―― 過去のコーポレートスローガンでは、「目の付けどころが、シャープでしょ。」が有名ですね。
沖津 当社は1990年〜2009年までの約19年間に渡って、コーポレートスローガンとして、「目の付けどころが、シャープでしょ。」を使ってきました。その後、「目指してる、未来が違う。」とし、直近までは、「Be Original.」をコーポレートスローガンに使用してきました。
今回は4代目のものとなります。これまでのメッセージは、当社の独創性を前面に打ち出したものでしたが、今回は人に寄り添うことや自らを変えて、新たな文化を作る意思も盛り込んだ点が大きく異なります。私は、「半歩先」という言葉がとても気に入っています。シャープらしいなと思いますよ。
―― それはどんな点ですか。
沖津 技術は10歩先、100歩先を目指してもいいのですが、人に寄り添うことができるニーズをつかむためには、人のそばにいて、人が何を考えて、何を課題に感じているのかを聞くことができる距離感が必要です。それが「半歩先」という言葉に凝縮されています。お客さまから、「思っていたものよりも、ちょっといいな」と思ってもらえる商品やサービスを届けることが大切であり、そこに半歩先の意味があります。100歩先の技術を使って、他社にない半歩先の商品を実現するというわけです。
―― 既に半歩先といえる商品はありますか。
沖津 例を挙げると、無水自動調理鍋「ホットクック」は2015年に発売したものですが、発売2年目には売れ行きが一時的に鈍化しました。しかし、生活スタイルの変化を捉えたコンセプトが評価され、共働き世帯の増加や時間の有効活用が求められる中で他社にない製品となり、むしろ他社に真似される製品になりました。
ホットクックやヘルシオは、AIoT家電としてネット接続率が70%を突破しており、調理メニューやレシピをダウンロードでき、生成AIを活用した調理相談がしやすいという点でも評価されています。
エアコンや冷蔵庫、洗濯機にも生成AIを搭載していますし、将来的には、家電がお客さまの使い方や何を求めているのかを常に学習し、キーを1つ押すだけで、やりたいことをやってくれるようにしたいですね。また、AIoT家電はデータを収集でき、それを新製品開発に活用することもできます。半歩先の実現につながる白物家電を創出することにもつながります。
アイススラリー冷蔵庫は、市販のペットボトル飲料をマイナス7度で冷やすことで、微細な氷と液体が混合した流動性のあるフローズン状の飲料にすることができる商品です。氷が溶ける際に体内の熱を奪い、液体よりも早く身体の中から冷やせるのが特徴です。2025年5月から開始した法人向けレンタルサービスにより、600社への導入実績があります。
既に2026年夏に向けてリピートの話もいただいており、2026年はもっと多くの引き合いがあるだろうと期待しています。これも半歩先を実現した製品だといえます。
―― 中期経営計画では、「シャープらしさ」を取り戻す姿勢を強調しています。沖津さんが考えている「シャープらしさ」とは何ですか。
沖津 当社は「目の付けどころ」に強みがあります。そして、オンリーワンの技術を使い、他社にない新しい商品を生み出してきました。これこそが、「シャープらしさ」だといえます。しかし、シャープらしさを持った商品を世の中に出すには、多くの挑戦があり、その一方で多くの失敗もあります。成功するのは10個のうち、1個か2個であり、むしろ失敗の方が多い。
しかし、2012年に経営危機に陥って以降の当社は、新しいことに挑戦する姿勢が欠けていたといえます。
鴻海傘下に入り、「節流」という考え方で危機を乗り越えてきました。言い方を変えれば、節約を前提に行動する癖がついてしまったともいえます。特に35歳以下の当社の社員は厳しい状況のシャープしか知らず、節約することばかりをやってきているのです。約10年間は経営危機からの脱却が最優先でしたから、新しいことに挑戦しにくく、社員たちの元気がなくなるという状況に陥らざるを得なかったのも確かです。
新しいことに挑戦をしないと企業の成長は見込めず、発展もありませんし、社員のモチベーションも上がりません。私自身も、新しいことに挑戦できることが仕事の楽しさにつながっていた経験があります。
また、リーダーが責任を取って新しいことに挑戦しようという機運が欠けていた反省もあります。失敗したら困ると思うマネージャーが多い状況にあった。いや、もしかしたら、マネージャー本人はやりたがっているのに、やれない雰囲気ができあがっていたのかもしれません。
私は、元気な時代のシャープに戻すことを目指しています。だからこそ、シャープらしさを取り戻したいと言っているのです。そのためには、会社を健全化しなくてはなりません。
デバイス事業のアセットライト化と、ブランド事業に集中した事業構造の確立によって会社の仕組みを変え、社員の意識を変え、開発投資を強化していく考えです。挑戦することがシャープらしさの源泉です。いよいよデバイス事業のアセットライト化が終息しました。いまこそ、シャープらしさを取り戻すことに向かうことができます。
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