”であった。
最初期バージョンのWindows 1.0は「GUIの大衆化」という夢を追いかけた。Windows 95はインターネット前夜の高揚感と、「Start Me」を合言葉にしたマルチメディアの到来を象徴していた。Windows XPは「安定と成熟」を、Windows 7は「Windows Vistaの挫折からの復活」を体現した。
日本マイクロソフトがWindowsの市販を手掛けるようになったのはWindows 3.1からだが、同バージョンでは「PCメーカーがカスタマイズしたWindows」も存在していた(画像は日本アイ・ビー・エムがカスタマイズした「IBM版Windows 3.1」の起動ロゴ)。メーカーによるOSカスタマイズは、次バージョンの「Windows 95」をもって事実上終了したでは、2025年のWindows 11は何を象徴しているのか――それは「OSとは何か?」という根本的な問いに対する、新しい答えの模索だろう。
従来のOSは「ユーザーがコンピュータを操作する道具」であった。ユーザーがマウスをクリックし、キーボードで入力し、アプリケーションを起動する。OSはその仲介者として機能していた。だが、2025年のWindows 11は、「ユーザーに代わって操作を行う代理人(エージェント)」へと進化しようとしている。
その象徴は、Microsoft自身が提唱し始めた「Copilot+ PC」と、これに準拠するPCで利用できる「リコール(Recall)」機能だ。
リコール機能はWindows 11 2024 UpdateにおけるCopilot+ PC限定の新機能として提唱された……のだが、当初「プライバシーを破壊する悪夢の機能」として激しい反発を受けた。
PC上の全ての操作をスクリーンショットとして記録し、検索可能にするこの機能は、便利さの裏に、深刻なセキュリティリスクを抱えていた。というのも、当初のバージョンでは記録されたデータが平文で保存され、マルウェアによって容易に盗み出せる状態にあったのだ。
その後、リコール機能は再設計され、抜本的なセキュリティ対策が講じられた。その核心となるのが「VBS Enclave(Virtualization-based Security Enclave)」という技術である。これは、ハードウェアベースの仮想化技術を利用して、通常のOS(Windowsカーネル含む)から隔離された安全なメモリ領域を作成するもので、ハードウェアの力でOS自身からも見えない「金庫」を作り出し、そこにリコールのデータを格納するようにしたのだ。
リコールのデータはVBS Enclaveで隔離され、アクセスするには「Windows Hello ESS(Enhanced Sign-in Security)」による生体認証が“必須”となっている。これにより、理論上はユーザーが管理者権限を持つマルウェアに感染したとしても、Enclave内のデータにアクセスできないようになっている。
「離席中に勝手に操作履歴を見られる」リスクも、生体認証の必須化によって排除されている。
炎上は望むべきことではなかっただろうが、この技術的な刷新は、MicrosoftがAIの利便性をPCに組み込んでいくプロセスにおいて「セキュリティをどう取り扱うのか?」という全社的な取り組みを可視化できた観点で、結果的にはプラスになったと考える。
Windows内のAIが、人間の代わりにエージェントとして働く――そんな未来に向けた、セキュリティ基盤となるだろう。
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